少し前に DFA MACRO 100mm F2.8WR で水滴マクロを撮って遊んでみた! 的な話を紹介した。フルサイズ一眼レフで薄いピントと豊富なボケのスリルを楽しみつつ、超高画質を目指すのはもちろん良いものなのだが、雨の中の水滴マクロ撮影ならもっと「気楽に」楽しむ別の方法がある。
というのは、超マクロモードを搭載した防水コンパクトカメラを使うのだ。豆粒センサーのコンパクトカメラと侮ることなかれ。これがけっこうイケるらしい。
幸い手元には超マクロモードを搭載した防水デジカメが2機種ある。OLYMPUS TG-5は一昨年買った。もう一方のPENTAX WG-3 GPSはわりと古い機種で6年ほど前に買ったものだ。
そもそもTGシリーズとWGシリーズは兄弟のようなものだった。手元にあるこの2台も、世代の差と細かい部分の違いを除けば実はビックリするほど似ている。そもそもレンズのスペックが同じで、その結果レンズ前1cmまで近寄れる超マクロモードをどちらも搭載している。
PENTAX WG-3 GPSで撮ってみる
ペンタキシアンとしてはまずはPENTAX機を使ってみようではないか。1/2.3インチ16MピクセルのCMOSセンサーを搭載し、GPSや気圧センサーやコンパスまで内蔵していて水深14mまでなら水中カメラとして使用することもできるタフネス機だ。
PENTAX WG-3 GPS, 9mm(50mm相当), f3.2, 1/125sec, ISO250, +1EV
シロツメクサ。ほとんどギリギリまで寄っている。WG-3 GPSにはレンズ周囲に白色LEDライトが内蔵されており、メニューからON/OFFすることが出来るので、ワーキングディスタンスが極端に短い場合のライティングに使える。が、明るい日中の屋外ではほんのり補助光になるだけだがないよりはマシだ。
ということで、以下今回撮った写真はすべてLEDライトをONにしている。
PENTAX WG-3 GPS, 13.5mm(75mm相当), f4.2, 1/80sec, ISO640, 0EV
紫陽花の葉に止まっていた正体不明の虫。このカメラのマクロモードの良いところは、ワイド端限定ではないところだ。ズーム全域で1cmなのかどうかは定かではないが、全域で超マクロと言えるレベルまで寄れる。これは素晴らしい。
PENTAX WG-3 GPS, 5.5mm(31mm相当), f3.1, 1/125sec, ISO250, 0EV
とは言えやはり「画質」を語るべきではない。豆粒センサーらしさはそこかしこに現れているが、こういう一発芸の前にはそんなことはもはや関係ないだろう。
なおWG-3 GPSではRAW記録は出来ない。なんならアスペクト比を3:2に設定することも出来ない(なぜか16:9にはできる)。これらの写真は普通にJPEGの最高画質で撮って3:2にトリミングしている。Lightroomは通しているが、JPEGなのでそんなにいじっていない。
PENTAX WG-3 GPS, 5.5mm(31mm相当), f3.1, 1/320sec, ISO125, -0.7EV
ネズミモチの花。フルサイズ一眼レフによる等倍マクロ域は、深度のコントロールが大変だ。絞りを開けてボカせば良いってものではない。
でもこのクラスのカメラはあまり深度を意識する必要はないというか、意識しようがない。ただ撮るだけで適度な深度が得られる一方、そこそこボケも得られたりする。
PENTAX WG-3 GPS, 5.5mm(31mm相当), f3.1, 1/80sec, ISO125, 0EV
水滴にこのくらい近寄るとLEDライトが特に生きてくるようだ。
スキー用としては使わなくなったものの、売却も面倒でそのまま死蔵してあったカメラなのだが、これはなかなか面白い。背面液晶の粗さやレスポンスの鈍さなど、いろいろ古くささを感じるようになってきたが、まだしばらく取っておこうと思う。
OLYMPUS TG-5で撮ってみる
次に現役のスキー用カメラ、OLYMPUS TG-5を使ってみよう。1/2.3インチ12MピクセルのCMOSセンサを搭載している。より古いWG-3 GPSより画素数が落ちているところが面白い。高画素より全体のバランスを狙ったのか、単にセンサーの入手性の問題かも知れない。
OLYMPUS TG-5, 5.5mm(31mm相当), f2.3, 1/125sec, ISO500, 0EV
雨の日にいっそう写真映えするキンシバイ。雌しべ部にたまった水玉のどアップなんて簡単に撮れてしまう。
ただしTG-5はLEDライトがついてない。いや、正確にはついているのだが、マクロ撮影で役立てるにはLG-1というちょっとしたアダプターが必要になる。残念ながらLG-1は持っていないので今回は自然光だけで撮った。やっぱりWG-3 GPSと比べるとちょっと何か足りない感じがする。
OLYMPUS TG-5, 5.5mm(31mm相当), f2.3, 1/50sec, ISO800, 0EV
しかし、使用感はTG-5の方が断然良い。AF含めて圧倒的にレスポンスが良いのだ。あと、背面液晶も明るくて高画素で見やすい。これは世代の違いだろう。成熟しすぎて衰退していくコンパクト機の世界でも、やはり進化はしていたのだ。
OLYMPUS TG-5, 5.5mm(31mm相当), f2.3, 1/125sec, ISO400, 0EV
なお、このカメラの最大の特徴はRAW記録が出来ることだ。マクロ撮影にかかわらず、WGからTGに乗り換えた大きな理由のひとつがこのRAW記録だ。このクラスのカメラで撮った写真といえども、RAWファイルは情報量豊かで丁寧に現像するととても綺麗な絵に仕上がる。
防水コンデジは生き残れるのか?
壊滅したコンパクトカメラ市場において、生き残っているのは1インチ以上のセンサーを積んだ高級機と、超望遠ズームの搭載機と、この手の防水機だけになってしまった。その防水&簡易水中カメラも機種は減って、モデルチェンジサイクルは長くなってるような気がする。
超マクロモードも含めて、この手のカメラでしか撮れない世界が確実にあるはずなので、是非生き残って欲しい。
TGシリーズの現行機はTG-6だ。TG-5との差分はよく分からない。でも欲しい。 WGシリーズはRICOHブランドになって続いている。GPSも搭載しているし1cmマクロもLEDライトもちゃんとあるのだが、レンズが暗くなりSRも無くなった。RAW記録も出来ないようだしTG-6に比べるとちょっと微妙だ。なお、TG-5/6もWG-6もGR3と電池が共用できるというメリットがあったりする。