羽田空港新飛行ルートによって都心上空を旅客機が飛ぶ

2020-02-14

 2月になってから都心上空が「賑やか」になってきた。いや「騒がしい」と表現したくなる人もいるかも知れない。

 羽田空港の発着回数引き上げのために、かねてより計画されていた新飛行ルートが、いよいよ今年の夏ダイヤ(3/29〜)から正式に運用開始されるのだ。それに先だって練習というか試験というか、飛行確認が今月2日から12日まで行われていた。

 飛行機好きにとって新飛行ルートの導入はとても良いニュースだ。何しろ新たな撮影スポットが発掘され、今まで見たことないような羽田発着機の写真が撮れるようになるに違いない。

夕暮れの東京上空を飛ぶ飛行機Nikon D500, AF-S 200-500mm F5.6E ED VR (500mm), f11, 1/500sec, ISO100, -0.7EV
 ということで、南風運用新ルートの飛行確認が初めて行われた日。空路からは少し遠く離れたところにいたのだが、都心上空を低空で南に向かって飛んでいく飛行機を確認することが出来た。

 それから慌ててNikon D500と200-500mmを用意して、都心方面が良く見渡せる場所に繰り出してみた。かなり遠いけど目視では次々にやってくる飛行機がよく見える。
 

夕暮れの東京タワー上空を飛ぶ飛行機Nikon D500, AF-S 200-500mm F5.6E ED VR (280mm), f11, 1/500sec, ISO100, -0.7EV
日没の東京タワー上空を飛ぶ飛行機Nikon D500, AF-S 200-500mm F5.6E ED VR (220mm), f5.6, 1/400sec, ISO100, -0.7EV
 時刻は午後5時前。冬の日暮れは釣瓶落としの如く、太陽の位置は10分も経てば大きく動き、ファインダー内の景色はガラッと変わる。ド逆光で機体は小さなシルエットにしかならないが、飛行機&情景写真としては良い感じだ。チラッと先っちょが見えているのは東京タワーだ。

 さて、これらが16L(海側のC滑走路)への着陸機だとしたら、恐らくこの辺りでは高度は2,000ft(≒600m)を切るくらいの高度と思われる。東京タワーの2倍弱ほどの高さだ。この距離でパースがどう効いてるかよく分からないが、目視状況と大体一致する感じだ。
 

夕暮れの雲の縁を掠める飛行機Nikon D500, AF-S 200-500mm F5.6E ED VR (500mm), f8.0, 1/500sec, ISO100, -0.7EV
 地平線付近の低い雲に太陽が隠れ、縁だけが明るく輝いている。もはや東京上空であることを無視して500mm端でできる限りズームアップしてみる。

雲があるとそれでも良い感じだ。エンジンの排気に雲が揺らぎ、遠くには別の飛行機が作る薄い飛行機雲が見える。超望遠でなくては気がつかない景色だ。
  

新宿のビル街上空を飛ぶ飛行機RICOH GR3, f4.0, 1/500sec, ISO100, 0EV
 そしてこれはまた別の日。所用で都心に出ていたら、いきなりゴォ~というエンジン音が頭上から聞こえてきた。時刻は15時過ぎ。おぉ、今日も始まったのか! ということで、これは見ての通り新宿の高層ビル街だ。

 新宿上空だとまだ3,000ft(≒1,000m)くらいの高度があるはずだ。この写真に写っているのはシンガポール航空のA350-900だ。真下過ぎる上に翼のレジ番号もまだよく見えないくらい遠いが、マニアなら難なく機種とエアラインを見抜くことは出来るだろう。
 

品川港南口上空を飛ぶ飛行機iPhone 11 Pro Max, 6mm(望遠), f2.0, 1/620sec, ISO20
品川港南口のビル上空を飛ぶ飛行機iPhone 11 Pro Max, 6mm(望遠), f2.0, 1/1000sec, ISO20
 さらにこれはまた別の日。今度は品川にいるときにやはり上空で轟音がとどろき始めた。「轟音」とわざわざ書いたが、明らかに音量が新宿とは異なる。そして、見るからに頭上を飛んでいく飛行機も非常に近い。今まで見たことない光景なので、ちょっと驚いてしまうくらいだ。

 後述する国交省の資料によると、品川駅付近での高度は1,500ft(≒460m)らしい。このくらいになると数字を言われてもピンとこない。
 

 動画で撮るとこんな感じだ。映っている飛行機はB737-800なので羽田発着機の中では小さい方なのだが、ともかくこれを「うるさい」と思うか「大したことない」と思うかは人それぞれだろう。

 正直な感想を言うと…自分でも少し意外なことに「うるさい!」と思ってしまったことを告白しておく。もしここに自宅があったら溜まらんな、と。
 

 個人的には、羽田空港の機能をより高めること、そのために都心上空を通過する新ルートを使用することに賛成だ。

 都市上空の低いところを飛行機が飛ぶと言えば、大阪や福岡などの前例がある。アメリカのオレンジ・カウンティ空港なども都会のど真ん中にあって、伊丹の千里川土手並みの位置に普通にハイウェイ通っている。だから東京の上空1,000~3,000ft程度を飛行機が飛ぶくらい取り立てて珍しいことではない。飛行機自体も昔と比べてかなり静かになり、信頼性も高くなった。

 とは言え、羽田新飛行ルートが他の都市空港と決定的に違うのはその飛行頻度だ。何しろ2本の平行滑走路に向けて、山手線並の頻度でひっきりなしに大型機が飛んでくるのだ。これは飛行機マニアにとってはこれらは夢のような話ではある。その一方で騒音が気になる人、何となく不安を覚える人にとっては悪夢となる。

 基本的に前者のスタンスである自分でさえ、品川の状況を実際体験してみて少し驚いたというのが正直な感想だ。

 ただ、だからと言って進入角を3.5°に引き上げることは、本当に安全性に問題がないのか?少し疑問に思っている。しかし実際の運航上の影響については素人には分からないので、それについてはこれ以上触れない。

 世界中の都市空港では、これまでに騒音や落下物、事故のリスクに関する問題の解決に取り組んできた歴史がある。基本的には飛行ルートと人口密集地帯を遠ざけるという方向で。羽田空港も沖合展開をしたり横田空域の制限などもろもろの条件の中、意図するしないにかかわらず結果的に都心上空の飛行を避けてきた。しかし2020年にもなって、結局都心上空を飛ばざるを得なくなった。

 つまり今回の新ルート設定は羽田空港にとってキャパシティを増加によって一層の発展を遂げるための進歩であると同時に、前時代的な運用に逆戻りする退化という側面があるのだろうと思う。飛行機マニアであり新ルート歓迎の立場だとしても、そのことは認識しておきたいと思う。

 あと最後に付け加えておきたいのだが、この新ルート設定に伴って米軍から横田空域の一部を取り戻したことはとても良かったと思う。
 

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