Nikon Z8を使い始めてから14ヶ月が経過した

2024-08-11

 Nikon Z8を手に入れたのは2023年の5月末だったので、現時点ですでに14ヶ月以上が経過している。PENTAX K-1(およびK-1 Mark II)から7年ぶりのメイン機更新だったし、マウント乗り換えという意味では14年ぶりで、自分にとってはとても大きな出来事だった。ここで少し感想をまとめておこうと思う。

おまえはNikon Z8に値する写真を撮っているのか?

 いや、もちろんそんなものは撮れていない。

Nikon Z 8上面

 Z8を手にして間もない頃にアップしたとあるエントリーに「この程度の写真しか撮れないおまえにZ8なんか要らないだろ」という意味のコメントが付いたことがある(当該コメントは非公開にしてある)。

 恐らくZ8の情報が欲しくてネットを彷徨いこのブログたどりついたところで、こんな素人のつまらない写真と薄い感想にガッカリした人がいたのだろうと思う。先の捨て台詞を書き込んだ人の気持ちも良く分かるし、捨て台詞を残さないまま戻るボタンを押した人はその何百倍もいたに違いない。

 でもそんなことは言われなくても自分が一番よく分かっているのだ。Z8は機能や性能の面で自分に必要なカメラだとはいまだに思わない。AFや連写性能、動画機能などなどZ8の特徴と言われる数々の機能は大体が過剰で無駄だ。その結果大きく、重く、お高くなっているわけで、まったくもって自分にとっての適材ではない。
 

Nikon Z 8右肩

 でもそんなことは承知の上で14ヶ月間使ってきた。一眼レフからミラーレスに本格的に移行するにあたって、そしてKマウントからZマウントに乗り換えるにあたって、「ちょうど良いほどほどのカメラ」ではなく「力業で何ごともねじ伏せてくれる超高性能なカメラ」をここらで体験しておくことが自分には必要だ、と思ったのだ。

 Nikon Z8は極限の条件にも対応する素晴らしい高性能機でありながら、何でもない普段使いにも何気ない顔して対応してくれる懐の深さがあると思う。シングルポイントAFでシングルショットで動きのない静物をただ撮るだけみたいな使い方をしていても、高性能の無駄遣いをしている罪悪感をそれほど感じさせない。だから「この程度の写真」を撮っているだけでも不思議と満足感が高いのだ。イオンへの買い出しにも使えるフェラーリみたいな…… いや、たとえ話は止めておこう。
 

Nikon Z8 + NIKKOR Z MC105mm f/2.8 VR S とNIKKOR Z 35mm f/1.4

 そんなこんなで使い心地としてはとても気に入っている。その辺を散歩するだけの場合でもZ8を持ち出そうという気になる。撮影がメインではない旅行にもZ8を当然のように持って行く。願わくばもう少し小さく、軽くなってくれると良いのだが。

Nikon Z8の良いところと悪いところ

 さて、お気持ち表明だけだと何なので、一応Z8のイイと思うところを箇条書きにしておく。

  • レスポンスが良い。すべての操作や動作につまずきがない。
  • 明るくても暗くても見やすいEVF。一眼レフを忘れるくらい自然に見える。
  • リアルライブビューファインダー。動きものもスムーズに追える。
  • ボタンのカスタマイズ性が高く、自分好みの操作系にできる。
  • ファームウェアアップデートで進化する。

 一方でイマイチなところは以下の通りだ。

  • 大きい。重い。高い。リコール多い。
  • ホワイトバランスがイマイチ。なんで!となることがしばしばある。
  • 四つ葉ボタンの位置が微妙。縦位置時に手のひらで押してしまう。Z9のように段差が欲しい。
  • 電池の減りが早い。しかし電池残量さえちゃんと見ていれば普通に使える

 特に独自の視点はなくて、どれもこれも巷で言われていることだ。強いて言うならホワイトバランスへの言及はあまり多くない気がするがどうなのだろう? ニコンはAWBを使うひとなんていないのだろうか?

