写真プリント用の高画質プリンターEPSON SC-PX1Vを買ってからいろいろプリントして遊んでいる。フレームを買ってきて家中に飾ってみたり、そこから溢れた写真はファイルにしてみたり。それは”ポートフォリオ”と言うにはおこがましくて、”アルバム”といった方が良いだろうか。
とりあえず飾る目的はなくても、撮ってきたカットの中から2〜3枚選んでとにかく2LかA4くらいのサイズでプリントするようにしている。
プリントの仕上がりはプリンターだけで決まるわけではない。プリント向けの現像術みたいなのもあるだろうし、どんな紙を使うかによって結果は大きく変わる。
しばらくこの世界は見ていなかったから驚いたのだが、今は本当にたくさんの種類の写真用紙が売られている。一体どうしたら良いのだろうか?
Lightroom Classic CCからEPSON Print Layoutを経由して印刷する
紙の話の前に、まず最初は現時点の印刷ワークフローについて簡単にまとめておく。と言っても至って簡単な話で、見出しに書いたとおり、AdobeのLightroom Classic CCからEPSON Print Layoutを呼び出して印刷するだけだ。
EPSON Print LayoutはAdobe CCアプリケーションのプラグインとして動作するので、Lightroom Classic CCの「書き出し」から直接データを受け渡せる。中間ファイルを保存する必要がないので便利だ。もちろん単体アプリとしても動作する。
UIは非常に分かりやすく、紙の種類とサイズと印刷品質を選択し、余白を設定し、最後はカラーマネージメントの方法を決めるだけだ。EPSON純正紙ならすでにプロファイルが用意されているので、紙の種類を選ぶだけで自動にしておけば適切なプロファイルが選ばれるが、サードパーティ製の紙の場合はそれぞれのICCプロファイルを選ぶことになる。
なおEPSON Print LayoutはiPad OS/iOS版も用意されており(Andoroid用はない)PCレスでiPadからもほぼ同様のI/Fで直接印刷することも出来る。
ということでここからが本題だ。以下にSC-PX1Vを手にしてからここまでに使ってみた紙についての感想を書き留めておく。
EPSON クリスピア
純正の最高級品であり、厚手で真っ白な超光沢紙。EPSON製の写真用プリンターのチューニングはこの紙を基準に行われていると考えて間違いはないだろう。
ただ顔料インクの特性もあってプリント表面はうっすらと「塗り感」が感じられ、主にシャドー部の質感(光沢感)が失われる感じがするのがちょっと気になる。だから全体的に無地の紙を見たときのようなキラキラ感を期待すると、あれ?と肩透かしを食らう。この手の超光沢紙はやはり染料インク向きなのかも知れない。
しかしさすがに純正紙のフラッグシップとあって、迷ったらとりあえずこれにプリントしてしまえば間違いないという感じだ。その上で何かが足りないと感じたら、別の紙を試すのが良いのだろう。
EPSON 写真用紙(光沢)
クリスピアより1グレード下の純正光沢紙で、コストパフォーマンスに優れる。クリスピアと比べると光沢も白さもそこそこ劣るように見える。それでも一般的な基準では十分に白く光沢も強い。
特に記録や記念写真をL判で印刷するとか、2L判くらいで試し刷りする場合などはこの紙が良いと思う。もちろん飾る目的で大きく印刷しても十分映えるオールラウンダーだ。
EPSON Velvet Fine Art Paper
EPSON純正の紙だが、これは一転してのールラウンダーな汎用写真用紙ではない。名前にあるとおり”ファインアート”用だ(ファインアートとはなんぞや?というのはさておき)。
厚みのある紙なのに、印刷直後はわりとしなしなとして乾燥に時間がかかる。顔料インクでも相当にインクを吸い込むのだろうか? プリントするとよりマットな感じが強調され、シャドウ部がキリッと締まり不思議な感じになる。鮮やかさを求めるのではなく渋みを出すにはすごく良い紙だと思う。白黒も良いのかも。
