Limitedレンズで夏空を写すための専用カスタムイメージ「夏天」を試してみる

2022-07-02

 6月末のとある木曜日、リコーイメージングから突然新しいカスタムイメージを搭載したK-1/K-1 Mark IIおよびK-3 Mark III用の新ファームウェアがリリースされた。「夏天(KATEN)」というその名が表すように、夏の空に最適化したカスタムイメージだそうだ。そして今後季節が進むごとに秋、冬、春バージョンも出す予定であることも発表された。

カスタムイメージSpecial Editionの予定


 界隈をザワつかせたのはこれらのカスタムイメージが「Limitedレンズ限定」であること、もっと正確に言うと「それぞれ特定のLimitedレンズ限定」であることだ。

 今回の「夏天」でいえば、HD DFA 21mmF2.4ED Limited DC WR または HD DA 15mmF4ED AL Limited のどちらかのレンズを取り付けた状態でしか使えない。ボディ内RAW現像する場合もどちらかのレンズで撮影したRAWファイルにしか適用できない。

 このレンズによる制限という企画というかやりかたについては、Twitterなどを中心に賛否や悲喜などいろいろな声が流れていたが、個人的には面白いと比較的好意的に受け取った。秋を除いて一応対象となるレンズもボディも持ってるからかも知れない(一方で秋をどうするか大問題なのだが)。

高彩度、高コントラスト

 「夏天」のコンセプトについては「夏の濃い青空や眩しく白い雲のディティール表現をイメージした」と説明されている。PENTAX機のデフォルトとなっているカスタムイメージ「鮮やか」も、その名の通りわりと高彩度でぱっきりしたイメージだが、それよりもより青空が青くなるのだろうか。
 
CI「夏天」の設定画面

 K-3 Mark IIIのRAW現像モードで設定を見てみるとこんな感じになっている。カラーレーダーチャートはBを強調してるかと思えばそんなことはなくて、何となく「雅」みたいにMとG方向に引っ張られている感じだ。あと、とにかくコントラストが高いくて、パラメータは思い切りプラス側に振ってある。だからもちろん下げてしまうこともできる。

 なお↑ここに貼った画像はK-3 Mark IIIのHDMI出力をスクリーンキャプチャしたものなので、現像対象写真の色味は正確ではないので注意して欲しい。

 そう言っておきながらも、以下に他の代表的なカスタムイメージの設定画面を並べておく。傾向の比較くらいはできると思う。

CI「鮮やか」の設定画面 CI「ナチュラル」の設定画面
CI「雅」の設定画面 CI「リバーサルフィルム」の設定画面

 左上が「鮮やか」、右上が「ナチュラル」、左下が「雅」、右下が「リバーサルフィルム」だ。

 こうして見ると「鮮やか」がとても大人しく見えてくる。そして「夏天」は「雅」よりもむしろ「リバーサルフィルム」に近いようにも思えるが、実際撮るとまたちょっと印象は違う。いずれにしても「夏天」は確かに青空の青さや、直射日光の眩しさや、日なたと日陰とのコントラスト感などをガツンと押し出すには良いかも知れない。
 

実際に夏っぽい景色を撮ってみる

 ということで、散歩がてら早速撮りに行ってみた。カメラはK-1 Mark IIでレンズはDFA21mmF2.4 Limitedだ。

夏天で花壇PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f2.4, 1/2500sec, ISO100
夏天で木場公園大橋PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f11, 1/125sec, ISO100
 「夏天」の典型的な効果を体験するには是非とも青空に雲が湧いていて欲しかったのだが、残念ながらこの日は雲ひとつない快晴だった。東京で夏に西風が吹くと山から吹き下ろす風によって上昇気流が抑えられて雲は発生しなくなり、同時にフェーン現象で猛暑になる。そんな「酷夏天」の日となってしまった。
 

夏天でコスモスPENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f11, 1/160sec, ISO100
夏天でアガパンサスPENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f3.2, 1/3200sec, ISO100
 植物を撮ってるようでいて実際は青空を入れようとローアングルで頑張っている。そして21mmの画角ともなると何をどうしても画面に太陽が入ってくる。これはセンサーが焼けてしまわないか心配だ。しかしだからと言って撮るのをやめるわけではない。さっと構えてサッと撮るだけだ。

 なおキバナではない普通のコスモスがこんな時期に咲いてるのははじめて見た。でも真夏の空とともに「夏天」で撮ると夏っぽくなる。
 

夏天で紫陽花PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f2.4, 1/400sec, ISO100
 もうシーズン終わりかけの紫陽花。空とはまた違った紫寄りの青なのだが、やはりけっこうコッテリとなってとてもよい。しかもこのコントラストの高さは紫陽花に結構合っていると思う。そしてなにげに濃いグリーンも良い。
 

夏天で広場PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f3.5, 1/1250sec, ISO100
夏天で青紅葉PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f2.8, 1/1000sec, ISO100
 うん、グリーンもなかなか濃いではないか。でも、いわゆるペンタックスグリーンとは全然違う方向のような気がする。

 だから好き嫌いや合う合わないはあると思うが、必ずしも青空限定というわけでもなくわりと使い道は広いのかも知れない。
 

夏天で橋と空PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f16, 1/125sec, ISO100
 そしてまた空にレンズを向けてしまった。本当にセンサーを焼かないようにしなくては。

 カスタムイメージ設定画面のレーダーチャートにも現れていたように、「夏天」は単に青の彩度を上げただけではないと言うことが実写でも何となく分かった。そして決して青空専用でもない。むしろ一番の特徴はこのコントラストの高さではないかと思う。だったら従来のカスタムイメージをカスタマイズしたり、Lightroomでそういう現像をすれば同じ感じになるのかもしれないが、それはまたそのうちやってみようと思う。

 そして最終的に、2本のレンズ限定というのはなんだか勿体ないなぁと思えてきた。いや制限があるからこその面白さというのは分かるんだけど。
 


 

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