PENTAX K-3 Mark III 発売から1年が経過した

2022-04-23

 待ちに待って待ちくたびれた末に、ようやく PENTAX K-3 Mark III が手元に届いたのは今からちょうど1年前のことだった。

PENTAX K-3 Mark III シルバー

 手にしてから1ヶ月経過した時点で一度レビュー的なエントリーを書いた。1年経った今、答え合わせ的な意味も含め↓この記事とまったく同じフォーマット(項目)で再度 K-3 Mark III について感じていることをまとめておこうと思う。

 いつもの免責を先に書いておくと、この内容は「※個人の感想」に過ぎない。異論は多々あると思うが「そんな風に思うやつがいるのか」程度に受け取ってほしい。

製品コンセプト:★★★★☆

 K-3 Mark IIIはその製品名が発表されるまでは「新APS-Cフラッグシップ機」とか呼ばれていたが、結局それがこのカメラの「コンセプト」の全てなのだ、と今にして理解した気がする。

天子の梯子PENTAX K-3 III, HD DA*16-50mm f2.8 ED PLM AW(50mm), f5.6, 1/2500sec, ISO200
 しかしリコーイメージング自身は、撮像素子サイズに関わらずこれぞPENTAX史上最新にして最高の「デジタル一眼レフのフラッグシップなのだ!」と、言いたいのではないかと勝手に想像している。少なくとも建前の上では。

 しかし実際のところその製品名が表す通り、このカメラのコンセプトはK-3シリーズのそれであり、もっと言うとK-7からK-5/K-5 IIを経てきた流れの延長線上にいると考えると、このカメラの成り立ちについていろいろと納得いくことが多い。

 それは良いことなのか?そうではないのか?…… いずれにしろ筋が通っていることに間違いはないと思う。

光学ファインダー:★★★★★

 大変な苦労をして完成させたという光学ファインダーの出来は素晴らしい。高倍率で色付きもなくクリアで歪みもなく、ミラーの動きにがキレがありバウンスもない、とても良い一眼レフファインダーだ。

松代城跡の紅葉PENTAX K-3 III, HD DA*16-50mm f2.8 ED PLM AW(16mm), f8.0, 1/200sec, ISO200
 K-1の黄色く暗いファインダーに文句を言いまくった我々ペンタキシアンの意見を聞いてくれた……というだけではなく、ミラーレス全盛の時代に「フラッグシップ」を名乗る一眼レフを敢えて出すなら、最高の光学ファインダーを目指すのは当然だったのだろう。

梅雨のカエデPENTAX K-3 III, HD DA20-40mm F2.8-4ED Limited DC WR(40mm), f4.0, 1/125sec, ISO1600
 ただ、K-3 Mark IIIの素晴らしいファインダーを見ているとむしろ、評判悪いK-1のファインダーだって腐ってもフルサイズなのだ、ということに改めて気づかされる。そうなると当然44×33や645、66や67などのファインダーはどんなに素晴らしいのだろう?と思ってしまうのも事実だ。

 元も子もないことをぶっちゃけて言ってしまうと「APS-Cのなかではかなり良い」というのが、K-3 Mark IIIのファインダーに対する正確な評価ではないかと思う。

画質:★★★★★

 解像感やノイズ、発色とかホワイトバランス、ダイナミックレンジなどなど、撮れる画像に関してはまったく不満はない。

 リコーイメージングとしてはAPS-Cで26Mピクセルの裏面照射CMOSセンサーは初採用だと思うが、しっかりとPENTAX風の絵に合わせ込まれている。少し心配していた裏面照射特有の薄味感というかモヤモヤ感は感じられない。 

紅葉とカワセミPENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 1/400sec, ISO3200
 むしろ画素ピッチの細かさに反して高感度もとてもきれいだし、出力される画像は今風でスッキリとしていて、RAWをいじっていても余裕が感じられてとても扱いやすいデータが出てくる。これは撮って出しでもボディ内現像でもRAW現像でも、同様にその恩恵を感じられる部分だと思う。

 それだけに、これで画素数が50Mピクセルくらいあったらいいのにと思う。それは「もっと画素ピッチを詰めて高画素を!」というよりは「この画素ピッチのままサイズを36×24㎜にしたらきっと最高なのに……」という意味でもあるのだが。

動体性能:★★★☆☆

 この項目については11か月前も少し辛口につけたと思うが、1年たった今でもその評価は変わっていない。

 よく言われるAFの話ではない。AFは最高ではないけれどもとても良くなったし、実際そんなに悪くないと思っている。AFエリアに被写体がちゃんと収まっていれば、精度も速度も問題ないしそこそこ追従する。最新ミラーレスとの違いは被写体認識系の機能がないことだと思う。目的の場所にAFエリアを持っていくことに一手間かかるし、ワンテンポもツーテンポも遅れるし、結果失敗することが多くなる、のは事実だ。

ルフトハンザA340-300PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(150mm), f9.0, 1/1600sec, ISO320
 それよりも連写性能の中途半端さは本当に残念極まりない。それこそAF同様に使いこなしで何とかなる(何とかしてきた)部分とはいえ、バッファの少なさとカード書き込みの遅さは、とても「フラッグシップ」と言えるレベルにはないと思うし、K-3 Mark IIIのスペックと実物を見て、もっともガッカリした部分だ。

