前回は過去実績から使えるレンズを3本選んでみたが、あまりにもつまらない結果になってしまったので、やはりなんとかしてリベンジしてみたい。と言うことで今度は視点と評価軸を変えて「今後ちゃんと使っていきたい、使いこなし甲斐がありそうなレンズ」を3本選んでみようと思う。
別の言い方をすれば、その奥深さというか面白さを実感しているのだけど、どうもちゃんと使えてる気がしない大好きなレンズということになるかと思う。是非、大三元の3本に代わって「K-1でこれ使わないなんて勿体ない」とドヤ顔できるようになりたい。
が、今回の結果もまぁありがちで順当なところではないかと思うが、FA Limited x3本というほどありきたりではない。
smc PENTAX D FA MACRO 100mmF2.8 WR
まずはこのマクロレンズ。外出ができない今の時期、家の中で写真を撮ろう!という時にも役立ちそうなレンズだ。手に入れてからだいぶ経っているが、ちゃんと使えてる実感が全くない1本だ。
DFAシリーズでありながら、光学系の設計はかなり昔から大きく変わっていないのではないかと思われる。今時のフルサイズ用レンズにしてはかなりコンパクトだ。簡易防滴仕様で絞りリングもないが、AF駆動はボディーモーターによるカプラー駆動だ。いわゆる“ギュイ〜ン”系のレンズである。しかも前玉というか鏡胴が激しく伸びるし、フォーカスリミッターもない。
外で使っているときにピントを外してAFが暴走したときはなかなか恥ずかしい思いをする。ペンタキシアンとしての誇りと信仰心を試されるレンズだ。
PENTAX K-1改, D FA MACRO 100mmF2.8 WR, f4.0, 1/125sec, ISO1600, +0.3EV
PENTAX K-1改, D FA MACRO 100mmF2.8 WR, f5.6, 1/400sec, ISO100, +0.3EV
設計が古いとは言え素性は良い。マクロらしく歪みは全くないし周辺光量もたっぷり。カリカリのカミソリというレベルではないが、描写も全画面に渡って安定している。そしてボケも意外に綺麗だったりする。ただ、アウトフォーカス部にフリンジが出ることがあって、その辺に古くささが出ることがある。
で、常々もっとマクロ撮影を楽しんでみたいと思っている。これまでの経験だけでも、マクロ撮影時は「適度に絞る」ことが重要なのだと言うことを何となく体感している。明るい単焦点はとにかく開放!ではいけないのだ。マクロ撮影が上手くなると言うのは、写真の多くの要素をマスターすることにつながるような気がする。
あるいは普通に中望遠レンズとして使うのも良い。例えば旅行に行くとき、DFA24-70mmF2.8にちょっと足りない望遠系レンズとして組み合わせるのも良いかもしれない。今までそういう使い方をしたことがほとんどないからやってみなくてはと思っている。
ただ、本当のところ願わくば新設計のマクロが欲しい。レンズ内モーターでインナーフォーカスのものを。それこそ焦点距離は90mmで良いのだ。つまり、そういうことだ。
HD PENTAX D FA★50mmF1.4 SDM AW
次は最新のスターレンズだ。と言ってもすでに発売から1年半が過ぎているのだが。特に何に使うか?という目当てもなく、このレンズを難産ながらも生み出した心意気を買って手に入れてみた。
50mmF1.4と言えばフィルム時代から王道の標準の中の標準レンズだ。それにしてもデカい。そして見た目以上に重たい。前から見ても後ろから見ても巨大なガラスで筒抜けのガラスの塊感は「良いレンズを持ってる」感に溢れている。
HDコーティングに加えエアロ・ブライト・コーティングIIも採用されており、前玉を覗き込んでも鏡胴の奥深くは暗く沈んでいて、たくさんレンズが入ってること感じさせない。いかにも抜けが良さそうに見えるところがいい。もちろん、最新のコーティングのおかげで実際に抜けはとても良い。
絞り駆動も電磁化されAF駆動も新しいリング状のSDMを採用している、内部でわりと大きなフォーカシングユニットを動かしているが、AF速度もそこそこ速い、Kマウントなりに最新のテクノロジーを感じる超近代的なレンズだ。
PENTAX K-1改, HD DFA★50mmF1.4 SDM AW, f1.4, 1/125sec, ISO100, 0EV
PENTAX K-1改, HD DFA★50mmF1.4 SDM AW, f2.8, 1/1600sec, ISO100, +0.7EV
でも50mmは難しい。スマホのカメラと比べると少し画角が狭いし、一時期は50mmは狭すぎて「標準=万能」ではない、と思っていたけれども、最近はやっぱりこれ1本で行ける!と思えるようになってきた。歳とをってきたおかげのだろうか?
