発売から一ヶ月経過したPENTAX K-3 Mark III 勝手にユーザーレビュー

2021-05-31

 PENTAX K-3 Mark IIIが発売されてから早くも1ヶ月と1週間が経過した。

 この間に約5,500カットほど撮影(もちろんその大半はボツ作だ)してきた中で、このカメラについてようやく分かってきたことや、新たな発見などもある。

PENTAX K-3 Mark III

 ここで一度、ある程度冷静な目でPENTAX K-3 Mark IIIを評価してみようと思う。もちろん1年くらい経たないと本当のところは分からないかも知れない。なのでこの評価はあくまでも暫定だ。

 そこで、PENTAX officialにて公開が始まったユーザーレビューのフォーマットをそのまま真似てみることにした。

 本当はちゃんとこのPENTAX officialに投稿したのだが、システムトラブルによって消えてしまったらしい。再投稿する気力がなかったので、ここで勝手にユーザーレビューすることにした。特典のホットシューカバーのことなんか知らない。

 以下に貼った写真は、これまでにK-3 Mark IIIで撮ったものの中から、過去記事に使わなかったカットであり、特に前後の本文とは関係がない。

製品コンセプト:★★★★☆

 製品コンセプトとは何だろうか?「APS-Cフラッグシップ」であり「光学ファインダーへのこだわり」だろうか? 勝手に「動体対応」がコンセプトの柱だと思っていたのだが、それはもしかしたら誤解で、一部でしかないかも知れない。

シマウマの遊具PENTAX K-3 Mark III, smc FA43mmF1.9 Limited, f2.0, 1/800sec, ISO100, +0.7EV
 ただ実機を手にして思ったのは「これはやっぱり”プレミアムスモール”路線なんだな」ということだ。見た目はずいぶん変わったように感じるが、手にすると結局のところこのカメラはK-7以来の流れの延長線上にあると実感する。

 ただ、一抹の不安があるとすれば、これが今の時代、そしてこれから5年先を見据えた一眼レフカメラなのか? という点だ。登場するのが2年遅かったのではないかと思う。

光学ファインダー:★★★★★

 前評判通り光学ファインダーの出来はとても良い。透過液晶を使いつつも明るくクリアで倍率も高い。だが、あっという間に慣れてしまい、もはやこれが当たり前になってしまった。

夕陽の空を飛ぶ飛行機PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f16, 1/640sec, ISO100, 0EV
 新設計のペンタプリズムには相当力を入れたようだが、スクリーンは今まで通り特に変わってないようだ。出来ること出来ないことは色々あると思うが、スクリーンについては新しくする余地はないのだろうか?

 ただ、一眼レフファインダーの評価ポイントは明るさやクリアさ、倍率だけではない。ピントの見え方はまもちろん、ボケの再現性や、視野外の暗部の締まり。ミラーのバウンス、像消失時間などのトータルできまる。

 どんなに明るくてクリアでも、ボケが見えない一眼レフファインダーはけっこうある。素晴らしい見え味なのにシャッターを切った瞬間にガッカリする一眼レフファインダーもある。その点、K-3 Mark IIIのファインダーは総合的にバランス良く出来ていると思う。

画質:★★★★★

 そうは言ってもAPS-Cなんだろ?と心のどこかで思っていた。

ポピーPENTAX K-3 Mark III, smc FA77mmF1.8 Limited, f2.0, 1/3200sec, ISO100, 0EV
 しかし確かに画質は良い。といっても個人的な「画質」の判断ポイントは現像耐性がメインだ。RAWファイルをLightroomでいじるとき、K-1 Mark IIの感覚で各パラメータを触っていても何の違和感もない。ノイズ感にしろ発色にしろハイライトやシャドウにしろ先鋭さや解像感にしろ、取り出したいところを取り出そうとすれば、ちゃんと情報が出てくる。

 つまり情報量が多い≒画質が良いなのだろうと勝手に判断している。撮って出しやボディ内現像はほとんど使わないからその辺のことは分からないが、小画素ピッチのネガはほとんど感じられない。

 高感度性能もK-3 Mark IIIの大きな特徴一つであり、すでにいろいろなレビューが出ているが、自分ではまだほとんど試していない。今後の課題だ。

動体性能:★★★☆☆

 個人的にこのカメラに最も期待していたのは動体撮影能力だ。非常に大ざっぱに言って、動体撮影能力にはAFと連写の二つの要素が絡んでくる。

コサギPENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(360mm), f5.6, 1/1600sec, ISO400, -1.0EV
 AFに関しては本当に良くなった。精度も速度も、そしてなにより多点AFポイントがちゃんとまともに使えるようになったことが大きい。レンズによるかも知れないが、端っこのAFポイントも安心して使える。だからまだ足りないこともあるとは思うが、AFについては暫定ながらも★5つを付けても良いと思っている。

 ただし連写性能については端的に言ってガッカリしている。最高12コマ/秒の速度と、それを実現するためのメカの動きの俊敏さは素晴らしいが、何しろバッファ(連続撮影可能枚数)が足りない。カードスロットの規格もUHS-II対応がスロット1のみと最低限すぎる。
 

羽田空港の22から離陸するJAL B787-8PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f8.0, 1/800sec, ISO160, -0.3EV
 どうもRAW記録時の連続撮影可能枚数のスペックを見ていると、単純なメモリー容量とカード書込速度の問題ではなく、別のところにボトルネックがあるように思える。将来的にファームウェアアップデートで本来の能力が解放されることに淡い期待を持っている。

