写るものすべてが黄金色になる新カスタムイメージ「Gold」を試す

2023-07-02

 6月末のある日、リコーイメージングからPENTAX K-1/K-1 Mark II/J limited 01用の新しいファームウェアがリリースされた。今回の新ファームウェアの目玉は新しいカスタムイメージ設定「Gold」が追加されたことだ。

 この「Gold」は昨年から順次季節ごとにリリースされた春紅や冬野などとは違い、使用レンズの限定はない。その代わり現時点ではK-1系のボディにしか対応していない。

 「Gold」がどのような思想の絵作りなのかは↑このPENTAX officialの記事に詳しい。ざっくりまとめてしまうと「シャドウはブルーで、ハイライトに行くに従って黄色みを帯びる」という絵作りになっているようだ。

 なお「Gold」は今後K-3 Mark IIIやKFにも対応予定はあるらしい。あと現時点でもDCU Ver 5.10を使うと、過去機種による過去撮影のRAWデータをGoldで現像できる(以下のリンク先参照)

 さて、K-1 Mark IIでカメラ内現像メニューからカスタムイメージの「Gold」を選択するとこのような画面になる。

Goldのカメラ内現像画面

 コントラストやキー、彩度、色相など一通りいじれるが調色の設定はない。なのでハイライトの黄色味がどう作られているかはこの設定画面からは見えない。シャープネスがかなり下げられていることだけは明確にわかる。

 ちなみにK-1系のカメラのUIデザイン上、今回の「Gold」が16個目の設定となり、これ以上の追加は難しいのではないかと思われる。↑上のカメラ内現像画面では「Auto」がないのと、対応レンズによってオプションで表れる四季に応じたスペシャルなカスタムイメージが抜けているので、あと2個分スペースに余裕があるように見えるが、実際には満杯なのだ。
 

従来のカスタムイーメージと比べてみる

 
 閑話休題。ではさっそく「Gold」で撮ってみよう。以下は同じカットをカメラ内現像またはDCU 5.10でそれぞれGoldと別のカスタムイメージで現像しJPEGに書き出したものを、サイドバイサイドで並べて比較できるようにしたものだ。

東京スカイツリーが見える下町(CI:風景)東京スカイツリーが見える下町(CI:Gold)

 左は「風景」で右が「Gold」。見ての通り初夏の晴れ間の爽やかな景色も「Gold」にかかると真っ黄色になる。セピア調というのとも違うし、退色したフィルム調というのでもないような気がするが、何とも言えない雰囲気だ。
 

木漏れ日(雅)木漏れ日(Gold)

 今度は新緑の木漏れ日。左は「雅」で仕上げたもので、右がやはり「Gold」を適用した。これはまだありかもしれないというか、むしろこうなると「雅」のほうが妙に青白く見えてくるから不思議だ。

 Goldを使う場合はホワイトバランスもオートではなく、意図を持って使ってしっかり設定した方が良いかもしれない。それ次第でかなり仕上がりは変わりそうだ。
 

自動車整備工場(Natural)自動車整備工場(Gold)

 とある街角の自動車整備工場。今度は左は「Natural」で右は「Gold」だ。ハイライトが黄色くなるのは相変わらずというか、ここまでの作例でもよく分かっていたが、これはシャドウ部に青が乗っていることがよく分かる。なるほどなるほど。

 どういう表現に使えるのかまだわからないが「Gold」を使う場合は適度にシャドーを落としつつ、かと言って沈めすぎず、シャドー補正などを強めにかけて暗部を少し持ち上げ気味にすると特徴がより出るのかもしれない。
 

紫陽花(鮮やか)紫陽花(Gold)

 これはKFで撮ったRAWをDCU 5.10で現像したのだが、青い紫陽花も「Gold」にかかってしまえば青みが消えて白っぽくなった。うぅむ、やはりどうしたらいいのか分からない。なお左側は「鮮やか」だ。紫陽花の部分は「鮮やか」のまま葉っぱや地面の落ち葉などを「Gold」風味にしたい(となるとやはりRAW現像したくなる)。

その他「Gold」で仕上げてみた写真

 以下、サイドバイサイドの比較はなしにして「Gold」で仕上げたその他のカットを適当に貼っておく。

茶色いブランコPENTAX K-1 II SE, smc FA50mmF1.4, f4.0, 1/500sec, ISO100
 茶色いブランコの板と鉄の錆び。
 

オレンジ色のタクシーPENTAX K-1 II SE, smc FA50mmF1.4, f2.0, 1/1250sec, ISO100
 Japanタクシー仕様ではない、旧来型のオレンジ色のタクシー。
 

