さて、今年から本格的にPENTAXのKマウントからNikonのZマウントへ移行しているのだが、Kマウントのカメラやレンズはほとんど手放していない。ここ15年くらいの思い出とともに強い愛着があるし、今後万が一戻らないとも限らないので(確率はかなり低い)。
それはともかく、せっかくミラーレスカメラと一眼レフ用のレンズを持っているなら、マウントアダプター遊びをしない手はない。KマウントレンズをZマウントカメラに取り付けるアダプターは、電子制御まで変換してAFに対応するような高機能なやつはなくて、ただ機械的にマウント形状とフランジバックを調整するだけのものだ。おかげで「遊び」と言える程度のお値段で手に入る。
いくつか選択肢があったのだが、適当に見た目とお値段でK&F製の↑これにしてみた。
届いた実物はこんな感じ。金属製らしくずっしりした手触りで思ったよりちゃんと出来ている印象だ。ただ、キャップ類はついておらず、マウント面は両側ともむき出しだ。実運用するなら別途キャップを用意したい。
Kマウント側(レンズ側)はステンレス製っぽい感じの見慣れた銀色のリングがネジ止めされているが、Zマウント側(カメラ側)は適当に鏡胴とともに削り出しただけみたいな造りで色も黒くなっている。
レンズのマウントというのはカメラ側は位置決めと精度とかロック機構とか必要で手間がかかるのだが、レンズ側はそういう細かいことは気にする必要がなくて、形さえ整っていれば良いというものなのかもしれない。
さっそくZ 8に取り付けてみた。取り付け時の操作感はあまり滑りが良くない感じだが、カチッとはめてしまえば遊びが感じられるようなこともなく、とりあえず使用に問題はなさそうだ。
さて、このマウントアダプターにはこれ以上の機能は何もない。基本的にはK/KA/KAF/KAF2マウントのレンズに対応するもので、絞りリングがないKAF3/KAF4レンズは開放固定となる。AFはもちろん使えないしExifも記録できない。絞りは実絞り測光となるが、ミラーレスだからたいていの場合は問題ない。
さらにレンズを取り付けてみた。手持ちのPENTAXレンズの中で、わざわざマウントアダプターを介してZ 8に取り付けて使う気になるかもしれないレンズと言えば、FA Limitedの3本だろう。これらは絞りリングがついてるので問題ない。ピントリングのトルク感が薄いのが残念だがそこは仕方がない。
おぉ! なるほどなるほど。フィルム時代末期に設計されたFA Limitedは、PENTAX K-1/K-1 IIと組み合わせてもその外観は小さく見えたが、巨大なZマウントに大柄のボディのZ 8と組み合わせるとさらにレンズは小型に見える。マウントアダプター部にもそれほど違和感は感じず、かなり馴染んでいると思う。
特にブラック版の2本、FA43mmとFA77mmはサマになっていると思うが、こうなると一番大きなFA31mmがシルバー版なのがなんか惜しい。
さて、Nikon Z 8では電子接点のないレンズを使う際に基本的なレンズ情報を設定できる。このデータはExifに記録されるし、焦点距離は手ぶれ補正にも影響するはずだ。
しかし残念ながらFA Limitedの3本の中途半端な焦点距離や開放F値にぴったり合う設定がない。焦点距離については43mmだけ設定可能だ(昔のニッコールレンズに存在する焦点距離のため)。手ぶれ補正のことを考えたら31mmは28mmに、77mmは70mmに設定するしかないだろう。開放F値はF1.9という選択肢がないが、こっちは特に問題ないとおもわれる。
撮ってみた……(77mmのみ)
で、さっそく撮ってみた。
……と言うのはウソで、手に入れてからしばらく放置していて、やっとレンズを付けて撮りに行ったのは1ヶ月くらい経ってからだったりする。それも今のところFA77mmだけしか試していない。そしてさらにこの記事を書いているのはそれからさらに1ヶ月以上経っていたりする。
とりあえず、何枚か以下に貼っておく。絞りの設定は残っていないので分からない。だいたい開放から2段くらいの間で使ったと思う。
さてどうだろうか? 77mmはFA Limitedレンズの中でもわりと優等生でしっとり安定した写りをするという印象があったし、リニューアルされたHDコーティング版ということもあってか、古いレンズを使った感はない。
それdめお開放付近ではピント面もボヤッとしているし、HD版とは言えフリンジもけっこう出ているし、もちろん最新設計のZマウントネイティブなレンズ、特にSラインのレンズとはシャープはまったく比べものにならないのだが、最新の45Mピクセルの積層CMOSセンサとの相性もそんなに悪くなさそうで、歪みもないし周辺光量もこんなにあったっけ?という印象でちゃんと整った写りをする、と感じた。。
ただそれは裏返してしまうと味気ない、とも言える。FA77mmはハイライトの粘りを重視して設計されたというのは、ペンタキシアンなら誰でも知っていると思うが、Z 8はそのハイライトが粘らない。足して2で割って普通になった、という感じだろうか。
なおZ 8ではiメニューを含むカスタムメニューの設定セットを4つ作って保存しておけるので、MFレンズ使用時用のカスタムメニュー設定セットをつくっておいた。そのカスタムメニュー切替をiメニューに登録しておけば、iメニューから簡単にAFレンズ使用時とMFレンズ使用時の設定を行き来できて便利だ。
と、設定まで追い込んで準備万端整ったのだが、その後このマウントアダプターは使っていない。FA31mmやFA43mmも試してみなくてはと思っているのだが、なんだかFA77mmだけで満足してしまった。Z 8自体が最新のZマウントレンズでゴリゴリ使うことを前提に作られているせいで、そういう昔なじみの古いレンズでノスタルジーを感じるという雰囲気がまったくないせいではないかと思っている。
ということは、ヘリテージデザインなZ fだと雰囲気が出て俄然マウントアダプター運用をもっとやる気になるのかもしれないと思っているのだが、以前書いたようにシルバー版を待ちたいと思う。