今更の話なのだが、K-3 Mark IIIのスマートフォン連携機能について少しまとめておきたい。K-1/K-1 Mark II世代はWi-Fiのみであることに加えいろいろと使いこなしの難しい部分が多かった(穏当な表現)。GR IIIからBluetoothをサポートしなんとなく改善の兆しが見られたのだが、もう一歩という感じだった(恐らく妥当な表現)。ではK-3 Mark IIIはどうなのだろうか?
K-3 Mark IIIは当然ながらBluetoothとWi-Fiという2本立ての通信機能を持っている。しかし(と、つないでいいのかどうか?)スマホ側のアプリはK-1/K-1 Mark II時代から変わらずImage Syncのままだ。いろいろ心配が残る。
なお以下の話はすべてiOS版を使った場合のものだ。iOS版のImage Syncはバージョンアップを重ね現状はV2.1.8になっている。Android版は状況がかなり異なるという噂も聞くが触ったことがないので分からない。
撮影画像転送
まずは基本機能の撮影画像転送の感想を簡単に書いておく。Image SyncのUIは基本的に変わらないが、K-3 Mark IIIにはBluetoothが付いたので接続手順がK-1/K-1 Mark IIとは変わり、かなり簡単になっている。
事前にペアリングが必要なのは当然として、カメラ側の設定はBluetoothをONにしておくだけで良い。その上でK-3 Mark IIIの電源を入れておけば、あとはImageSync側の操作だけで、自動的にカメラ側のWi-Fiを起動し接続できるようになる。
なおGR IIIには電源オフ中でもBluetoothだけ生かしておくことも可能だが、K-3 Mark IIIにはなぜかそのような設定はない。
Image Syncを起動して「カメラ内画像」を選ぶと、カメラの機種名を聞いてくる(左スクリーンショット)。K-3 Mark IIIを選ぶとペアリング済みのカメラへの接続ボタンが表示される(中央スクリーンショット)。それをタップするとWi-Fiを自動的に起動し接続する旨のダイアログが開くので(右スクリーンショット)OKをタップしてしばらく待てばカメラ内の画像一覧が表示される。
この当たり前の手順が当たり前に普通にできるようになった(褒め言葉)。
K-1/K-1 Mark IIはBluetoothがないので手順が煩雑なだけでなく、なにしろ一つ一つの動作が遅い。GR IIIはBluetoothがついて便利になったはずなのだが、Wi-Fiの接続が上手く行かずに何度かやり直さなくてはならないことが多い。しかしK-3 Mark IIIは手順がシンプルな上に極めてスムーズで安定しており接続で失敗したりやり直したことはない。
小さなサムネイルで画像一覧を見渡すこともできるし、1枚選んでタップすれば拡大表示される(あくまでもサムネイルなので細部は見えない)。そのままオリジナルの転送もできるし、XSサイズに縮小して転送することもできる。一覧画面で複数枚選択してからまとめて転送もできる… といった基本的な操作系はもちろん変わっていない。
接続直後の最初の1枚の転送が始まるまでに待たされることがあったりと、まだまだ改善して欲しいところはあるのだが、とにかくK-3 Mark IIIでは動作が安定し、そこそこのレスポンスで動作するので、画像をスマートフォンへ転送するという基本的な部分は、かなり実用的になってきたと思う。
位置情報のバックグランド記録
ここからが本題だ。K-3 Mark IIIには残念ながらGPSが内蔵されていない。撮影データに位置情報を付加するにはO-GPS1(またはO-GPS2)を取り付けるか、スマホと連携するかのどちらかが必要になる。
Image Syncは後者で必須となる。同じような機能は他社でもあってNikonのSnap Bridgeでもできるのだが、手順が煩雑だったり安定性や精度に欠けたりと、カメラ内蔵GPSの代用になってるというイメージはない。
他社でもそうなのにImage Syncで本当に実用的に機能するのだろうか?
これは有楽町周辺を歩き回った時(この記事を参照)のものだ。撮影画像に付加された位置情報をLightroom ClassicでGoogleマップ上にプロットときのスクリーンショットだ。
なんとこれが実際に自分が歩き回った場所と撮影ポイントに完全に一致している。短い時間のちょっとした移動も細かくちゃんと記録されている。全部で180枚撮影したうちの135枚に位置情報が記録されていた。これはGPS内蔵カメラと比べてもそんなに悪い数字ではない。
ついでにもう2例貼っておく。左は上田城周辺を歩き回った時、右は小諸城趾懐古園をウロウロした時のものだ。これまた実際の撮影位置とほぼ完全に一致しておりかなり精度が高い。こちらは400枚撮影したうちの360枚にちゃんと正しい位置情報が付いていた。
このように位置情報を記録するために特別な作業は必要ない。やったことと言えば、撮影を始める前にiPhone上でImageSyncを起動しておいただけだ。フォアグランドでアクティブ状態を維持する必要もなくて、Image Syncを起動したらiPhoneをスリープにしてカバンやポケットに突っ込んでおいて問題ない。あるいは別のアプリを使っていても良い。バックグラウンドでImage Syncはカメラと接続し、定期的に位置情報をせっせと送ってくれるのだ。
カメラ側の操作も特別なことをする必要はない。いつも通り撮影前に電源を入れ、撮影して終わったら電源を切れば良い。今まで通り、歩き回りながら立ち止まってはカメラの電源を入れて撮影し、また電源を切って次の場所に移動して… と、繰り返しただけだ。
もちろん事前の設定は必要となる。カメラ側ではスマートフォン連携機能の設定から位置情報記録をONしておく。もちろんこの機能を使うには前述したBluetoothの設定も必須だ。
Image Sync側でも位置情報記録をONして(左スクリーンショット)、バックグラウンドでの記録もONしておく。バックグラウンドでの位置情報取得を継続する時間の設定も可能だ(中央スクリーンショット)。
なお送信終了時にはスマホ上に通知が来る。そしてiOSの場合、バックグラウンドのアプリが位置情報を使用している場合は、左上の時計の背景が青くなるのでImage Syncが裏で働いているのがいつでも分かる(右スクリーンショット)。位置情報記録をしたくない場合は、Image Syncを完全終了してしまえば良い。
以上の設定さえしておけば、あとはImage Syncをバックグラウンドで起動しておくだけで、設定した時間の間は自動的に、定期的にカメラに位置情報がスマホから送られ、撮影時に直近の位置情報がExifに書き込まれるのだ。撮影者が意識することはほとんどない。
なおカメラ側もスマートフォン側も特に電池消費に大きな影響を与えることもないと思う(※個人の感想)
Image SyncからBluetooth経由で送られてきた有効な位置情報があるときは、K-3 Mark IIIのステータススクリーン上部にGPSマークが付く。なので確実に位置情報付けたいときは撮影前にこのマークを確認すればよい。グレーアウトしている場合は有効な位置情報が受信できていないが、しばらく(恐らく数十秒くらい)待てばたいていは受信される。
K-1/K-1 Mark IIのようにGPS内蔵の場合でも衛星を捕捉するまで少し時間がかかったりするわけで、待ち時間など含めほとんどその代役になり得る機能だと思う。
ということで、個人的には今のところ画像転送目的よりもK-3 Mark IIIのGPS代わりとしての役目が、Image Syncの一番の使用目的となっている。
位置情報なんてなくてもかまわない… という方もいるかと思うが、いまやスマートフォンで撮影した写真にはほぼ必ず位置情報が付いているし、写真管理において位置情報は重要なメタデータになると思う。特に出先や旅先ではとても便利な機能なので是非利用をお勧めしたい。