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Limitedレンズで雪景色を写すための専用カスタムイメージ「冬野」を試してみる

 「九秋」のリリースからわずか1ヶ月半ほどしか経っていないが、12月1日に早くも冬のスペシャルカスタムイメージ「冬野」がリリースされた。やはり秋が遅すぎたのだ。あのペースでいくと春は5月末になるのではないか?と思っていたが、さすがにここで巻いてきた。遅れはすっかり取り戻したと言えるだろう。

 さて、タイトルでは「雪景色を写すため」と書いたが、それは誤解を招く表現かもしれない。

PENTAXのデジタル一眼カメラの魅力のひとつである、フィルムを交換する感覚で画作りを変えられる機能、“カスタムイメージ”。被写体やシーンに応じて画作りを切り替える楽しみと、自分好みの表現を行うための各種設定項目の活用についてご紹介します。
カスタムイメージ Special Edition | もっと自分を表現しよう。PENTAXの「カスタム... - 

 詳細は↑このページに作例とともに解説されているが、ここでは「冬の冷たい空気感を写すため」と説明されている。

「冬野(FUYUNO)」は「鮮やか」に比べ彩度を抑え、クリアな画作りを意識することで、冬の凍てつく空気感を表現しています。彩度を抑えつつも、赤みがかった茶色や、少し青みがかった白を意識した画作りで「ほのか」や「里び(SATOBI)」とも異なる色表現が得られます。

 なるほど、今回も低彩度側に振られているらしい。土や枯れ木などの茶は赤く、雪などの白は青くなると。なお今回の「冬野」の対象レンズはHD FA31mmF1.8 LimitedとHD DA35mmF2.8 Macro Limitedだ。
 

 上の詳細解説ページとTwitterでペンタックス公式アカウントが掲載した作例はほぼ雪の景色だ。なので「冬の冷たい空気感」=「雪景色」と短絡的に解釈してしまったが、残念ながら東京には(ほぼ)雪がない。

 雪のあるところまで出かけていく…… かどうか検討する前に、とりあえずその辺で撮ってみようではないか。なおレンズは HD FA31mmF1.8 Limited を使った。
 

PENTAX K-1 II SE, HD FA31mmF1.8 Limited, f8.0, 1/160sec, ISO100
 いきなりド逆光で撮ってしまった。どちらもフレーム内にがっつり太陽が入ってる(ミラーボックス焼損注意!)。 

 だから白っぽい写真になって当たり前……というわけではない。「白の青さ」はともかく「茶の赤さ」は何となく分かる。それに全体的にハイキーなのにキリッとコントラストが締まってる感じも分かる気がする。
 

PENTAX K-1 II SE, HD FA31mmF1.8 Limited, f4.0, 1/1000sec, ISO100
 ほぼ同じ場所から視点を下げてピントを手前に移した。逆光で適度にボカしたおかげで何かいい感じだ。全体に茶色いが色が濃く感じるのは「冬野」のおかげだろうか?

 それにしてもFA31mmはどちらかと言うと逆光に弱いというイメージがあったが、今回はそんな雰囲気は微塵も感じさせない。さすがHDコーティング!(smc版でどうなるかは知らないがそういうことにしておこう)

 なお撮影に夢中になっていたら、この被写体は「ひっつき虫」として悪名高い「コセンダングサ」で、気がついたら着ていたパーカーからスウェットパンツまでトゲトゲになってしまい、このあと泣きながらひとつずつ取った。
  

PENTAX K-1 II SE, HD FA31mmF1.8 Limited, f8.0, 1/200sec, ISO100
 彩度が低いせいで騙されがちだがけっこうコントラストはしっかりしている。というかハイキーなので普通に撮ると露出オーバーに見えてしまうが、これが狙いなのだろう。マイナス補正したくなるがここはグッと我慢する。

 
 

