一昨年から羽田新飛行ルートの運用が開始されたことで、羽田空港を離着陸する飛行機を今までない景色、アングルから撮ることが出来るようになった。特に目新しいのは南風運用時、B滑走路22から内陸方面に向けて離陸する場合と、A滑走路の16Rに向けて都心側から着陸するコースだ。
羽田イノベーションシティという新しい撮影スポットもできたし、空港ターミナルからの眺めも変わった。そしてもう一カ所、たぶん大幅に影響を受けたであろう撮影スポットが京浜島の沿岸部にある公園だ。
PENTAX K-3 Mark III の初撮影で成田と羽田をハシゴする -酔人日月抄外伝-
夕暮れの羽田空港を PENTAX K-3 Mark III で撮ってきた -酔人日月抄外伝-
新ルート運用がもたらした新しい羽田空港の景色
城南島と並んでここは昔から羽田空港ビュー&撮影スポットとして人気があったのだが、B滑走路に近く、A滑走路への進入経路直下でもあると言うことで、南風新飛行ルート時には、今まで羽田周辺では見たことがないような景色が見られるはずだ。
PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(150mm), f8.0, 1/1000sec, ISO100, -0.7EV
京浜島の南端にある緑道公園はA滑走路16R進入ラインの真下にある。K-3 Mark IIIにDFA150−450mmを当然のように付けて待ち構えていたら、150mmのワイド端でもB787がこんな状態になるくらい低くやってきて、これはレンズ選択をミスったかもしれない…と、少し驚きつつシャッターを切った。
PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(360mm), f5.6, 1/1000sec, ISO100, -0.7EV
そのまま頭上を通り過ぎて対岸の滑走路に向けて後ろ姿を見送る。この日は少し西からの横風があるようで、機種を右に向けたまま着陸した。滑走路端に並ぶ赤い設備はILSのローカライザーのアンテナと思われる。
滑走路までは運河を挟んでそこそこの距離があり、このシーンを撮るにはAPS-Cに400mmクラスはちょうど良い感じだ。
PENTAX K-3 III, HD DA20-40mm F2.8-4ED Limited DC WR(28.8mm), f5.6, 1/1600sec, ISO100, -0.7EV
とはいえ、まずは望遠ズームを付けてる場合ではないと思い直し、標準ズームに付け替えて次の着陸機を迎えた。おぉぉ!近い!羽田に就航している期待の中では最大級のB777-300ERだからと言うこともあるが、思ったより近い。
もちろん伊丹空港の千里川ほどではない。しかし城南島海浜公園よりは近いように思える。成田のさくらの山やひこうきの丘もそこそこ近いが、進入コースの真下ではないので、ちょっと迫力が異なる。
PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(410mm), f5.6, 1/500sec, ISO125, -0.7EV
さらに、B滑走路22を離陸していく飛行機もかなり間近に見ることができる。離陸機の背景に第3ターミナルとその周辺のホテルなどが見える様子はなかなか新鮮だ。
この日はわりと雲が出ていてイマイチだったのだが、冬場など夕陽がきれいに当たる時間帯などはとてもいいかもしれない。
PENTAX K-3 Mark III, HD DFA*70-200mmF2.8 ED DC AW(200mm), f5.6, 1/800sec, ISO100, -0.7EV
なお京浜島からはC滑走路16Lへの着陸機も(やや遠いものの)よく見える。
しかしこの16Lへの着陸は、お台場上空ターンルートが運用されていたときにはよく見られた景色だ。その後D滑走路の完成とともに16Lへの着陸は廃止されていたが、新ルート運用に伴って復活した。
K-3 Mark IIIで流し撮りの練習をする
さて日没を迎えたあたりで、次は「流し撮り」に挑戦してみよう。京浜島からB滑走路の眺めは背景に羽田空港のターミナルビルや管制塔など各種施設が見えるので、流し撮りにはもってこいだ。
もちろん自分自身の練習(リハビリ)だけでなく、PENTAX K-3 Mark IIIによる夜間流し撮りへの対応度合い(手ぶれ補正、AF、高感度、)をチェックすることも目的だ。
PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(200mm), f6.3, 1/40sec, ISO125, -0.7EV
