PENTAX KPのファクトリーカスタムモデル "J limited" をどう受け止めるのか?

2019-07-12

 6月中旬に PENTAX KP J limited なる新製品が発表された。PENTAX KPをベースにしたカスタムモデルで、外装に色々と手が加えられている。詳細については公式サイトを見て欲しい。

 昨年の早い段階からSNS上で「こんなの作ってみました」的な情報が流され、今年のCP+では実物が参考展示されていたものだ。あくまでも製品化は未定とされていたが、めでたく今月末から出荷が開始されることになった。

 全て受注生産扱いなので恐らくカメラ店の店頭にデモ機が並ぶ、と言うことはなさそうだ。実物を見たければリコーイメージング・スクエアに行くしかない。ということで、先週末に新宿に行ってきた。

PENTAX KP J limitedby Apple iPhone X
 実物を手に取れるかと思っていたら、アクリルのケース内に入っていた。まぁいいや。実体はKPだから触る必要はない。左のレンズ付きが”Black & Gold”で、右のマウントむき出しが”Dark Night Navy”だ。ふむふむ、なるほど。

 外装や木製のグリップも良いけど、マウントがコーティングされていて少し黒光りしているのが超格好イイ。レンズを取り付けると全く見えないところに手間をかけてるという無意味さが特に良い。欲しい。

PENTAX KP J limitedby Apple iPhone X
 どちらもカラーも色味に関しては写真で見た印象と大きくは変わらない。落ち着いていて渋い色で質感も良い感じだ。

 特に光の当たり方で艶が強く感じられる”Dark Night Navy”のほうが印象的だ。せっかくカスタムするなら明確にオリジナルとは違う感が欲しいし、一方で実用性を損なうほど突き抜けてはいない絶妙なバランスだと思う。

 実際”Dark Night Navy”のほうが予約数が多いとの風の噂を聞いた。でもそうなると、より希少な”Black & Gold”のほうが良いか?とも思えてくる。だってやっぱりこういうのは「他人と違う物」が欲しいわけだから。

PENTAX KP J limitedby Apple iPhone X
 特徴的なペンタ部の張り出しを下から覗いて確認してみた。この J limited のデザイナーさんはあのK-30をデザインした人でもあるらしい。ペンタ部の出っ張りには相当なこだわりがあるのだろう。長ければ長いほど格好イイ的な感じだろうか。

 しかしこの庇のおかげでDFAレンズを中心に取り付けられないレンズが何本かある。その場合はこの庇部分を取り外してしまえばOKだから、大した問題ではない、はずだ。あと庇つきの場合はホットシューが使えないが、それも多分大した問題ではない、はず…。

PENTAX KP J limited関連ディスプレイby Apple iPhone X
 展示の横には小さな値札パネルがあった。公式ストアではボディのみ14.8万円なり。マップカメラだと13.4万円ほどだ。他の量販店でも似たようなものだろう。ちなみに普通のKPは8.3万円ほどなので、だいたい5万円くらい高い。

 上の写真では照明が反射してしまったけど、48回ローンで金利0パーセントのキャンペーンも行われている。カメラ&レンズ沼界隈では、金利0パーセントローンは「実質無料」と言うことになっているらしいから、これはお得だ。

PENTAX KP J limited カードby RICOH GR3
 さて、ここまでまるで買う前提である素振りで話を進めてきたが、残念ながら実際には多分買わないだろう。なぜなら中身がKPだからだ。いや、KPが嫌いだとかそういうことではない。自分の用途には合わないというだけだ。

 それに今からDAレンズを揃えるのもツライ。DA★11-18mmとDA20-40mm Limitedは絶対必要だし、その他色々欲しくなるに決まっている。それはとても楽しそうツライ。

 あと、肝心のデザイン面で正直なことを言うと、色やグリップは良いと思うけど、ペンタ部のカバーはどうかな?と思っている。特に側面の”PENTAX”ロゴはどうも気に入らない。

 このPENTAX KP J limitedのコンセプトを表すキーワードとして「1%ter」という言葉が使われている。

 この「1%」の母数は何なのだろう? 全人類? 全カメラユーザー? 全一眼レフユーザー? 全ペンタキシアン…? いずれにしても極一部の人だけを対象にしたニッチ商品であることを自ら宣言しているわけだ。

 これはぐっと心に響いてくる。マイノリティであることをアイデンティティにしているペンタキシアンにとっては特に。「分かる人に分かればいいんだよ」と言われているのに、自分は「分からない」ほうに分類されるのかと思うと悔しい。自分はもしかしてペンタキシアンの資格がないのではないだろうか?

 また、カメラのような高度な工業製品にとって、こうしたごく少量生産を前提にしたカスタム製品が出てくるというのは、市場が(いい意味)で成熟している証ではないかと思う。シェアとか生産台数とか生産効率とか成長度とか、そういう工業化社会が追ってきた価値観とは別の次元にあるわけで、そんな製品を市場に出すことができるリコーイメージングは、実はカメラ業界では最先端を行っているのだと、個人的には思っている。

 願わくはこれがちゃんと事業として成り立ち、持続性があることを祈りたい。

2019-07-12|タグ: , , ,
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