最盛期を迎えた六義園の紅葉をNikon Z 5で撮る

2020-12-14

 桜と紅葉の時期に1回ずつ通うのが年中行事となっている六義園に行ってきた。今年は紅葉に対する写欲を失い気味でスキップしようかと思っていたのだが、Nikon Z 5の慣熟撮影にはぴったりだと思い直して出かけてきた。

 なお、訪れたのは約一週間前の12月第一週目のことだ。六義園は管理された庭園なだけあって、都内でも有数の紅葉の名所となっている。時期的にはちょうど最盛期のほんの一歩手前という感じだった。

六義園の逆光の紅葉Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(24mm), f22, 1/30sec, ISO100, -0.3EV
 この日は幸いにお天気が最高に良かった。さすがにこうなるとわりと強いゴーストが出ているのだが、紅葉に紛れて気にならない。フレアっぽさはまったくなくてコントラストは十分に保たれている。

六義園の真っ赤な紅葉Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(160mm), f6.3, 1/320sec, ISO100, -1.0EV
 真っ赤な紅葉に良い感じに日が差し込んでいてとても綺麗だ。この手の赤はPENTAX機で撮るときにちょっと気にすべきところだが、Z 5は何も考えずにシャッターを切れる。が、ちょっと物足りなさを感じてしまうかも知れない。もっと濃い色を!という場合は、あとから現像で調整すれば良いのだ。
 

六義園の紅葉Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(145mm), f6.3, 1/125sec, ISO100, -1.0EV
 前回も書いたが、このレンズでも望遠側の開放ならそこそこボケる。ちょっと固くてうるさいかも知れないけど、これはこれで良い。が、同時にここで70-200mmF2.8とかあったらどんなに良いだろうか?とも思ってしまった。やはり重くてでかくて高いレンズにはそれなりに理由があるのだ。

 それよりもこのシーンで困ったのはAFポイントの大きさだ。Z 5のAFポイントはひとつひとつがわりと大きい(Z 6/Z 6IIも同様。Z 7/Z 7IIは違うらしい)。だからこういうシーンだとちょっと気を抜くとすぐにピントを背景に持って行かれてしまい、あたふたすることになる。この辺の事情は一眼レフとは変わらないのだなと、考えてみれば当たり前のことを体験した。
 

六義園の山陰橋の紅葉Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(80mm), f10, 1/50sec, ISO360, -0.7EV

 園内の紅葉ハイライトはつつじ茶屋と山陰橋の近辺だ。茶屋から橋を撮っても良いし、逆に橋から茶屋を撮るのも良い。敢えて茶屋も橋も外してもいい。どこにカメラを向けたらいいのか分からなくなるくらい、見事な紅葉に囲まれていた。が、まだちょっと色が薄かったかも知れない。ここは最盛期にはもっと色づくはずだ。
 

六義園の紅葉Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(24mm), f8.0, 1/100sec, ISO360, -0.7EV
 つつじ茶屋から吹上茶屋に抜ける小さな峠道。逆光で日が差し込む暗い森の雰囲気がある。ここが東京の真ん中だなんて。どうもその良い雰囲気を上手く写せたた気がしな。現場はもっともっと良い感じだった。

 この場所で同じ方向に向けてスマホでずっとシャッターを切り続ける小学校高学年くらいの女の子がいた。彼女もなんとかこの場所の美しさを記録したかったのだろう。スマホで納得いく絵は撮れただろうか? そこはもしかしたら深い深い沼の入り口かも知れない。気をつけて進んでいって欲しい。
 

六義園の逆光に透ける紅葉Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(110mm), f6.3, 1/400sec, ISO360, -1.0EV
 紅葉では逆光に透ける葉っぱを撮りがちだ。とっても綺麗だから仕方がない。そう言えばNikon機にはハイライト重点測光なるものがあったはずだが、こういう場合にはそれが生きてきたのかも知れない。けど、だいたい露出補正で済んでしまうから、わざわざ測光モードを変えるほどではない。

 Z 5のEVFはこういう高コントラストなシーンでも、ギトギトにならずにわりと忠実に再現される。だからマイナス補正の度合いもそこそこ良い感じ合わせ込みやすい。が、撮影後にポストビューで結果を確認するという作業はやめられないのだが。
 