午後6時を過ぎると新ルート運用は終了し、B滑走路は東京湾側からの着陸に使用されるようになる。空の青さは残っているが、太陽はほぼ沈みあたりはマジックアワーへの一歩手前で何とも言えない色味となってきた。
シャッター速度をとりあえず1/40secにしてみたらわりとあっさり上手くいった。なおAFはコンティニュアスモードでセレクトエリア拡大(小)に、手ぶれ補正は流し撮りモードに設定した。あとは機体の動きに合わせてカメラをきれいに振れるかどうか(=腕)の問題だ。
PENTAX K-3 Mark III, HD DFA*70-200mmF2.8 ED DC AW(200mm), f3.5, 1/30sec, ISO4000, -0.7EV
夏至が近いこの時期でもあっという間に闇は迫ってくる。京浜島側のエプロンには多くの機体がストアされていた。その合間を縫うようにANAのB787-8がライトを煌々と輝かせながら降りてきた。
PENTAX K-3 Mark III, HD DFA*70-200mmF2.8 ED DC AW(200mm), f3.5, 1/30sec, ISO4000, -0.7EV
JALのB767-300ER。翼端の衝突防止灯が光った瞬間。それにしてもこんなに高輝度なんだっけ?アンチコリジョンライトなど、灯火類が光った瞬間を捉えるのは夜間の飛行機撮影の楽しみのひとつだ。
今まではこういう瞬間を捉えるのはなかなか難しいと感じていたが、連写が速いK-3 Mark IIIならなんてことはない。つまり、狙って撮るのではなく数を打つだけだ。
PENTAX K-3 Mark III, HD DFA*70-200mmF2.8 ED DC AW(200mm), f3.2, 1/20sec, ISO6400, -0.7EV
このJALのB787-8(JA831J)は国際線用の機材でどこか海外から飛んできたらしい。客室の照明がまったくないので、恐らく貨物専用便として運航されたのではないかと思われる。
なお、K-3 Mark IIIで導入された手ぶれ補正の「流し撮りモード」は、期待通りに良く効いていると思う。ただし失敗カット含め、今回流し撮りしたカットのほとんどで、光跡の形状に同じパターンがあるように見えているのが気になる。恐らくSRになにかそういう特性があるのだろうと推測している(要追確認)。
また、AFの暗所性能に関しては今回の条件はちょっと厳しすぎたようだ。空港ターミナルからだともう少し灯りがあるのだが、京浜島側は意外に暗い。機体の灯火だけではちょっと心許なくて、本格的に夜に入ると、ピントを大きく外している場合も多々あった。PENTAX機的にはまぁ仕方ない(ギリギリ及第点)かとは思う。
PENTAX K-3 Mark III, HD DFA*70-200mmF2.8 ED DC AW(200mm), f3.2, 1/20sec, ISO8000, -0.7EV
さて、このANAのB787-9(JA895A)も国際線機材だ。しかし客室の後半部分だけ照明がついてるようだ。エコノミーだけお客さんが乗っている?
なお、TAVモードで絞りはf3.2、シャッター速度は1/20secに設定し感度だけで露出を調整している。その結果すっかり暗くなった後は概ねISO6400以上となった。それなりにノイズは乗っているのだが、今まで見たことがないくらいにディテールが崩れずにはっきり残っている。
RAW現像時はTopazのSharpen AIを使い、エッジを取り出しつつノイズリダクションも行っている。丁寧に現像したこともあるが、それにしてもこれだけシャープネスがあって、シャドウも潰れずに普通にJPEGに書き出せるのはすごい。やはり色々な評判通り、高感度性能に関してはK-3 Mark IIIはK-1 Mark IIを遙かに超えていると思う。
PENTAX K-3 Mark III, HD DFA*70-200mmF2.8 ED DC AW(200mm), f2.8, 1/40sec, ISO3200, -0.7EV
B滑走路脇にはJALのB777-200(JA8979)がこんな姿でストアされていた。経年PW4000エンジンが破損する問題で飛行停止になり、そのまま退役してしまった機体のひとつだ。現状では通常の退役機のようにアメリカにフェリーすることもできないのだろう。
それにしてもほんの1年半くらい前までは、国内線も国際線も幹線と言えばB777が主流だったが、コロナ渦の間に気がついたらB777が運行されている路線はほとんどなくなってしまった。ついこの間まで「また777かよ…ツマンネ」と舌打ちしながら乗っていたのがウソのようだ。
本当にいなくなってしまう前に、個人的ラストフライトをしておきたいが… それもままならない状況だ。