河津桜とメジロPENTAX K-3 III, HD DA55-300mmF4.5-6.3 ED PLM WR RE(260mm), f5.6, 1/1000sec, ISO320
 これでは12コマ/秒というスペックも瞬間最大速でしかないし、もっと悪いことは連写速度を落としても解決しないという点だ。単純にバッファサイズの問題ではないという致命的な問題を抱えてることを窺わせる。

 当初はK-5の時のようにファームで改善されたりしないだろうか?と淡い期待を抱いていたが、残念ながらそれは夢で終わりそうだ。

操作性:★★★★★

 発売当初はメニュー構成が一新されGRベースの縦スクロールになったことで界隈はざわついたが、今となってはどうでもいいことだったと思うようになった。

 それよりも、操作性が改善されたと実感するのはAFポイントのセレクトレバーの存在と、ユーザーモードの使い勝手が良くなったことが大きい。あとはスマートファンクションも。

壁PENTAX K-3 III, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f8.0, 1/160sec, ISO200
 メニューを一つ一つ深掘りし、根気よく自分好みにカスタマイズを追求した結果、ピタッと嵌まるところが見つかった、という感じだ。

 その中でひとつ非常に細かい例を挙げるとすれば「USER設定の復元操作」のType2がとても素晴らしいと思っている。これのおかげでユーザーモードが使えるようになり、その結果AF関連などなど細かい設定を自分好みに最適化でき、最終的に大抵の場面で快適に撮れるようになったと実感する。

 持てる性能や機能をちゃんと発揮させるために、それなりの設定の追い込みが必要だとすれば、もしかしたら「操作性」あるいは「機能性」は悪いのかも知れない。でも「やればできる」という点を素直に高評価したいと思う。

デザイン:★★★☆☆

 見た目という意味でのデザインはとても良いと思う。大きさや重さ的にもちょうどいい。この「ちょうどいい」サイズ感は、それこそAPS-Cサイズのセンサーを使っているからこそ実現できているのはよく理解している。

紫陽花PENTAX K-3 Mark III, HD DFA*50mmF1.4 SDM AW, f1.4, 1/400sec, ISO100
 そしてこれはもしかしたらデザインではなくて操作性、あるいはコンセプトの話なのかもしれないのだが、K-3 Mark IIIを使っていてどうしても気になるのは固定液晶であることだ。

ウミネコと夏の雲PENTAX K-3 III, HD DA55-300mmF4.5-6.3 ED PLM WR RE(300mm), f6.3, 1/1000sec, ISO100
 ボディを薄くしてファインダーを覗きやすくするためという、光学ファインダーへのこだわりとして理由が説明されているが、個人的に納得していない。それはあまりに独善的すぎるのではないかと思う。

 しかしそのこだわりのために得られたもの(撮れるようになった写真)よりも、失ったもの(撮れなくなった写真)の方が遙かに大きいと思う。

総合評価:★★★★★

 なんだか、文句や未練をグダグダと書いてしまったが、そうは言ってもK-3 Mark IIIはとても良いカメラだと思っている。本当に。

 技術的な未達部分はあっても、敢えて手を抜いたとか、コストを優先したと感じられる部分はほとんどない。レンズ交換式カメラとして、サイズや重量と画質のバランスに優れており、なにより手触りが良い。特にシャッターフィールはキレがあって柔らかくて最高だ。良いカメラを使ってる感に溢れていて使っていて楽しい。

 だから写真を撮るという行為やその一連の行動(散歩や遠足や旅)を楽しむためであれば、このカメラと数本のレンズがあれば、とても豊かな写真ライフが送れるのではないかと思う。

白昼の月PENTAX K-3 III, HD DA55-300mmF4.5-6.3 ED PLM WR RE(300mm), f8.0, 1/320sec, ISO400
 もちろん、被写体によって向き不向きがあって決してオールラウンダーではない。このカメラでしか撮れない写真はないかも知れないが、このカメラじゃないと得られない「体験」はあるのではないか思う。

 さて、11ヶ月前の評価と比べると、操作性の★が+1となり他の項目は変わっていない。総合評価としてはやや甘めであるのは承知の上で、★4つに+1して★5つを結論としたいと思う。

K-3 Mark IIIを通してK-1 Mark IIIの幻を見る…

 さて結果的に満点を付けたところで一方、ここまで読んできた方はうすうす気付いてると思うが、結局なにが言いたいかというと「自分はグズでのろまでデブなK-1 Mark IIのほうが好きだ」ということだ。それは「K-1 Mark IIIがほしい」と意訳しても良い。誰もそんな話してないのに。

 しかしK-3 Mark IIIを使っていると、どうしてもK-1 Mark IIとくらべてしまう。そしてその後ろにはK-1 Mark IIIの幻想を見てしまう、というのが偽らざる本音だ。これは恐らく理屈ではなく感情なのでどうにもならない。

PENTAX K-3 Mark III + DA20-40mm Limited シルバー

 「APS-Cとフルサイズ程度の違いでカメラを語るのはナンセンスだ」と言われたら全くその通りだと思うし、そもそも「フルサイズとAPS-Cで何がそんなに違うのか?」と問われても答えられない。敢えていうならそれは「雰囲気であり気分だ」となる。あるいは「ロマン」と言い換えてもいい。

 でも、一眼レフ(もしくはデジタルカメラ自体)がもはや雰囲気を楽しむためのものなのだとしたら? 便利な可動液晶を捨てて光学ファインダーが醸し出す「雰囲気」に拘りを見せたのであれば、それをもう一歩進めたって良いではないか。理屈ではないのだから。 
 


 

2022-04-23|タグ: ,
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