東京湾岸にある若洲海浜公園で星景写真の撮影に挑戦してみた

2021-08-12

 夏は天の川が綺麗に見える季節だ。Twitterなどを見ていても見事な星空、星景写真が流れてくるようになった。カメラの高性能化や後処理の進化などで、本当にウットリするような綺麗な写真が多い。自分でも撮ってみたい。

 しかし天の川を撮るには場所とタイミングがとても重要だ。光害の少ない場所で、良く晴れた新月前後の日… 星景というなら地上の風景もそれなりに整っていた方が良い。

 なのでとにかく東京都内は「光害」という一点において最悪の環境でしかない。それでも山のほうならまだしも、23区内で星空写真というのはほとんどあり得ないロケーションに違いない。

 が、それでも過去に何度か挑戦したことがある。TLに流れてくる綺麗な天の川写真をみていたら久しぶりにやってみたくなった。眩しいほどに輝く天の川写真は撮れないけれど、都内でもやりようによってそれなりに星景写真が撮れる。

若洲海浜公園から星景インターバル合成(北)PENTAX K-1 II SE, HD DFA15-30mmF2.8 ED SDM WR(15mm), f2.8, 4sec, ISO800(×1000 composite)
 はい、こんな感じだ。基本的に今回の撮影の成果はこれ1枚だけだ。しかしこの1枚を撮るのに約1時間半かけ、シャッターは1000回も切った。

 撮影はPENTAX K-1 Mark IIの「インターバル合成」機能を使った。ピントをライブビューのMFで合わせて露出をマニュアルで決め、ホワイトバランスを太陽光に設定したら、撮影間隔を「最短」に、合成方法を「比較明」に設定し、後はじっと1000回シャッターが切れるのを待つだけだ。途中経過は記録しなかったので、1000回シャッター切れた後にこの1枚だけがSDカード内に残る。なおRAWのまま合成してくれる。

 撮影間隔に対し1回あたりシャッター開放時間をできるだけ長めにしないと軌跡がガタガタになってしまう。この辺は勘と経験だと思うのだが、東京はやはり明るすぎるのであまり設定自由度がない。今回も軌跡の滑らかさという点ではイマイチだ。条件や設定によると思うがK-1 Mark IIで撮影間隔を最短にすると、だいたいコマ間は1.5秒くらいになる。

 なお、ポイントとしてはローパスセレクターをType 1に設定してある。そうしないと中心付近の星の軌跡が偽色でレインボーになってしまう。もしかしたらケチらないでType2にした方が良かったかも知れない。

 ちなみに場所は東京湾岸にある若洲海浜公園だ。なので東京23区内と言っても比較的長閑な風景である。この写真の左の方は東京ゲートブリッジがあり、その奥はまさしく都心で、東京タワーなどもちゃんと写っている。残念ながら東京スカイツリーは見えていない。

 もちろんインターバル合成による撮影も、空が暗いところでやったらこの数倍の星の軌跡が写ってもっと賑やかになるはずだ。あるいはもっと時間をかけてこの倍くらいの長さの軌跡で撮りたいところでもある。

 が、ここはやや治安が心配な程度に寂しい場所とは言え、やはりいろいろな邪魔が入りやすく、あまり長時間やるのは難しい(正面からパトロールの車両がライトを煌々と点けてやってきたりする)。カメラ内合成をせず、インターバル撮影だけしておけば何とかなるかも知れない。
 

若洲海浜公園で星景インターバル合成(北)PENTAX K-1 II SE, HD DFA15-30mmF2.8 ED SDM WR(15mm), f2.8, 2sec, ISO1600(×500 composite)
 なおこちらはちょっと違う設定で試しに撮ったカットだ(とは言え30分くらいかかっている)。シャッター速度が2秒なので軌跡の滑らかさがより悪いのと、ローパスセレクターを入れてないので、レインボー状の偽色が発生している部分がある。

 雲も流れていたのでダメだな… と思っていたのだが、このくらいの雲なら流れていた方がアクセントになって良かったかも知れない。どうせ星の量や美しさで勝負にならないのだから。なので、これはこれで500回で諦めないでもっと長い時間撮れば良かったとやや後悔している。

 ちなみに前のカットもこのカットにも、星や飛行機とも違う、真っ直ぐな軌跡が写っているが、恐らく人工衛星か何かだと思われる。
 

若洲海浜公園から星景インターバル合成(南)PENTAX K-1 II SE, HD DFA15-30mmF2.8 ED SDM WR(15mm), f2.8, 4sec, ISO1600(×1000 composite)
 これは同じ場所から反対方向を向いて撮影した。つまりほぼ南の方向だ。右の方に見える明るいエリアは羽田空港で、飛行機の軌跡がやたらに交錯している。

 画面上部を弓なりに横切っているのも羽田を離陸した飛行機によるものだ。星景写真では飛行機のライトは嫌われがちだが、東京であるなら星がやや寂しい分、賑やかしで写っていてくれた方が面白い。

 なお羽田空港のちょうど真上あたりに天の川が立ち上っているはずだが、灯りが少ない海上方向とは言え、東京湾岸の光害の影響は大きいし、そもそもインターバル合成なためか、その面影は写っていない。しかし街灯りが近い北側よりもやはり写る星の数が圧倒的に多い。

 折しもペルセウス座流星群の時期が近いので、わずかな期待として流星が写りこんだら良いのに… と思っていたがそうはいかなかった。撮影していないときに明るい流星を肉眼では見たのだが。撮ってないときに流れるというのは星景撮影ではあるあるなのではないだろうか。
 

東京湾の星空PENTAX K-3 Mark III, HD DA20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR(20mm), f2.8, 2sec, ISO6400
 インターバル合成ではなく普通に1枚撮ってみただけでも意外にたくさんの星が写る。星景写真として成り立たせるのは、やはりいろいろと難しいが、もう少し長いレンズでアストロトレーサーを使うと、なにかやりようがあるのでは?と思えてきた。
 

東京湾で撮った天の川PENTAX K-3 Mark III, HD DA20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR(20mm), f2.8, 8sec, ISO3200
 なお、これはアリバイ程度でしかないのだが、一応多めに露出をかけておいたカットから、ゴリゴリと後処理してみると、ちゃんと天の川らしき赤いモヤモヤっとしたものが写っていた。東京23区内で天の川が撮れるなんてすごい!(よね?)
 

ライトアップなしの東京ゲートブリッジPENTAX K-3 Mark III, HD DA20-40mmF2.8-4ED Limited DC WR(25.6mm), f3.5, 1/13sec, ISO12800
 夜の若洲海浜公園と言えば東京ゲートブリッジの夜景が見所なのだが、この日はライトアップされていなかった。オリンピック期間中は5色に光っていたりしたそうなのだが、祭りが終わったと思ったら急にコロナ対応モードなのだろうか? いくら何でも変わり身早すぎるだろうと思う。

 ライトアップのない東京ゲートブリッジは珍しい光景なのになんか写欲が湧かなくて、手持ちで超高感度で適当に撮ってしまった。だからこれもアリバイ写真に過ぎない。
 


 


 

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