レンズもかなり増えた

 Nikon Z8を手にして以降、新たに追加したZマウントレンズは、MC105mm、663、そして先日手に入れたばかりの35mmf/1.4の3本だ。しかもすべて単焦点。この1年以上ズームレンズは買っていない。

Zマウント保有レンズ

 広角から標準域の単焦点レンズ3本はあまり深く考えずに衝動買いしたものがほとんどなので、ちょっとおかしな感じになっているが仕方ないところだろう。

 なおこうなってくると50mm単焦点が欲しくて仕方がない。f/1.2は大きすぎるのでやはりf/1.8だろうか? あるいはMC50mmという手もじつはあるかもしれない。さらにもしかしたらf/1.4がもうすぐ出てくるかもしれないし…… などと典型的な沼症状思考に陥っている。楽しいからまぁいいか。

 続いて、いくつかNikon Z8に関する現状報告として3つほど関連トピックをあげておこうと思う。

現状報告1:AF周りのボタンカスタマイズ

 まずはこの1年の間に発見した自分的な設定Tipsだ。良いところに書いたボタンカスタマイズに関係することなのだが、AFの動作を以下のように複数のボタンに割り当てて使っている。これはZ8を使い始めてあれこれやっているうちに微調整して自分仕様にカスタマイズされていった部分だ。

Nikon Z8 ボタンカスタマイズ

 カスタムメニューの「f操作」の「f2 カスタムボタンの機能(撮影)」で以下のようにファンクションボタンその他をカスタマイズしている。

  • シャッター半押しAF:ON(通常モード)
  • AFボタン:3DトラッキングON
  • マルチセレクター中央押し:全画面認識ON
  • Fn1ボタン:AFエリアモード循環選択
  • Fn2ボタン:マイメニューのトップ項目へのジャンプ(被写体検出設定)

 通常はシャッターボタン半押しAFを使用する。AFモードは基本的にコンティニュアスAF固定で、AFエリアはFn1ボタンを押すごとに循環選択されるようにしてある。その際、絶対に使わないAFエリアモードはスキップするよう「a8 AFエリアモードの制限」で設定してある。

 その上でAFボタンを押すと他の設定にかかわらず3DトラッキングAFになる。通常のAFで上手く行かないとか認識が上手く行かない被写体などにロックしたい、トラッキングしたい場合にはAFボタンを押せば良い。さらに突然人や猫や鳥が現れた場合など、全画面で認識AFを急に効かせたい場合にはマルチセレクタを押し込めば良い。
 

Nikon Z 8 + Z24-120mm f/4 S

 Fn2ボタンに登録した「マイメニューのトップ項目へのジャンプ」はZシリーズのカスタマイズでは有名な裏技だ。マイメニューとは全メニュー項目のなかからよく使うものを登録しておくことができるのだが、「マイメニューのトップ項目へのジャンプ」はそのトップに登録したメニューをダイレクトに呼び出すことができるカスタム機能だ。これによって、ボタンカスタマイズには用意されていない機能を事実上カスタムボタンに割り当てることができるようになる。

 この裏技を使って、Fn2ボタンに被写体検出機能の設定メニューを呼び出せるようにしている。願わくはAFフレーム設定のように、ボタンカスタマイズの中に被写体検出モードをトグルする機能があればベストだと思う。

 ということで、自分の用途ではAFに関してはこれでほとんどの場合をカバーできており、いちいちAF関係のメニューを開く必要は基本的になくなり、EVFを覗いたままでAFに関する各種の設定を選んだり、とっさの状況に対応したりすることが出来るようになっている。

 ニコンのAFはライバル達と比べてまだまだ不得意なシーンが多くいろいろ言われているが、なんとか使いこなすための操作性はよく出来ているのではないかと思う(その辺のことも含めて結局他社を知らないのだが)。

