Kマウント界隈ではこの手の話題はわりと語られ尽くしているのだが、5年目を迎えたK-1改とともに改めて考えてみたいと思う。
K-1/K-1 IIはクロップすることで15MピクセルのAPS-C機として使うことができる。しかし敢えてDAレンズをフルサイズの画角のまま使うという遊びもできる。その場合発生する周辺の画質低下や光量不足やケラレと、それに伴う露出計への影響などはすべて分かった上で自己責任でやってくださいね、ということだ。
であれば、せっかくだからレンズのイメージサークルギリギリ隅っこまで使いたいではないか。保証されてるかどうかなんて関係ない。Lightroomなどを使えば、あとから自由なサイズにクロップできるし、光量低下などもある程度補正できる。だったら使わない手はない。
ということで、今回はK-1改につけてクロップせずに使えるDAレンズを3本選んでみることにした。
smc PENTAX-DA★300mmF4ED[IF] SDM
まずはこれだ。K-1発表時にメーカー公式に「このレンズは実はフルサイズをカバーしている」とコメントされた(周辺画質は保証されない)レンズだから、当然使えるに決まっている。
このレンズはK-3時代に一度新品で買って、その後150-450mmと入れ替えに手放して、そして最近逆に150-450mmを手放した代わりに再度中古で手に入れた。現在自分が持っているKマウントレンズの中では最長の焦点距離を持つ。
DAレンズとしてもやや設計の古いレンズだが、無理のないスペックでK-1で使ってもビクともしないシャープさを発揮するレンズだ。そして軽くて小さい。ただボケはけっこう癖があるように思う。
AF駆動はSDMだが故障が頻発した旧タイプなのでやや不安がある。速度は速くはないがそんなに悪くはない。フォーカスリミッターの類いはない。
PENTAX K-1改, DA★300mmF4ED [IF] SDM, f4.5, 1/250sec, ISO400, -1.0EV
PENTAX K-1 Mark II, DA★300mmF4ED [IF] SDM, f4.5, 1/1250sec, ISO100, 0EV
さて、実際にK-1改でフルサイズのまま使ってみると、これはもはやDFA★300mmF4と改名しても良いのではないかと実感する。フードもそのまま使った上で、周辺光量も画質も何も問題ない。古い設計のレンズにありがちな色収差由来のフリンジもほとんど見られない。そしてピント面はとてもシャープで被写体の質感も際立つ。
フルサイズで300mmの単焦点という画角は、なんとなく中途半端で使い処が難しいかも知れない。ただK-1との組み合わせならAPS-Cまでクロップしても15Mピクセルあるわけで、トリミング前提でだいたい300-500mm程度の超望遠ズームだと思い込んで使うととても便利に感じてくる。
今後いずれまた150-450mmを買い戻すつもりでいるのだが、こんどはこの300mmはもう手放さないつもりだ。
smc PENTAX DA★55mmF1.4 SDM
次もまたスターレンズになってしまった。しかしこれは公式には「フルサイズで使って良いよ」とは言われていない、正真正銘のDAレンズだ。でもギリギリでフルサイズでも何とかなる1本だと思う。
実はこのレンズはもう持っていない。DFA★50mmF1.4と入れ替えで手放してしまった。
APS-Cで85mm相当のポートレートレンズになるという趣旨で55mmという焦点距離になったようだが、フランジバックが45mm前後ある多くの一眼レフマウントにとって、55mmはレンズ設計がしやすい焦点距離と言われている。
だからかどうかは分からないが、デジタル時代になって再設計されたこの55mmは、画質的にもスターを名乗るにふさわしい一本だ。そしてエアロブライトコーティング(最新のII型ではない)が採用された唯一のDAレンズで、かなり気合いが入っている。
AFはDA★300mmと同様に旧型のSDMが使われているが、巨大なフォーカシングユニット(=全群)を動かすにはトルク不足なのか、かなりのんびりとしている。
PENTAX K-1, DA★55mmF1.4 SDM, f2.0, 1/80sec, ISO1600, 0EV
PENTAX K-1, DA★55mmF1.4 SDM, f2.0, 1/125sec, ISO200, -0.7EV