 だから連写性能については、やや厳しめではあるが★2つしかつけられない。ここがK-3 Mark IIIの最大の弱点だと思う。

操作性:★★★★☆

 操作性で気に入っているのは、実は新しくなったスマートファンクションではなく、十字キーを含む多くのボタンがFxボタンとしてカスタム可能になったことだ。これは素晴らしい。少しずつ変更しながら好みに合わせ込む作業をしているところだ。

虹PENTAX K-3 III, HD DA20-40mm F2.8-4ED Limited DC WR(30mm), f3.5, 1/60sec, ISO100, 0EV
 スマートファンクションはしっかりと全貌を理解する必要がある。そうすればそこそこ便利ではないかと思う。が、今は概ねEダイヤルに設定したままになっていて、あまり切り替えることはない。

 操作性で一番大きな問題は縦スクロース式に変更されたメニューだと思っていた。しかし、GR3とほぼ同じ構造とデザインだし、ニコンのメニューも縦スクロールだ。だからまぁ、実際に使っていると、だんだん慣れてきたという感じだ。それに、ある程度設定が固まったら日常的にあまりメニューを開くこともなくなる。

 操作性という点では、AFポイントのセレクターレバーは素晴らしい。AFポイントがあまり多すぎないこともあって、非常に素早くAFポイントを選ぶことができるし、ファインダーを覗きながらの操作感も良好だ。

デザイン:★★★☆☆

 ボディデザインはとてもよい。一眼レフらしいスタイリングで、けっこうスリムだ。そしてトップカバーがすべてマグネシウム合金になったこともあり、質感もとても良い。

トタンの壁PENTAX K-3 III, HD DA20-40mm F2.8-4ED Limited DC WR(20mm), f4.5, 1/125sec, ISO3200, -0.7EV
 ということでハードウェアの「デザイン」はとても満足なのだが、納得いかないのが背面液晶に表示されるステータススクリーンの「デザイン」だ。

 まるでエクセルで描いた初期案をそのままグラフィックに落とし込んだんじゃないかという野暮ったさを感じる。露出表示に使われている細いフォントも気に入らないし、Fxボタン表示のアイコンとか、コントロールパネルの表示なんて見てられない。

 外観も含め「見た目」に対する感じ方は個人差があるので、無茶なことを言ってる自覚はある。だがこのステータススクリーンについては、本当に「デザインの好き嫌い」問題なのか?とちょっと疑っている。これはもしや誰も「デザインしてない」のではないか?と。

 メニューが縦スクロールになったことよりも、個人的にはどうしてもこの点が気になり納得いかない。

総合評価:★★★★☆

 ということで結論だ。語彙力が足りないみたいなとても陳腐な言い方だが「PENTAX K-3 Mark IIIはとても良いカメラだ」と思う。

夕暮れの紫色の空PENTAX K-3 III, HD DA20-40mm F2.8-4ED Limited DC WR(24.4mm), f8.0, 1/200sec, ISO160, 0EV
 約1年半にわたり外観を始め製品情報が小出しに明かされてきたなかで、いざ自分の手元に実機やってきたところで、すでに新鮮味が薄らいでいて感動がまったくないとか、期待が盛り上がりすぎた反動で「こんなものか…」とガッカリする可能性もあった。

 しかし実機を手にし、レンズを取り付け、ファインダーを覗いて、ピントと露出を確認してシャッターを切る… と「これは良いカメラだ」と自然とにんまりしてしまう。使っていて楽しいし気持ちが良い。

 特に一番気に入ってるのは「シャッターフィール」だ。音、振動、ファインダーの像消失… シャッター切った瞬間からほんのわずかな時間の間に起こるいちいちの動作から受ける感覚が最高だ。

ピンクのバラPENTAX K-3 Mark III, smc FA43mmF1.9 Limited, f2.0, 1/1250sec, ISO100, 0EV
 だからこのカメラは実は、動体対応の連写機を目指したのではなく、いかにもリコーイメージングらしい、スナップシューター的なカメラなのではないかという気がしてきた。うん、そうかも知れない。
 

購入を検討されている方へのアドバイスと、その他の意見

 もし気になっていて迷ってる人がいるならば、一度是非実機に触れてみることをお勧めする。スペック表をくまなくチェックして比較したり、作例写真を等倍拡大して見るよりも、実機を手にしてファインダーを覗き、シャッターを切って見ればこのカメラの良さは伝わるはずだ。もしそこでピンとこなければ、残念ながらそこまでではないかと思う。

 といっておきながら、現時点でのごく個人的な気持ちをここで白状しておこうと思う。

 ここまで書いてきたとおり、K-3 Mark IIIが優れたカメラであることは、十分すぎるほど理解できている。およそこれ一台あれば大抵のものは撮れる。しかも楽しく、気持ちよく。だが、なぜかまだ趣味の道具としての「愛着」が持てていない気がして、少しモヤモヤしている。

 まぁ、それは半分くらい最初から分かっていたことだし、仕方ない面もある。

 なので、「その他の意見」としてリコーイメージングさんに是非伝えたいのは「ぜひともこの素晴らしいK-3 Mark IIIを作り上げた技術と経験と資産と資金を生かして、K-1 Mark IIIを作って欲しい」ということだ。

 K-3 Mark IIIはそんな期待を強く掻き立ててくれるカメラだ。

 


 

関連記事