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PENTAX、フィルムカメラプロジェクト始めるってよ

 12月20日火曜日、突然発表された「PENTAXフィルムカメラプロジェクト」は界隈に様々な反応を引き起こしている。

 全く予想していない内容でかなり最初はかなり狼狽えたのだが、数日経って冷静になったところで、とりあえずどんな内容なのか以下に備忘録としてまとめておく。

RICOH IMAGING デジタル一眼カメラに関連した、新製品やイベントの発表、サービスやサポート情報をご案内いたします。
PENTAXブランドにて”フィルムカメラプロジェクト “開始~カメラファンの皆さんとの... - 

 まずはプレスリリース。
 リコーイメージング社長の赤羽氏のコメント入りで、かなり饒舌なリリース文だ。PENTAX STATEMENT“工房的”ものづくり宣言の時と同じような熱量を感じる。これは大方針転換なのではないか?と疑いたくなるのも無理はない。

 ちなみに PENTAX STATEMENT発表時にYoutubeに公開された、非常に力の入った熱いイメージ動画は、いつのまにか非公開とされ、今は見ることができなくなっている。いったいなぜ……?
 

フィルムカメラの開発検討を行うPENTAX「フィルムカメラプロジェクト」開始。プロジェクトについて紹介します。
Film Project/ PENTAX | RICOH IMAGING - 

 次に、フィルムカメラプロジェクトのポータルサイト。

 Youtube動画へのリンクが二つ貼られているだけで、今のところあまり情報はない。要はとりあえず動画を見ろと言うことのようだ。
 

 1本目の動画は音声のないイメージビデオとも言うべきものだ。

 図面を手書きしていたフィルム機時代の往年の技術者から、CADを使いこなす若い世代の技術者へ、メカニカルなフィルム巻き上げ機構を持ったカメラの技術が伝承される、というイメージを表現したものだろう。

 動画中に登場する分解されたカメラは、相当古い時代のカメラだと思われるが、最後に出てくる巻き上げレバーの部分は、3Dプリンターか何かを使って作った試作機のようにも見えなくもない。 P30だそうだ(追記訂正)。
 

 もう一つの動画は”From the Project Team”とされており、J limitedやクラブハウス関連で有名なTKO氏によって、このプロジェクトの目的と方針が語られている。

 実際に、この動画で語られていることがこのプロジェクトを理解するうえで最も重要な核心と思われる。

 以下、自分なりにTKO氏が話していることの要点を書き出して箇条書きにしてみた。

 こんな感じだろうか。赤字は個人的にハイライトしておきたいと思ったポイントだ。一つ一つについて言葉尻を捉えたり隅を突くような論評的なことはしない。

 というより、改めて見てみるとだいたいの論点がすでにこの動画内の話で網羅されていることがわかる。ただ「カメラ以外のフィルムやDPEやスキャンと言った部材やサービスについては、他人(他社)任せなのか? もしくは何か策を考えているのか?」というポイントが抜けているだけだ。
 

 さて、これらを踏まえた上で現時点の個人的感想を言うならば、「そんなことやってる暇はないだろ?」 に尽きる。

 PENTAXもそんなことは先刻承知で、動画内ではTKO氏に先回りされてサラッといなされてしまっているのだが、それでもフィルムカメラの新しいロードマップの前に、過去に描いてきて同じように「みなさん一緒にやっていきましょう!」と言っていた別のロードマップはどうなったのか? と敢えて突っ込みは入れておきたい。軽く、ではなく少し強めに。そこのところもうちょっと説明してよ、と。その問を発する権利はあるはずだ。

 ライカは復刻M6を出す前にM10からM11に5年ぶりにフルモデルチェンジしてるんだぜ? ニコンは苦戦しつつもミラーレス化を進めながら2年前までF6を供給し続けていたよね? 若者のフィルムブームの一端を支えているチェキは、そのエコシステムをすべて富士フイルムがコツコツと作り上げてるんだけど? と、背景や状況やターゲットが違う話なのを承知で敢えてぶつけて問いたい。PENTAXはどうやってデジタルとフィルムを両立していくつもりなのか?と。

 とは言え、そんなもろもろの複雑な感情を脇に置いて客観的に考えてみれば、老舗カメラメーカーがフィルムカメラの新型をこれから開発するというのは面白い話だろうなとは思う。一般論として、他人事として。だから、言うなればこれはもしかして自分にとってNIMBY(Not In My Back Yard)的案件みたいなものなのかな?とちょっと思っている。

 いずれにしても、これを待ち望んでいるフィルムフリークな人は世界中に沢山いるのだろう。あるいは今までフィルムはやってなかったけれどもこの話を機にフィルムに興味を持つ人もいるに違いない。それはYoutube動画の再生回数とコメント欄に表れている。まるでリコーイメージングchではないみたいな盛況ぶりではないか。この人たちの渇望は今までどこに隠されてきたのか?

 いずれにしても大変けっこうなことだ。フィルム写真にはまる若い人々にとっても、フィルム時代を懐かしむ若くない人々にとっても、このプロジェクトを進めるPENTAXの未来にとっても。皮肉で言ってるのではなく本当に。
 
 
 そんな中、暢気に「K-1 Mark IIIはよ!」と思っていた自分は、気がついたら一人荒涼たる砂漠に取り残されたかのような気分になり、しまいには「そんな時代遅れなヤツはもうターゲット顧客じゃないよすっこんでろwww」と言われた気がしてショックを受けているところだ。なんてことだ!

 ただ言い訳をさせてもらうならば、少なくとも自分が望むようなK-1 Mark IIIがもうないであろうことは、約1年以上前のイベントでうすうす分かっていたことなのだ。

 それは「シュレディンガーの猫」みたいなもので(多分誤用だけど)、期待するのも落胆するのも蓋を開けない限りは徒労に過ぎない。フィルムプロジェクトは成否にかかわらず、ハンマーを振り下ろす放射線の状態に確実に影響を与えることになるという確信があるだけだ(えっと、何の話だったっけ?)。
 



 
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