煽りウソタイトルだ!と、あとで怒られないように先に結論を言っておくと、残念ながら新子は食べられなかった。コロナ禍もあってもう4年以上も新子を口にできていない。
季節的には静岡産の初物が終わって、九州産のものがたくさん出回るちょうど良い頃合いだったはずなのだが、梅雨末期の大雨の影響などで今年は九州での水揚げがとても少ないらしく、豊洲に出回る新子は恐ろしい高値がついていて、小さな個人経営の寿司店では手が出せない状況らしい。
儲け度外視、大将の心意気で原価で出すとしても一貫あたり3千円は大きく超えてしまうのだとか。見栄っ張りでやせ我慢大好きな江戸っ子客(=自分)なら、この際そのくらい出しても良いとは思わなくもないことはないかもしれないのだが、そんな客が一人や二人いるからといってどうにもならない。
ということで残念だが新子についてはまた来年を楽しみにしよう。
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最初の小鉢はジャンボなめこ、オクラ、ズッキーニと蕪が入っていて、夏らしくさっぱりしている。
大将曰く、若い頃は必ず小鉢にも魚介を入れていたが、今は野菜ばかりに使うようになってしまった、とのこと。うん、お客(の一部)も同時に成長して野菜の味をわかる歳頃になっているから大丈夫。
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別のお客さんが注文した海鮮丼が作られていく様を目の前で見せつけられ「なんと美味そうなトロ……」とよだれを垂らして見とれていたら、はいっと手巻きにして手渡された。なに?そのトロくれるの!? と素直に喜んでしまった。見た目の何倍も美味い。マグロも美味いけれど海苔もシャリも良い。
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お刺身もいつも通りおいしくて美しかった。涙をのんで他はカットしたのだがやはりお刺身の代表、マグロの赤身だけ写真を載せておく。うっすらリフレクション気味に撮れて写真としても気に入っている。
ワサビ醤油だけでなく塩で食べるお刺身は本当に良い。塩にもこだわっていて今回は長崎県産の海塩だそうだ。どおりで真っ白で粒が細かい(写真では前ボケになってしまったが)。そうは言ってもマグロの赤身はやはりワサビ醤油だろうか。いや、塩でも案外いける。
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生しらすの鮨。握れないので載せただけ。が、たっぷりすぎて傾いてしまったが味には影響ない。この生しらすは関東圏では定番の神奈川県産ではなく、たしか九州のほうから来たやつだったはず。神奈川のしらすとはイワシの種類がちょっと違うらしい。へぇ〜なるほどね、と言えるほど食べ慣れていないからわからないのだが。
生姜と茗荷は単品では苦手な方な野菜なのだが、この組み合わせは全然いける。というか生しらすはこうでなくてはならない。たっぷりの赤酢のシャリで食べるのも贅沢で良い。
他にも茨城産のおいしい枝豆とかズワイガニとか、ヤングコーンにメヒカリ、カボチャの浅漬けとか、太郎名物のチーズ茶碗蒸しなどをいただいた。やはり夏は野菜がおいしい。
それにしても枝豆が二房だけこうやって出されたことなんてあるだろうか? 本当においしい枝豆はこれで十分満足できてしまうくらい美味い。そしてこれだけでお酒が進んでしまう。
あと、なにげにカボチャの浅漬けなんて食べたことがなかった。カボチャのイメージと違ってシャキシャキで瑞々しい。間引きされた小粒のカボチャを使うので普通には出回らないし、家庭などでも出来ないものなのだとか。
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ということで日本酒もいただいた。この千歳鶴の「夏ひぐま」というお酒はラベルがかわいすぎる。名前もとても良い。ということで、どんなお酒であるかはそっちのけでジャケ買い状態で飲ませてもらった。わりとキリッとした酸味の強いのさっぱりしたお酒だ。お寿司には強すぎるかもしれないが北海道を感じながらおいしく飲み干した。
写真は割愛したが最初と最後はもちろん生ビールだ。何度も繰り返すが〆のビールは本当に旨い。日本酒による悪酔いを防ぐ効果もあると思う(個人の勝手な思い込み)。
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そしてメインの握り寿司。ヒラメに続いて出てきた真っ白なこれは良い具合にサシの入った牛肉…… に見えてしまうくらい美しいトロ。脂が甘くて旨すぎる! 本当に本当に旨かったし、過去一美しくて格好イイ寿司だった。
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そして新子は食べられなくてもおいしいコハダは食べられる。というより魚として、お寿司としては多分新子よりコハダの方が何倍もおいしい。そうだ、新子がなければコハダを食べれば良いじゃないか!
トリ貝、のどぐろ、ウニ、キス。他にもおいしいお寿司をたくさん食べた。小さなサムネイルにするのが申し訳ないくらい美しいお寿司ばかりだった。
炙ったのどぐろの美味さ、そしてボリュームたっぷりのウニ軍艦の美味さはいちいち説明する必要はないだろう。そして今回のキスは東京湾産で文字通りの江戸前寿司だ。仕込み中で本当は明日から出すつもりだったのだけど…… というヤツを無理やりお願いして握ってもらった。素晴らしすぎる。
ということで、新子は食べられなかったけれど、そんなことは些細なことでいつも通り安定の美味しい旬のお寿司が食べられる幸せをじっくりと噛みしめることができた。最近例年より早く訪れた夏バテで体調はひどいのだが、心身ともにこのお寿司はかなりの養分となったと思う。なんとかこの夏を乗り切りたい。
そしてまた秋冬のお寿司にも期待したい。そして来年の夏(の新子)にも。
今年の夏も新子が食べられる幸せを噛みしめる -酔人日月抄外伝(2019年7月20日)