古い家PENTAX K-1 II SE, smc FA50mmF1.4, f8.0, 1/80sec, ISO100
 古びたというか朽ちかかった木造の家。

 もともと黄色〜茶色系のものはその色が強調される感じとなる。なんとなく静止画向けと言うよりはシネマティックな動画でありそうな世界観ではないかと感じだ。
 

アガパンサスPENTAX K-1 II SE, smc FA50mmF1.4, f1.4, 1/4000sec, ISO100
 紫陽花から少し遅れて咲き始めたアガパンサス。薄い紫色の花なのだがもはや元の色はわからない。なんてことだ!
 

靴PENTAX K-1 II SE, smc FA50mmF1.4, f2.0, 1/1000sec, ISO100
 街角に落ちていた白い靴。洗って乾かしてある……ようには見えないのだが。緑色のものに囲まれているせいか、黄色いと言うよりはグリーンにかぶってるように見えてきた。
 

季節外れの鯉のぼりPENTAX K-1 II SE, smc FA50mmF1.4, f1.4, 1/8000sec, ISO100
 梅雨も真っ盛りだというのにいまだに鯉のぼりがあった。もうだいぶ汚れていて色も褪せている。晴れた日だったが6月の日差しを浴びた姿はどうも不似合いだ。

 太陽ががっつりフレームインしているのだが、流石に白飛びしかかっている白は白になる(何言ってんだという感じだが)し、空もかろうじて青味を残しているようだ。このぼんやりした感じで虹色フレアが出たら面白かったかもしれない。

 ということで、黄色味のない被写体を無理やり撮ってみると不思議な雰囲気になる。自分で考えてこう言う仕上げにすることはぜったいにないだろうと思うが、全然ダメと言うこはなくて、もしかしたら意図によってはアリなのかもしれないと感じる。シャドーの青味をもっと生かしたいと思うのだがけっこう難しい。

 

 個人的には撮った写真を自分好みに仕上げるために、LrなどでRAW現像をすることは必須だと思っている。しかしカメラ内の画像仕上げを利用して、いわゆる「撮って出し」を楽しむとしたら「鮮やか」とか「風景」みたいな常識的なものよりも、こういう極端な処理のほうがむしろ使い道がありそうな気がする。

 PENTAXで言えば「銀残し」とか「リバーサルフィルム」、Nikonだと「デニム」とか「ソンバー」みたいな”どぎつい”仕上げはたまに使いたくなる。「Gold」もそういう「極端」で「どぎつい」仕上げのひとつとして、個性があってそれはそれで良いと感じた。どこかで「これはGoldがはまりそう!」というシーンに出会うのではないかと期待している。

PENTAX K-1 Mark II + FA50mmF1.4

 今回は新カスタムイメージGoldを試すにあたって、レンズはFA50mmF1.4を組み合わせてみた。このレンズをベースとしていると思われる2本の50mmF1.4が最近発売になり、「そういえばsmc版を持ってたな……」と、このレンズの存在を思い出したところで、何となく「Gold」にはこのくらい緩いレンズが合うのではないか?と感じたので久しぶりに持ち出してみた。

 K-7やK-5あたりのAPS-C機で使っていたころの印象では、開放ではピントがどこにあるのかがよく分からないくらい滲んでボヤボヤで、ボケも縁取りや色付きがひどく、かと言って絞るとピントの芯はキリッと出てくるものの、ボケはやっぱりカクカクになって、デジタルではどうにもならないレンズだと思っていた。

 しかしK-1との組み合わせではなぜかその辺のじゃじゃ馬ぶりはだいぶ落ち着いたように感じていた。なぜだかは分からないのだが、フルサイズの画角めいっぱいで使ってこそギリギリバランスが取れるものであって「トリミングしてはいけないレンズ」なのだろうと勝手に解釈していたが、それは単なる思い込みである可能性が高い。

 今回使ってみた印象もあまり変わりはない。というより「Gold」みたいな極端な仕上がりになってしまったら、もはやレンズとしての細かい描写はどはどうでも良いのではないか?と思ってしまう。これで虹色フレアが出たら面白いかもしれないし、HDコーティングと円形絞りで少しでも現代的にアレンジされているなら、それはそれでアリなのだろう。

 でもわざわざ改めて買って使ってみたくなるほどのことはない。K-1/K-1 Mark IIに必要なのはノスタルジックな描写をするレンズではなく、DFA★レンズだと今でも思っている(※実際に期待はしていない)(※個人の希望)。
 

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