GRといえば「最強のスナップシューター」ということで、やはりGR IIIxを手にしたからにはスナップを撮ってみなくてはなるまい…… なんことは全くないし、むしろそう言うことするのは不健全な気もするのだが、そのへんの理屈は「趣味だから」で流してしまうことにして、GR=スナップという安直なステレオタイプに嵌まってみることにする。
となるとUrban Editionにあやかってやはりストリートスナップを撮ってみたい。しかしこの暑い季節に都心部の人混みに出かけていくのはダルいので、近所の古い住宅街を歩き回ってRICOH GR IIIxで写真を撮りながら散歩をしてきた。ここが”Urban”なのかどうかは議論が分かれるところだろう。というかそんな議論はだれもしないか。
さて40mmの画角で撮る街角というのはどんな感じなのだろうか?
RICOH GR3x, f5.6, 1/200, ISO100
運河の跡は親水公園になってしまったが水門はそのまま残されている。
RICOH GR3x, f13, 1/60, ISO100
とは言えすべての運河が埋め立てられたわけではなく多くは残っている。そこに架けられた橋の多くは関東大震災後から昭和初期のものが現役で残っている。この写真の橋もそうだ(ゆっくりだが架け替えも進められている)。
だから実はさっきの公園入り口のオブジェと化した古い水門と、これら現役の鉄橋とどっちが古いかというと意外に良い勝負なのではないかと思う。これらはすべて東京大空襲をくぐり抜けた戦災遺構でもある。
RICOH GR3x, f16, 1/50, ISO100
カラフルな軽バンが3台。しかもすべて三菱製。東京でも下町では働く軽自動車は多い。軽トラよりは軽バンのほうが主流だけど。
RICOH GR3x, f4.0, 1/800, ISO100
探せば「草むらのヒーロー」もいる。この日歩いた中では3台くらい見かけた。このミニバンもそうだが、いずれもナンバーがまだついている。でも明らかに相当期間動かされてはいない。車も土地も勿体ないが事情があるのだろう。
RICOH GR3x, f5.6, 1/250, ISO100
40mmという画角は壁や建物に正対して撮るのにぴったりというか、そういう切り取り方ばかりしてしまった。なんとかのひとつ覚えのように以下もそういうのが続く。
RICOH GR3x, f8.0, 1/40, ISO100
東京の下町と言えば町工場。大田区が有名だが江東区もわりと多い。
小学生の頃は同級生にそういう町工場の息子達や娘達がたくさんいた。新幹線の車軸を作ってるとか、発電所の歯車を作ってるとか。あとなぜか印刷屋も多かったと思う。今はだいぶ減ってしまったが彼らはどうしているだろうか?
RICOH GR3x, f8.0, 1/50, ISO100
空き家はそんなに多くない。というのは外からは分からないだけで、こういうあからさまに荒れた空き家が少ないのは、曲がりなりにも人口密集地だからだろうか。とは言えタワーマンションが建ち並び小学校まで新設される湾岸地区に対し、北部は高齢化と老朽化と空洞化の問題に晒されている。
RICOH GR3x, f16, 1/15, ISO100
どこの地域でもそうなのかも知れないが、政治関係のポスターは特定の家の特定の壁に固まって貼られていることがある。それもかなりごちゃ混ぜというか(左右に)幅が広い。
だからたぶん「ここには政治関係のポスター貼っても良いよ」と場所を提供しているだけで、特にその家や壁の持ち主の主義主張とは関係ないようだ。
RICOH GR3x, f2.8, 1/160, ISO100
地域の氏神様である神社の境内。サクラの青葉が美しい。むしろサクラは紅葉が今ひとつなのが惜しい。
GR IIIxのレンズは実焦点距離が26mmで開放F値も2.8なので、雑に開放使っても背景がボケすぎない。ここでK-1 Mark IIに50mmのF1.4とか持ってたら、たぶんF1.4か少なくともF1.8あたりに設定して、ボケ量ばかり豊富で背後に神社の社があることなんて分からなくなってただろう。それでも良いボケだと言って満足してしまうのだ。
無闇にボケないことは別にGR IIIxの良いところという訳ではないけれど、雑なことやってんなよ!とカメラに教えられてる気分がする。
RICOH GR3x, f8.0, 1/100, ISO100
この地域ではふとした隙間から東京スカイツリーが顔を見せるのが良い。東京スカイツリーが完成してもう10年以上になるというのに、いまだに姿を見ると撮ってしまう。
かつての東京タワーやその他の古い高層ビルがそうだったように、その建物自体は変わらなくても周辺の町の風景はどんどん変わってゆき、いつかこの町から東京スカイツリーなんか見えなくなってしまう日が来るのかも知れない。だから撮っておかなくてはという使命感を勝手に感じてしまう。
RICOH GR3x, f4.5, 1/1250, ISO100
夏真っ盛りのようでいて実は秋が近づいてきている。
GR IIIxは「手に馴染む」というより「目に馴染む」という表現の方が近いと感じている。距離感も画角もちょうど良い感じで狭すぎるとも広すぎるとも感じることがない。前回の購入記でも書いたが、今まで一眼レフでは苦手に感じていた40mmがこんなに自然に使えるなんて!と驚いている。
理由は分からない。そこがGRがここまで多くの人を引きつけてきたの魔力の一端なのだろうと想像しているが、願わくばこのちょうど良い感覚が、いずれはやってくるであろう「飽き」でかき消されないことを。