東京都内には日本100名城に登録された城跡が二つある。一つは言わずと知れた江戸城なのだが、もう一つは八王子にある。八王子に城があるというイメージはあまりないが「八王子城」というそのまんまの名前の城跡がちゃんとあるのだ。
東京の東端にある我が家から西の端にある八王子は遠い。ただ遠いと言っても他府県にある城よりは近いからその気になればすぐ行ける。むしろ自宅から2番目か3番目に近い100名城ではないかと思う。ということで、年末押し迫る12月のある日、思い立って八王子まで出かけてきた。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(36mm), f8.0, 1/20sec, ISO280, -0.7EV
関東ではわりと珍しい本格的な山城で、入り口はいきなりこうなっている。この山は八王子城跡であると同時に、八王子神社の境内でもあるので、入り口には鳥居が立っていた。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(24mm), f8.0, 1/13sec, ISO110, 0EV
鳥居をくぐった先の道中はほぼ山道だ。遊歩道とも言えない。東京ではもう終わったと思っていた紅葉がこの山の中には少し残っていた。逆に言うと2週間くらい前はさぞかし綺麗な山道だったことだろう。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(24mm), f8.0, 1/30sec, ISO21000, 0EV
道中にはところどころ「柵門台」などと城跡であることを示す標識が立っているとともに、これが立派な山登りであることを示す「八合目」という石標も置かれていた。小石も積んである。小さな花束が供えられている理由は分からない。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(24mm), f8.0, 1/20sec, ISO100, -1.0EV
9合目あたりに八王子神社がある。明治になって廃城された後に城跡に神社が建てられるケースはときどきあるのだが、ここは違うらしい。というか、八王子城はそもそも戦国時代の城であり、北条氏滅亡とともに廃城となって400年以上が経過している。
そしてこの八王子神社はここに城が建つ前からある由緒正しい神社だそうだ。城だった時代もずっと神社は神社としてここに存在していたのだろうか? 戦の際はどうだったのだろう? いろいろ疑問が湧いてくる。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(24mm), f11, 1/15sec, ISO100, -1.7EV
いずれにせよ、この神社はどうやら無人のようで、かなりひっそりしている。いや、もっと正しく表現するなら「荒れ果てている」と言える。むしろその雰囲気がとても良い。
神楽殿もこんな感じだし、本殿もかなり小さい。街中のお稲荷さん… よりは大きいか? その本殿を覆うように屋根がかけられていたりするが、もしかして実は文化財級だったりするのだろうか?
神社周辺にはすでに散っていたが大きな銀杏の木があり、地面は黄色い落ち葉で一面覆われていた。そしてまだ木々には紅葉が見られた。やっぱり2週間前に来れば良かったか…。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(32.5mm), f8.0, 1/320sec, ISO100, 0EV
山頂の手前に見晴らしの良い展望台があった。ここからは文字通り東京都が一望できる。
手前は八王子、奥の方は都心まで見通せるのだ。比較的ワイド側で撮ったこの写真では分からないかと思うが、新宿や六本木あたりのビル街や東京スカイツリーも見えているし、さいたま新都心や武蔵小杉、横浜なども見えているのだ。素晴らしい眺めだ。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(38mm), f5.0, 1/20sec, ISO200, 0EV
ということで、ようやく山頂に到達した。この山は「城山」とも「深沢山」とも呼ばれている歴とした山で、標高は446mあるらしい。そして本当に山頂に本丸があったようだ。が、山頂なのでとても狭い。大した建物はなかったはずだ。
今はこうして石碑と隣に小さなお社が建っているだけで、特に遺構があるわけではない。それを言うならここまでの山登り道中、どこにも城の遺構らしきものはなかった。ちょっとした石垣の残骸があったりしたのだが特に説明もなく、それが城の遺構なのか、まったく関係ないものなのか不明だ。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(24mm), f18, 1/13sec, ISO900, -1.3EV
なので、結局慣れない山登りをして、寂れた神社を見て、東京を一望したものの、城跡を訪ねたという気がまったくないまま、膝の痛さに泣きながら山を下りてきた。
しかし実は、城跡としての八王子城の見所は城山とはまったく別のところにあったのだ。
山道の入り口は分かれ道があって、左に行くと「御主殿跡」、右に行くと「本丸」…と書いてあった。城を攻めるとなれば「本丸」に行きたくなるではないか。でも、他の山城でもときおりあるのだが、山頂付近の本丸は不便であまり使われず、麓に別の城本体があったりする。「御主殿」という名前でで気付くべきだったのだ。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(24mm), f10.0, 1/13sec, ISO320, 0EV
ということで、山を下ってから「御主殿跡」も見ておこう、という「ついで」の気持ちで進んだ先に、再現物を含む立派な遺構があった。
発掘と再現が平成に入ってから行われたものだそうだが、石垣や敷石にはところどころ本物がそのまま残っている。門の跡はいかにも城らしい枡形を形成しており、やっと城跡に来たという実感が湧いてきた。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(24mm), f10.0, 1/80sec, ISO100, 0EV
門を入った先には、城山の山頂とは比べものにならない広大な空き地が広がっている。そこには柱が立っていたであろう礎石が並んでいたり、庭石らしき巨石や、なにかの通路らしき石畳などが残っている。説明書きも多くてとてもいろいろ興味深い。
ということで、八王子城跡の見所は「御主殿跡」のほうだった。なんなら「本丸跡」はオプションで省略しても良いかもしれない… と思ったが、やはり本丸を落とさないと城攻めにはならないだろう。だから山を登ったことを後悔してはいない。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(24mm), f8.0, 1/20sec, ISO320, 0EV
駐車場横にはかなり立派な「八王子城跡ガイダンス施設」なるものがある。いろいろな資料や展示品とともに、ここに100名城スタンプが設置されている。
ということで、今年は3城目、全体では46城目のスタンプをゲットすることができた。奇しくも今年訪れた3城はすべて北条氏の城であり、典型的な関東の城跡だった。
今年の目標としていた計50城超えは達成できなかったが、コロナ渦のせいなのでそれは仕方がない。来年もまだ通常ペースへの復帰は厳しいだろう。しかし期限があるものではないしライフワークという感じなので別に問題はない。生きてる間に終われば良いくらいの気持ちでやっていこうと思う。
八王子城跡は八王子市街地からかなり外れたところにあった。地図上ではすぐそばを中央道が通っているが八王子ICからはわりと遠い。電車の場合はJRまたは京王の高尾駅が最寄りとなるようだ。