ルスツ滞在中のとある日の朝、外は風がない中大粒の雪が降り続いていて、スキー場のコンディションも良さそうということで、滑る気満々でいたのだが、朝ご飯を食べて急に気が変わってしまった。
スキーは明日も出来る! 今日はこの雪をより楽しむために秘境へ行ってみようと。
雪に埋もれた秘湯 ニセコ五色温泉
RICOH GR3, GW-4, f4.0, 1/640sec, ISO100, +0.7EV
最初に向かったのはニセコ五色温泉だ。ニセコのスキー場があるアンヌプリ山の裏、イワオヌプリとの谷間にある。この一帯はスキー場には目もくれず、本気のバックカントリーを楽しむ人にはおなじみのエリアだ。
そしてこの谷間は本当に雪深い。羊蹄山側とはガラッと気候が変わって、雪の降り方も少し違うような気がする。五色温泉に至る道道58号線は五色温泉から先が冬季通行止めとなっていて、倶知安側には通り抜け出来ない。
RICOH GR3, GW-4, f4.0, 1/1000sec, ISO100, +0.7EV
レンタカーはホンダFITハイブリッドの4WD仕様だったが、なんとかやっとの事でたどり着けた感じだ。五色温泉旅館の駐車場周囲は写真に撮っても何が何だか分からないくらい一面真っ白な世界だ。
この写真の左の方にバックカントリーを終えて戻ってきたスキーヤーが写っている。この雪の量と質を見れば、どんなに素晴らしいディープパウダーだったか想像が付く。さぞかし楽しかったことだろう。
RICOH GR3, GW-4, f5.0, 1/100sec, ISO200, +0.7EV
さて、お風呂は本当に素晴らしかった。五色温泉旅館には男女それぞれ2カ所ずつの浴場があって、もちろん両方とも入ってきた。小さい「からまつの湯」の方は貸し切り状態だったので、写真も撮ってしまった。これはとりあえず内湯。
RICOH GR3, GW-4, f4.0, 1/800sec, ISO100, 0EV
そしてこっちが露天。見ての通り最高だ。湯船のすぐそこまで雪の壁が迫っている。本当は眺望が良い露天風呂らしいのだが、雪に囲まれて入る温泉も格別だ。もう一つの大浴場のほうはこれの3倍くらい広かった。
旅館の宿泊者がいたのかどうか分からない。大浴場の方はちらほら人がいたが、ほとんどはバックカントリー帰りのスキーヤー&ボーダーだけだった。ふらっと温泉だけを目当てに訪れていたのは我々だけのようだ。
ニセコやルスツが海外からの旅行者で溢れかえってる中、山の裏側に回るだけでこんな素晴らしい鄙びた秘湯があるなんて本当に素晴らしい。
ニセコと言えば定番の昆布温泉
RICOH GR3, f4.0, 1/100sec, ISO200, +0.3EV
ニセコ周辺は温泉だらけだ。アンヌプリや羊蹄山はじめ、周辺の山は全て火山なのだからさもありなん、と言ったところだろうか。
五色温泉よりは少しメジャーな昆布温泉にも立ち寄ってみた。こっちはアンヌプリの表側なので、アクセスも簡単だしヒラフのリゾートエリアからバスも走っている。
いくつか日帰りの施設はあるが、大手どころの「ホテル甘露の森」に入ってきた。さすが大きなホテルの大浴場とあってかなり立派なお風呂だったが、五色温泉の秘湯感を体験した後だとちょっと物足りない。でもお湯はとても良かった。
迂闊に降りてはいけない秘境駅 比羅夫駅
RICOH GR3, f2.8, 1/800sec, ISO100, +0.7EV
温泉でたっぷり温まった後にやってきたのは、JR函館本線の比羅夫駅だ。ニセコ駅と倶知安駅の間にある無人の秘境駅として知る人ぞ知る。実はこの駅舎は宿泊可能なのだが、この日は誰もおらず本当に無人だった。
以前、北斜面やバックボウルに連れて行ってくれたバックカントリーのガイドさんが、雑談でこの駅がとても好きだと話していた。本当にひっそりしていて冬の雪景色は最高だ、と。それを覚えていて一度訪れてみたかったのだ。
RICOH GR3, f5.0, 1/40sec, ISO200, +0.7EV
無人化されてからすでに40年近く経っており、最近の平均乗降客数は1日あたり3人未満だそうだ。駅前には本当に何もない。公共交通機関もない。コンビニも自販機もない。
列車の中でも「迂闊にここで降りないように」という注意のアナウンスが流れるそうだ。それでも降りてしまったなら電話でタクシーを呼ぶしかない。
RICOH GR3, GW-4, f4.5, 1/800sec, ISO100, +0.3EV
比羅夫駅に停車する列車は日に数本しかやってこないが、そのうちの1本、倶知安行きの列車がやってきた。もちろんちゃんと事前に時間を調べておいたのだ。
てっきり1両でやってくると思ったら2両編成だった。そして車内の様子を見たところ、それなりに人が乗っていた。そして驚いたことに、バックパッカーらしき外国人が一人降りてきた。いったいどこへ行くというのだろう? バスもタクシーもないことを知っているのだろうか?
RICOH GR3, f4.5, 1/1000sec, ISO100, 0EV
そうこうしているうちに列車はあっという間に行ってしまった。カメラはGR3とiPhoneしか持っていなかったのだが、そこそこの望遠レンズがあればいい写真が撮れただろう。わざわざ持ってくれば良かったと少し後悔した。
良い場面に出会えるかどうか分からないからと言って、旅に持っていく機材をケチって後悔するのはこれで何度目だろう?今度こそもしものために重い機材を持っていこうと思う。
RICOH GR3, f5.0, 1/250sec, ISO100, +0.7EV
さて、列車が行ってしまったので比羅夫駅をあとにする。車に乗って本当に何もない雪深い1本道を国道に向けて戻っていくと、さきほど列車を降りたバックパッカーがスマホとにらめっこしながら歩いているのに追い付いた。
気になって車上から声をかけてみたら、なんとヒラフのスキー場に行くという。徒歩で! 確かに地図上は5km弱の道のりを1時間で歩ける気がするかも知れない。しかし除雪されていない雪道を歩くのは大変だし危ない。尻別川の谷もある。ということで車に乗せてあげてヒラフまで送り届けることにした。
ドイツからやってきた青年で、1年以上かけて世界一周旅行をしている途中だという。日本は大阪、京都、東京、仙台と巡って、スノーボードがやりたくなって思いつきでニセコを目指す気になったらしい。そうして行き当たりばったりで現地のローカルな鉄道やバスを乗り継ぎ、時には長距離を歩くのが楽しいのだという。
そしてたまに車に乗せてくれる親切な人と出会うのも楽しみだと、気を使ってフォローしてくれた。なるほど… 自分には全くない逞しさだ。ニセコには本当にいろいろな人がやってくるので面白い。
ということで、この日行った場所の位置関係はこんな感じだ。ドライブルートも入れたかったのだが、なぜかGoogle Mapsでは道道58号線を道路として認識しておらずルートが引けなかった。
ニセコ周辺は終日雪模様で、この日は羊蹄山の姿は一度も見ることができなかった。それがこの辺りの冬の日としては普通なのだろうと思う。