水辺に落ちた紅葉Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(140mm), f10, 1/80sec, ISO140, -2.0EV
 (Lightroom Classic上で)クリエイティブ・ピクチャーコントロールを使ってみた。これは「ソンバー」を適用している。何となくこんな風になれば良いな…とシャッターを切ったものの、ただの汚い落ち葉になってしまったカットが急に蘇った気がする。28種類もある(クリエイティブ)ピクチャーコントロールは振れ幅が広いので、失敗カットの救済率も高くなりそうだ。
 

六義園の逆光の紅葉と女性Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(125mm), f10, 1/60sec, ISO180, -1.0EV
 これも「ソンバー」で現像した。ローキー目で彩度が上がるのでコントラスト感がより強調されてクッキリとする感じだ。けっこう気に入ったのだが、多用するとすぐに飽きが来そうだから、使うのはほどほどにしたい。
 

六義園の逆光の紅葉Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(24mm), f22, 1/30sec, ISO100, -1.0EV
 クロスプロセス風味のこれは「モーニング」というプロファイルを当てている。こう見えても実はかなり「赤い」シーンなのだが、敢えて逆に振って寒色というかグリーン系に思い切り転ぶのが面白い。

 こういう極端な画処理機能は昔からあるにはあったが、どっちかというと飛び道具的な おまけ機能で一度使ったら飽きてしまう部類のものだった。しかしZシリーズでは「標準」とか「風景」とか「ニュートラル」などの、基本的な絵作りモードと同列に並べてしまっているところが良い。しかも一つ一つの設定内容は、極端なようでいて実はけっこう絶妙なところを狙っている。最近のスマホアプリの画処理機能なんかをかなり研究したのではないだろうか。

 フルサイズセンサーと超高性能レンズによる画質追求をする一方で、こういう「どう写真を仕上げるか?」という部分まで一貫して気を配っているいるところに、ニコンの写真に対する良心と本気を感じる。
 

六義園の石灯籠と紅葉Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm F4-6.3 VR(140mm), f8.0, 1/100sec, ISO100, -0.7EV
 ということで、Nikon Z 5とNIKKOR Z 24-200mmのファーストインプレッションはこんな感じだ。気楽に軽快に使えて仕上がりも満足のいくものだし、撮っていて楽しい。操作性も良くていろいろ弄り甲斐もある。そして撮影後の現像作業も楽しめる。

 フルサイズの良さとミラーレスの良さがうまく融合したカメラ(とレンズ)だと思う。もっともっと売れれば良いのに。
 

 と、べた褒めしたところで、最後にちょっと告白しておかなくてはなるまい。六義園で一通り撮影した後に以下のようなことをTwitterでつぶやいた。

 本文でも少し書いたことなのだが、Nikon Z 5のEVFはすごく良く出来ている。今やもっと高精細なパネルを使ったEVFもあるが、トータルのバランスとチューニングの上手さという点ではNikonのEVFは依然としてトップクラスだと思う。けれども、長年OVFで育ってきた身にはやはり違和感を感じることが多々あるのだ。

 明るいものは暗く、暗いものは明るく見える。明暗差が大きいとハイライトもシャドウも微妙なトーンが見えなくなり、細かいパターンの集合体(木など)ではやっぱり「ドット」の存在を意識してしまう。その結果、被写体の質感とか奥行きとかの感覚が薄れ、何を見ているのかよく分からなくなり、どんな写真に仕上げようか?という想像力は湧いてこない。

 これらは露出やホワイトバランスがあらかじめ適用された状態で見えるというEVFの長所と、裏表の関係にあるのかも知れない。だとしてもこれは「ビューワー」であって「ファインダー」ではないと思ってしまう。肉眼で見てこれは良い!と思ってカメラを構えてEVFを覗いたときのわずかなガッカリ感の積み重ねが堪えてくるのだ。

 つまりは写真の撮り方を根本的に変えないといけないのだろう。使用者である自分の使い方、考え方が間違っているのだと言われるとぐうの音も出ない。いずれにせよ、EVFはOVFの代わりになるものでも、進化形でも何でもない。まったく別物なのだということを改めて実感させられている。それを受け入れて慣れないといけないのだろう。

 だから別に「EVFキライ…」と思わず本音を口走ったところで、癇癪を起こして窓から投げ捨ててしうと言うことはない。そんなことは承知の上で、これからもじっくりと付き合っていくつもりだ。


 

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