本気の最新設計のおかげで、開放から隅々まで解像カッチリするし、変な滲みやフリンジもなく、しかもボケ味も玉ボケもとても綺麗だ。でも、どうもちゃんと使えている気がしないのだ。おまえの実力はこんなもんではないだろ!と。自分の腕を棚に上げ、レンズに対する期待が高すぎるのかも知れない。
いずれにしろ、このレンズはまさにK-1のために、K-1に合わせて作られたことは間違いない。やはりこのレンズで傑作が撮れ、物足りなく感じるようになってこそ、K-1を卒業出来るのだろうと思っている。
smc PENTAX FA31mmF1.8AL Limited
最後の一本はやはりこれだ。ある意味Kマウント界隈では大三元並みに王道と言えるかも知れない。ただの古いレンズ… と言うなかれ。2002年の夏に発売されたとき、フィルム一眼レフの時代はもうほぼ終わりかけていた。そして間もなくAPS-Cデジタルの時代に突入する。
フィルムで十分に力を発揮することもなく、不本意ながらもAPS-Cデジタルで使われていた時代がほとんどだったのだ。そんな不遇もK-1の登場によってようやく解消されることになった。だからK-1で使わなくてはならない一本なのだ。
ここにも書いた通り、このレンズは10年前から使っていてしかも2回買い換えている。今持っているのは3代目だ。そのくらい好きで使っているのだが、これがなかなか難しい。使うのは難しいのだが格好イイ。FA Limitedは全てそうだがアルミ削り出しの鏡胴は特に良い。絞り値も深度目盛りも距離表示もプリントではなく彫り込んで墨入れしてあるし、滑り止めの七宝焼きもポイントだ。浅い花形フードが固定なのは使い勝手が激しく悪いのだが、格好イイから仕方ない。
あともう一つ良いことがあって、このレンズを付けているとカメラのシャッター音が上質になる。K-1ではそれほどでもないが、APS-Cボディと組み合わせだとかなり変わると思う。
PENTAX K-1改, FA31mmF1.8AL Limited, f8.0, 1/1000sec, ISO200, -0.7EV
PENTAX K-1改, FA31mmF1.8AL Limited, f8.0, 1/60sec, ISO200, -3EV
オールドレンズではないとは言え、描写性能はやはりデジタル時代のレンズほど洗練されていない。撮影条件によってコロコロ変わるじゃじゃ馬ぶりがすごい。ハイライトは滲むしフリンジは激しく出る。逆光気味になるとゴーストもフレアもビックリするくらい出たりすることもある。
なのにちゃんと撮れたときの解像感にはビックリする。コントラストもあってシャープネスが高すぎず質感重視でしっとりした描写はとても艶めかしい。そんな嵌まったときの感覚が忘れられず、また使いたくなる。そして返り討ちに遭うのだ。
だがそんなじゃじゃ馬ぶりも、K-1で使うようになってからかなり大人しくなったように感じる。フリンジは相変わらず出るが穏やかになったし、フレアはほとんど気にならなくなった。と言うより、逆光時の良い感じのコントラスト低下がむしろ見た目の自然さを写し出す。そしてボケがとても綺麗だ。
さらにK-1と組み合わせるとAFの信頼度が高くなった気がする。OVFで開放付近を使っていてもピントがちゃんと一発で来る。だからやはりこのレンズはやはりK-1のために生まれたのではないかと思っている。登場がちょっと… いや、かなり早すぎただけなのだ。
PENTAX K-1, FA31mmF1.8AL Limited, f2.0, 1/8000sec, ISO200, 0EV
「Kマウントのレンズを3本選べ」と言われるととても悩むのだが、むしろ「1本だけ選べ」となると、あまり迷わずにこのFA31mmF1.8ALを選ぶことになると思う。
そのくらい本気で気に入っているのだ。あとは、それなりの写真がこのレンズで安定して撮れるようになったら言うことはない。その時はKマウントを卒業しても良いときかも知れない。
大三元なんて要らない
舌の根も乾かぬうちに… と言われたらその通りだが、実際「大三元なんか要らないだろ」というのもまた本当だ。特にKマウントなら小型の単焦点を揃えるのはアリだと思う。
ということで、今回は標準、広角、望遠と良い感じの単焦点3本を選んでみたが、数字で見るほど実際のバランスはよろしくない。特にDFA★50mmF1.4だけが色んな意味で飛び抜けすぎている。
ただこのくらい歪な方が趣味性が高くて使っていて楽しいかも知れない。いや、楽しいに決まっている。