実際のところ、条件によっては周辺減光がかなり目立つ場合がある。ケラレというかどうかギリギリな感じだ。でもあとから補正するかもしくは若干端っこだけトリミングすればなんともない。たいていの場合これがまさかAPS-C専用のレンズだとは気がつかないことがほとんどだ。
とすれば、55mmF1.4という明るい単焦点レンズがこのサイズで収まっているというメリットを享受することができる。たから実はDFA★50mm、DFA MACRO 50mm、FA50mmに続く50mmクラス単焦点の第4の選択肢として、検討する価値があるのではないかと思っている(じつはあとDA50mmF1.8もある)。
smc PENTAX DA FISH-EYE 10-17mmF3.5-4.5ED [IF]
最後の1本は飛び道具的な魚眼ズームだ。到底K-1で使えそうにないと思っていたのに、意外に使えてしまうことを発見した。もちろん多用はできないがここぞと言うときに使えてしまう。
今持っているのは昔からあるsmc版なのだが、昨年にHDコーティング版にモデルチェンジされた。
もちろんフルサイズ化出来たらそれに越したことはないのだが、このレンズの面白さを楽しむにはこのままで良いじゃないか、ということに中の人達も気付いたのだろう。新レンズ設計のリソースは他に振り向けるべきだと。
PENTAX K-1改, DA FISHEYE 10−17mmF3.5-4.5ED [IF](14mm), f16, 1/60sec, ISO200, +0.7EV
PENTAX K-1改, DA FISHEYE 10−17mmF3.5-4.5ED [IF](14mm), f9, 1/800sec, ISO200, 0EV
もともとはAPS-Cでワイド端10mmで180°対角線魚眼となるように作られている。それをフルサイズに付けると、さすがにワイド側はイメージサークルと固定フードでケラレてしまうのだが、テレ側14〜17mmは四隅までちゃんと像が写る。
周辺部はフリンジもすごいし解像もなにもあったものではないが、そういうことはもはや関係ない。恐らく14mmあたりでフルサイズに対し対角線魚眼になってるはずだ。
しかも面白いことに、K-1/K-1 IIにこのレンズを付けて撮ったRAWファイルをAdobeのLightroomやCamera RAWで現像すると、なぜかレンズ補正を適用することができる。すると完全ではないものの歪曲が補正されるのだ。その結果画角は少し狭くなるのだが、まるでちょっとした超広角で撮ったかのような写真になる。これはカメラ内現像ではできない技であり、このレンズの価値を大きく高める裏技だ。
PENTAX K-1 Mark II, DA FISHEYE 10−17mmF3.5-4.5ED [IF](14mm), f5.6, 30sec, ISO400, 0EV
フルサイズでこのレベルの超広角っぽい画像を得られるというのがなかなかすごい。こんなに小さくて軽くて安いレンズなのに。
昨年の秋、沖縄の旅にはFA31mmF1.8AL Limitedとこの魚眼ズームの2本だけ持って行った。念のための超広角としてDFA15-30mmF2.8を持って行くのはとても辛いが、このレンズだったら衣類の間に押し込んでいくことができる。
実はDA40mmも捨てがたい
ということで、以上3本選んだのだが、本当はあと一本推したいDAレンズがある。
トップの写真でもK-1改に付いてるパンケーキレンズだ。K-1だとペンタ部の出っ張りよりもレンズの方が薄く、ほとんどボディキャップのようになる。自分が持っているのは古いsmc版だが、今はHDコーティング化されている、さらにLimitedではない超々薄型のXSタイプもある。
40mmF2.8というスペックのパンケーキレンズはPENTAXにはMFの時代からあったし、それはもちろんフルサイズ(フィルム)対応だった。だからこのレンズも光学設計的にはフルサイズ対応していてもおかしくないだろうと想像できる。実際だいたいカバーできているのではないかと思う。
改めてK-1/K-1 II用に買う価値があるかというと微妙なところだが、APS-C用に持っているなら使ってみる価値があると思う。あるいは撮影できる高級ボディキャップとして付けっぱなしにするのも良いと思う。
あとは… 密かにHD PENTAX DA★11-18mmF2.8ED DC AWがちょっと気になっている…。今は買わないけどAPS−Cボディをまた手にした時にはキット欲しくなるはずだ。その場合、是非K-1でフルサイズ設定で使ってみたいと思っている。