おまえはK-3 Mark IIIのことを何も分かっていない

2022-11-19

 長い間待ち焦がれた末、2021年4月23日にやっと登場したPENTAX K-3 Mark IIIを発売日に手に入れてから約1年半。ミラーレス主流の新時代に遅れてやってきた最新鋭の一眼レフであり、今後のKマウントを背負っていく運命を持った機種なので、ペンタックスユーザー、とりわけペンタキシアンを名乗る一人として手にしないわけにいかない1台だったのだが……

 いろいろ考えた末にこの辺で手放すことにした。
 

PENTAX K-3 Mark III + DA20-40mm リミテッド

 以下、どうしてそうなったのか反省しつつ、この1年半の間にK-3 Mark IIIで撮った写真の中から適当に選んだやつを貼っていく。本文とは特に関係はない。
 

深紅のバラPENTAX K-3 Mark III, smc FA43mmF1.9 Limited, f2.0, 1/800sec, ISO100, -0.7EV
夕暮れの空と月PENTAX K-3 Mark III, HD DA55-300mmF4.5-6.3 ED PLM WR RE(55mm), f4.5, 1/100sec, ISO400, -0.7EV
 難産の原因となったと言われるファインダーは素晴らしいし、シャッターフィールの軽快さも歴代Kマウント機では最高だ。レスポンスも今どきのカメラらしいし、画質も良くて、機能や操作性も細かいところまで考えられている。外装も格好イイと思うし、レンズを含めたサイズ感もちょうど良い。

 1年半前に手にした時は、もしかしたらメイン機をK-1 Mark IIからK-3 Mark IIIに乗り換えることになるのかも知れない、と思っていた。しかし幸か不幸かそうはならなかった。

 その一つの要因として、HD DA★16-50mmF2.8ED PLM AW がどうしても気に入らなかったことは、自分にとってのK-3 Mark IIIへの評価に大きな影響があったかも知れないと思っている。いや、今になって思えば逆にK-3 Mark IIIがしっくり来ていなかったから、あのレンズも気に入らなかったとも言えるのだが。もはやどっちでも同じことだ。
 

小諸城跡 懐古神社と紅葉PENTAX K-3 III, HD DA*16-50mm f2.8 ED PLM AW(24mm), f8.0, 1/160sec, ISO200
東京国際フォーラム ホールC入り口PENTAX K-3 III, HD DA*16-50mm f2.8 ED PLM AW(28mm), f5.6, 1/13sec, ISO125 
 もしかしたら、”次期APS-Cフラッグシップ”として待たされている間に勝手に妄想が進み、あらぬ方向に過度に期待をしすぎていたのかもしれない。その結果、感覚というか感情というか、理屈ではない部分の相性問題がこじれてしまった、という気がする。

 いやいや、相性とかそんなあやふやなことじゃないくてもう少し具体的にここが気に入らない、という話はないのか?と言えば、ないことはないのだが、あまりそう言う生々しい話は書きたくない。だから過去に書いたもので代用することとしたい。

 K-3 Mark IIIについてレビューらしいことを書いたエントリーはこれまで2つほどある。

 どちらも最終的にべた褒めで星5つの満点と結論としているが、気に入らない所についてはやはり当初からチクチクと書いてある。ここから重要な所をひとつだけ書き出すとしたら……

 しかしそのこだわりのために得られたもの(撮れるようになった写真)よりも、失ったもの(撮れなくなった写真)の方が遙かに大きいと思う。

 これに尽きると思う。

 ファインダーが良くなったことをはじめ、撮影体験の質の向上は確かに感じられる。しかし、自分にとってはこのカメラのおかげで「撮れるようになった写真はない」一方で、確実に「撮れなくなった写真がある」と感じてしまうのだ。事実か気のせいかどうかは別にして。

 各製品に向き不向きがあるのは当たり前であり、OVFであること含めて、得意項目と不得意項目のバランスこそがK-3 Mark IIIのコンセプトそのものなのだ、と言われたらそれはその通りだろうと思う。それはよく分かる。

 だとしたらこのカメラは”Not for me”なのだとも思う。つまり自分にはこのカメラのコンセプトを理解できていないし、納得出来ない。この期に及んでようやくそこに気がついた、という次第だ。
 

カワセミ(正面左向き:雄)PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 1/800sec, ISO800
MacLaren MCL36 / Daniel RicardoPENTAX K-3 III, HD DA55-300mmF4.5-6.3 ED PLM WR RE(300mm), f11, 1/100sec, ISO200
 そんなこんなで最近はK-3 Mark IIIを使っていても楽しいと感じられず使用頻度がガクッと落ちていた。

 とは言えせっかく買ったものだし、そのまま眠らせておいても良いのだが、K-1 Mark IIやNikon Z 5を取り出そうと防湿庫の扉を開けるたびに、寂しそうに、恨めしげにこっちを見てくるK-3 Mark IIIの視線がつらい(過度な擬人化)。

 残念ながらハネムーン期間は終わったのだ、と言い訳したところで、そんなお古(K-1 Mark II)やよそ者(Nikon Z 5)とは今でも仲良くしてるではないか? なぜ私ではダメなのか? と問い詰められているような気がする。答えに窮して思わず目をそらしてしまう。

 ……なんか変なたとえ話になってしまった。気持ち悪い!と思われたなら申し訳ない。でもまぁ、実際のところそんな気持ちだ。
 

木PENTAX K-3 III, HD DA20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR(20mm), f8.0, 1/200sec, ISO100
城南島海浜公園の夏PENTAX K-3 III, HD DA20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR(20mm), f8.0, 1/1250sec, ISO100, -1.7EV
 ということで、K-3 Mark IIIを諦めるついでにDAレンズも整理することにした。

 と言っても、同時に手放すのは HD DA 20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR だけだ。このレンズは2回買って、ろくに使わずに2回とも手放すという縁の薄いレンズになってしまった。春のスペシャルカスタムイメージ対象レンズであるという点だけが気がかりなのだが、K-1 Mark IIに組み合わせる気にもならないので、春のことはまた春になったら考えることにしよう。
 

PENTAX K-3 Mark IIIにpdアンカーなど取り付け

 レンズにしてもカメラにしても、過去何度もそういうことがあったように、手放してから分かる価値が見えてくるかも知れないし、また状況も心境も変わるかもしれない。一度冷却期間を置くみたいな。

 二度と手にすることはない、とは断言できない。未練がつのりシレッと買い戻す日が来るかも知れないので、それまでしばしのお別れということにしておこうと思う。
 

関連記事