現状報告2:EVF/LCD切り替えセンサーが壊れているらしい

 なお購入から1年が経過した先々月に、ニコンプラザ東京に持ち込んで点検とセンサー清掃をしてもらった。これは昨年Z8を購入直後に何かでもらった点検パックの無料券を利用した。特にセンサーゴミに悩まされていたわけでもないし、動作に不審があったわけでもないのだが、無料券の期限が迫っていたし、やってもらって損はないという程度の軽い気持ちで出したのだ。

 すると……

Nikon Z8点検結果

 「今すぐの修理は不要です」という奥歯にものが挟まったかのような文言と、判定「B」という微妙な文字が見える。これは「ご要望により修理可能です」という意味である旨の注釈が付いている。

 いったいどこが「B」なのかと言えば、Nikon Z8の場合、背面液晶をチルトするとEVFのアイセンサーがOFFになるという機能がついている。液晶がチルトされている=ライブビュー撮影中でありEVFは使われるはずがない、という至極真っ当な考え方に基づくもので、ローアングル撮影中などにお腹や手などがEVFのアイセンサーにかかって、ライブビュー画像が消えてしまうことがないのでとても便利なものだ。

 ……はずなのだが、我がZ8はその機能が壊れているらしい。窓口の方が再現して見せてくれたところによると、横チルト時はちゃんと機能しているが、縦チルト時にうまくチルト検出がされず、アイセンサーが反応してEVFに切り替わって背面液晶は消えてしまう……。なんで!
 

Nikon Z 8 4軸チルト液晶

 これについては、Twitter上で同様の現象をいくつか見かけたりしている。実はF/Wの問題だったりしないだろうか?と淡い期待をしている。とはいえ多発していないのが何とも言えないところなのだが、特定ロットに特定部品が使われていてそれだけで起こるみたいなことがないとは限らない。ニコンが言うとおり、現状で即撮影に致命的影響はないので、しばらく様子を見ようと思っている。

現状報告3:動画も少しだけやっている

 あともう一つ書いておきたいのは動画だ。1年前のZ8発表時に、ニコンの企画だか開発担当の方が「静止画ユーザーの方も撮影の合間に10秒くらいのビデオを撮ってみて欲しい。設定とか細かいことは気にせず、カメラも固定したままでも静止画と動画は印象が全く変わる。そしてPCやTVで再生して見て欲しい」と言っていた。

 その言葉をわりとそのまま真に受けてよく実践している。撮った動画を特に何かに使っているわけではない。ときおり編集して数本の短い動画クリップをつないでみたりはするが、基本的にはたんなる記録、記念として保存しているだけだ。

 例えばこんな感じだ。

 Youtuberになるつもりもないし、映像作家を気取るつもりもない。これまた「この程度の動画撮るならZ8なんか要らないだろ」と言われそうだ。でもそういうことじゃない。楽しいかどうかがとても重要だ。

 動画の撮り方は良く分からないことだらけだが、何しろ構えたまま親指でスイッチをパチッと切り替えるだけなので、目的もないままときおり動画を撮っている。もちろんZ8の動画性能も宝の持ち腐れであることに変わりはないのだが、ミラーレスらしい使い方だと思っている。そのうち動画撮影にも目覚めるかもしれない、と思っているがどうなるだろうか?
 

 

 「カメラなんか何でも良い」とか「使いこなせない高性能を追求する最近のカメラの方向性はおかしい」みたいな言説を最近聞くようになってき気がするのだが、敢えてシンプルな言葉で断言するならば「その意見は間違っている」と思っている。

 制限速度100km/hの公道でもスポーツカーに乗る意味があるように、スナップとか風景とか花の写真ばかり撮っているアマチュアでも、Nikon Z8のようなオーバースペックを味わう意味はあるはずだ(またもや下手なたとえ話)


 

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