これは写真をモニターで見ていて、あるいはファインダーを覗いた時点ですでに、この紙にプリントした仕上がりをイメージできるようにならないと使いこなせないだろう。とりあえずなにかぴったりな一枚を探して過去データを漁っているところだ。
ピクトリコ プロ セミグロスペーパー
世間でかなり人気の紙でいろいろなところでオススメされることが多い。純正の「EPSON写真用紙」互換とされているが、商品名に「セミグロス」と書いてあるとおり、光沢はそんなに強くない。しかし、地紙の色はクリスピアよりも白いと感じる。
純正紙は間違いないオールラウンダーだと書いたが、そういう意味ではこの紙も同じだ。コストもクリスピアとそれほど違わない。しかしここぞという1枚を出すなら、クリスピアかこの紙か迷った上、僅差でこっちを選ぶと思う。
ピクトリコ 月光 シルバーラベルプラス
月光ブランドのバライタ調半光沢紙でかなり厚手の紙だ。基本的にはモノクロ写真のプリントにとても向いている紙とのことなのだが、もちろんカラーでも使える。
実際モノクロを印刷してみると、他のどの紙よりも深みと質感が感じられてハイライトからシャドーまでとても綺麗だ。カラーで使うなら派手な色彩な写真より、落ち着いた色調の写真だったら合うのではないかと思う。
銀残しとかと組み合わせるとどうなるだろうか? それよりも、この紙に自信を持ってプリントしたくなるようなモノクロ写真を撮ることが先決かもしれない。
CANSON バライタPHOTOGRAPHIQUE 310g/m2
CANSONとはフランスの紙メーカーで、プリント用紙だけでなく絵画用の紙なども扱ってるそうだ。芸術の国フランス製となれば是非使ってみたいではないか。ということで、店頭でサンプルを見ながらあまり尖ってなさそうなやつを買ってみた。
ところで「バライタ紙」とはなんだろうか?ググるといろいろ出てくるが、銀塩写真の時代から聞く言葉だ。インクジェットの時代になっても同じような素材の紙が使われていると言うことなのだろうか?
いずれにしろこれは使いこなしが難しい紙だと思う。だがその一方でどんな写真でも良い感じに仕上げてしまう懐の深さがある。もうちょっと経験値を積んでからまた試してみたい。
ピクトラン 局紙
ビックリするほど黄色い。そして今回取り上げた中では一番厚い紙だ。プロの写真家が「これが一番好き」と言うのをいくつか見たことがあるので使ってみた。EPSON写真用紙(絹目調)と互換があると言うことで、紙の表面は細かいテクスチャがあるが同時に艶もある。そしてほんのりフィルムの現像あるいはプリント用の薬剤っぽい香りがする。
ちょっと使い方がイマイチ分かりにくい難しい紙という印象がある。少なくともこれもまたオールラウンダーではなく、使い処を選ぶことは間違いない。
まとめ
さて、後付けになるがここまで貼ってきた「プリントの写真」は実際それぞれの紙にプリントしてみたものだが、単なるイメージに過ぎずそれで何かが分かると言うことはないだろう。「局紙はシャドウ部の粒々が目立つな」くらいは伝わっただろうか。
しかしながら、無地の紙をこうして並べて見るとこれだけ白さが違うのだ。これに加えて光沢の度合いも違う。
その辺を加味して、個人的な印象を4象限散布図的にしてみた。スケールと相対的な関係はあくまでも自分の印象なので、そうじゃないだろと言われるとそうかも知れない。あくまでも参考程度に見て欲しい。
さらに紙の特性はこれだけでは語れない。さらには表面のテクスチャや質感などもあるし、厚みとか密度なども影響しそうだ。つまりプリント用紙は無限の沼だ。その無限の選択肢の中から、本当に最適な一枚を見つけるのは難しい。
とりあえず、常用および気合いの一枚は純正のクリスピアかピクトリコのセミグロス、L版などは普通の光沢紙、オプションでマット系が良い場合はVelvet Fine Artと思っておくことにする。「是非この紙を使ってみたまえ!」というオススメがあれば、Twitterなどで教えて欲しい。
そうして今後も少しずつ経験値を増やしていって、静かに「プリント用紙の沼」にはまっていくのだ。
なお、SC-PX1Vは発売以来ずっと異常なまでの品薄が続いており一向に解消される感じがしない。A2ノビ対応のLのほうはまだ幾分マシなようだが、それでも入手難には変わりない。一体どうなっているのやら…。