K-1 Mark IIはじめPENTAX機用のリチウムイオン充電池D-LI90/D-LI90P用の新しい充電器が新発売された。
D-LI90/D-LI90PはPENTAX K-7以降の多くの機種で10年以上にわたって使用されてきた定番電池だ。当然ながらD-BC90/D-BC90PというAC給電の充電器が昔から用意されており、もちろんカメラ本体に必ず同梱されてきた。
そんな中、ここへ来て登場した新たな充電器は何が変わったかと言えば、ACからUSB-PDによる給電に変更されたのだ。その結果D-LI90/D-LI90Pを急速充電することが出来るというではないか。
新発売された充電器は2つのキットが用意されている。ひとつはUSB-PDアダプター付きのK-BC177J(上)で、もう一つは充電器単体のD-BC-177(下)だ。
K-BC177Jでは約150分の急速充電が出来るが、D-BC177に市販のPDアダプターを使った場合は充電時間は少し延びるとされている。しかしこれはK-BC177Jの組み合わせのみ検証済み(≒保証可能)という程度の意味で、USB PD(またはQC?)の規格から外れた特別なことをしているわけではないと推測する。
それにしてもこのK-BC177J同梱のPDアダプターの野暮ったさはいただけない。今時こんなものナシだろう。ということで、D-BC177単体のほうを買ってみた。メーカー保証はなくとも、その辺にゴロゴロしているUSB-PD対応のアダプターとケーブルを使えば、きっと急速充電できるはずだ。
D-BC177をさっそく購入
さっそく届いたD-BC177を眺めてみよう。
USB Type-Cコネクタ以外に特に見るところはない。ちなみにリコーイメージング公式ストアで5500円(10%ポイントつき)だった。純正品だから仕方ないがけっこうお高い。
従来のAC式充電器D-BC90P(左)と並べてみると、D-BC177(右)は厚みがかなり薄くなったことが分かる。AC-DC変換がなくなって、内部回路が小さくなったのだろう。
ちなみに重量も軽くなっている。D-BC177は55g、D-BL90Pはスペックが見つからなかったが、実測で74gだった。約20gも軽くなっている。
D-BC177の裏面には定格が書かれている。入力電圧は5Vだけでなく9Vまたは12Vに対応しており、入力電流は最大3Aとなっている。
出力のほうは実際にバッテリーへ加えられる電圧と充電電流のことで、充電電圧は8.4V(リチウムイオン電池2セル対応)で最大充電電流は1.5Aとなっている。D-LI90/D-LI90Pは1860mAhだから、概ね約1C弱(→ 13Wくらい?)で充電できるようだ。
ちなみに旧型のD-BC90Pの場合、出力電圧は同じく8.4Vだが充電電流は200mA(→約0.1C?)となっており、D-BC177とは充電時間にかなり差が出るはずだ。
さて、手元にあるPD対応のACアダプターとしては、iPhone 11 Pro MaxとiPad Proに付属してきたものがある。これは9V/2A(=18W)まで対応している小型のUSB-PDアダプターで、ノートPCなどを充電するのは無理だが、タブレット以下の小型機器は大抵これで用が足りる。GR3の充電もこれを使っている。
ということで、D-BC177もこのAppleの18Wアダプターとの組み合わせで使う予定だ。D-LI90Pくらいの電池なら、これ以上の容量があるPDアダプターを使っても多分意味はないだろう。これこそジャストサイズと思われる。
充電テスト
さて、どのくらいの時間で充電できるだろうか? さっそく試してみよう。
D-LI90/D-LI90Pは現在手元に新旧合わせて8個ある。その中でもK-1 Mark II Silver Editionに付属してきた2個は、まだ2サイクル程度しか使用していない新品だ。しかも製造ロットは”202005″と、とても新しい。
これをK-1 Mark IIが起動しなくなる(「電池残量がありません」の警告が表示されて使用できない状態)まで使い切ってから、Appleの18Wアダプターを接続したD-BC177にセットし、充電ランプが消灯するまでの時間を計ってみた。参考までに比較対象としてほぼ同程度まで放電した別のD-LI90P(こちらは2015年製の使い古し)を従来の充電器D-BC90Pで充電してみた。
結果は以下の通りだ。
充電器 | 充電時間 | 条件 |
---|---|---|
D-BC177(Apple 18W PDアダプター) | 110分(1時間50分) | 202005ロット、起動不能まで放電 |
D-BC90P | 270分(4時間30分) | 201512ロット、残量赤表示まで放電 |
うむ、素晴らしい! テスターなどを使って実際の電圧や電流は観測していないが、結果的に恐らく約1C弱、最大15W程度で充電されたと思われる。従来のD-BC90Pに対して充電時間は半分以下、1/3に限りなく近くなりそうだ。
なお、USB充電に対応したと言うことは、モバイルバッテリーからの充電も可能なはずだ。あまり大容量のモバイルバッテリーは持っていないのだが、iPad Pro 11inch(第1世代)にはUSB Type Cコネクタがついており、iPhoneへの給電が出来ると言うことを思いだした。つまりこのiPad Proは7800mAhクラスのモバイルバッテリーを兼ねているのではないか?と。
ということで、iPad ProとD-BC177を接続し、D-LI90Pをセットしてみたら… ちゃんと充電ランプが点灯した。充電時間がどのくらいかかるかはまだ検証していないが、いざというときにこの方法が使えると言うことが分かった。これは意外に出先で役立つ場面があるかも知れない。
K-3 Mark IIIに同梱されるのか?
来るK-3 Mark IIIは相変わらずD-LI90Pを使うようだが、一方で本体はUSB-PDに対応するらしい。これで本体充電あるいは給電駆動が可能になるのだろう。考えてみればGR3はすでにそうなっているし、他社のカメラもほとんどがそうなっている。
そこで、ちょっと心配しているのは果たしてK-3 Mark IIIの本体キットにこのD-BC177が同梱されるのか?という点だ。まさかあの野暮なACアダプターとセットのK-BC177Jが同梱されるとは考えずらい。急速充電は出来なくてもD-BC177と小さなUSB出力のACアダプターが同梱されるのだろうか? それならそれで良いと思う。
ただ、もしかしたらGR3のように本体キットには充電器は含まれず、別売りと言うこともあるかもしれない、と思っている。その場合、もう一つくらいD-BC177は買わないといけないかも?と思っている。
それはさておき、これはすべてのD-LI90/D-LI90Pユーザーに是非お勧めしたい、持っていて損はない充電器だ。D-BC177だけ入手して、適当な使いやすいUSB-PD(あるいはQC?)アダプターを流用するのが良いと思う。