 比較用に同じカットを別のカスタムイメージでボディ内現像したものを貼っておく。左上が「鮮やか」、右上が「雅」、左下が「フラット」、右下が「ほのか」だ。こうして見ると印象としては「冬野」は「ほのか」に近いと思う。色が薄くてハイキーという共通点があるのだから当然なのだが。
 

PENTAX KF CB, HD FA31mmF1.8 Limited, f2.8, 1/6000sec, ISO100
 カメラをPENTAX KFに変えてみた。画角が47.5mm相当の標準域になるこの感覚は懐かしい。

 これも太陽が画角の中に入っていて(ミラーボックス焼損注意!:2回目)激しくオーバーになってしまったのは、明るいのにAモードで絞りを開け気味に設定したことで、シャッター速度が追従できなかったためだ。警告表示は出ていたはずだが撮っているときはまったく気がつかなかった(カスタム設定で露出値優先にすることもできる)。

 でもそのおかげでむしろ良かったのではないかと思う。自分では意識してこんな露出オーバーにしないだろうし、RAWで記録していたらLightroomで階調を取り戻す悪あがきをしていただろう。KFは意図してRAWを記録しないようにしているのだが、JPEG撮って出しはこうした失敗を楽しむ心の余裕が生まれる、ということを再発見した。
 

PENTAX KF CB, HD FA31mmF1.8 Limited, f2.8, 1/4000sec, ISO100
 
PENTAX KF CB, HD FA31mmF1.8 Limited, f5.6, 1/640sec, ISO100
 夕方の荒川土手。この青空の感じはなんか好きだ。とても良い。
 

PENTAX KF CB, HD FA31mmF1.8 Limited, f2.8, 1/6000sec, ISO100

PENTAX KF CB, HD FA31mmF1.8 Limited, f16, 1/800sec, ISO100
 河川敷のススキとかその他背の高い草むら。また太陽を入れてしまった。時間と方角的に逆光ばかりになるのは仕方がないが、けっこうこういうシーンにも「冬野」は合ってる気がする。なんというか殺風景さとか寒々しさがストレートに写るというか何というか。

 でももしかしたらこういうのも思い切りオーバー目にするとなお良かったのかも知れない。
 

PENTAX KF CB, HD FA31mmF1.8 Limited, f5.6, 1/500sec, ISO100

PENTAX KF CB, HD FA31mmF1.8 Limited, f5.6, 1/400sec, ISO100
 街歩きスナップはどうだろうか? こういう古い下町風情はハイコントラストだったり白黒で撮りがちだが、こういうのも新鮮で良いかもしれない。

 基本RAW現像派で、ボディ内現像というかカスタムイメージを意識して使うという習慣がない。そしてLightroomで現像する際はやはり色が濃く出る方向に調整しがちで、あまりハイキーに仕上げるという感覚がなかった。だからこういうのはとても新鮮だ。K-7からK-5あたりの時代に「ほのか」が流行ったことがあったが、こういう明るめの写真を楽しむのはその時以来ではないかと思う。
 

PENTAX KF CB, HD FA31mmF1.8 Limited, f3.5, 1/400sec, ISO100
 夕日を浴びるPENTAX K-1 Mark II Silver Edition。この日は「冬野」とはまた別の撮影が主目的だったのだが、それについてはまた別途。

 と言うことで、「冬野」は思ったより使いやすいかも?と感じた。雪はなくても寒い冬の景色を撮るには良いかもしれない。青空がきれいにスッキリと写るので、真冬に晴天の多い関東でも色々使い道はありそうだ。

 とは言えやはり雪景色を撮ってみたい。「冬野」を使って写真を撮りたいから、というだけではなくて、久しぶりにただ単純に雪遊びが懐かしくなってしまった。

 雪景色を撮りに行く、というと何もアイディアは思い浮かばないのだが、フカフカのディープパウダーの中を滑ったり、雪の中で温泉に浸かったり、これ行けるのか?というような雪道をドライブしたりしてみたい…… 数年前までは毎冬よくやっていたのに、今ではもうすっかりその感覚を忘れてしまったけど、何かそういうことをまたしてみたい。
 


 
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