東京の街中でネオワイズ彗星の撮影に挑戦してみた

2020-07-22

 今月はネオワイズ彗星なるものが接近していたらしい。今年になってから見つかった新しい彗星で、消滅することなく近日点を通過し、分裂して糸守湖に落下することもなく、最近は宵の北西の空にその姿が見えている。が、すでに見頃の最盛期は超えて、日に日に太陽から遠ざかり暗くなっていっているそうだ。太陽から遠ざかると尾も短くなってるのだろうか?


 さて、この彗星は当初の予想よりも明るくなり、最大で1等くらいになったそうだ。だとすると東京でも見える明るさではないか! …と思っていたのだが、ここ3週間くらいずっと天候が悪く諦めかけていた。

 しかしそんな中、先の日曜日7月19日は、予報が外れて午前中から青空が覗いていた。その晴れ間は夕方になっても陰ることがなく日が沈んでいく。もしかしてこれは本当に見えるかも知れない! と思ってカメラと三脚を用意して近所の空が開けたところに出かけてみた。

ネオワイズ彗星PENTAX K-1改, HD DFA★85mmF1.4ED SDM AW, f2.0, 2.5sec, ISO200, +1.0EV
 ほら! 見えた! いや、正確には肉眼ではほとんど見えなかったのだが、試しにiPadの星空ARアプリで彗星がいるとされる方向にカメラを向けて、適当にシャッターを切って、画面を拡大してチェックしてみたらちゃんと写っていた。

 え? どこにいるか分からない? うむ、ブログサイズに縮小してしまうと多分見えないだろう。パソコンならまだ大丈夫かも知れない。スマホだと無理だろうか。
 

ネオワイズ彗星(矢印入り)PENTAX K-1改, HD DFA★85mmF1.4ED SDM AW, f2.0, 2.5sec, ISO200, +1.0EV
 ちょっと拡大してみた。ここだよ、ここ!

 周辺にいくつか普通の星が写っているが、それらとはちょっと様子が違う。彗星だと思ってみるとうっすらガスっぽいものが尾を引いてるようにも見えてくる。
 

ネオワイズ彗星(200mm)PENTAX K-1改, HD D FA*70-200mmF2.8 ED DC AW(200mm), f3.2, 10sec, ISO100, 0EV
 さすがに85mmではダメかと思って70-200mmズームをに切り替えてみた。肉眼でよく見えないので、望遠レンズの狭いフレームに捉えられるか心配だったが、すぐに見つかった。これなら拡大したり矢印を付加しなくても、なんとか彗星だと分かってもらえるだろう。なお画面下のぼんやりした白いものは雲だ。街灯りに照らされるのでかなり明るく写る。

 そしてここまで拡大すると数秒の露出でも星は動いてしまう。が、K-1改なら慌てることはない。アストロトレーサーという強い味方がある。これまで4年ちょっとの間で使ったのはこれが5回目くらいだと思う。使用頻度は低いがここぞと言うときに役立つ、本当に素晴らしい機能だ。
 

ネオワイズ彗星(300mm)PENTAX K-1改, DA*300mm F4 ED [IF] SDM, F4.0, 10sec, ISO400, 0EV
 もうちょっといけるか?ということで300mmに挑戦してみた。だいぶ彗星っぽくなってきた。こうなるとアストロトレーサーは必須だ。地磁気センサーのキャリブレーションが甘かったのか、ちょっと流れているがまぁ良しとしよう。
 

ネオワイズ彗星(超トリミング)PENTAX K-1改, DA*300mm F4 ED [IF] SDM, F4.0, 10sec, ISO400, 0EV
 上の写真から彗星部分を等倍拡大(PC向け:960×540ピクセル)してみた。ゴリゴリに現像処理したあとで拡大&切り抜いたのでので、かなり荒れてしまっているが、それなりに彗星の姿をしている。うっすら尾も写っている。やった!

 彗星の写真としても星景写真としてもまったくどうにもならないのだが、この長梅雨の今年、東京23区内の街灯りの中でこれだけ撮れたら大成功ではないかと自己満足している。
 

ネオワイズ彗星(by国立天文台)by 国立天文台
 なお、国立天文台のWEBには、石垣島で撮影された見事な写真が掲載されている(転載可と言うことなので貼ってみた)。なるほど、本当は105mmでこんなに長く尾が写るものなのか…。空が暗いところで撮ってみたい…。
  

 彗星と言えば過去に二つ見た記憶がある。一つ目は子どもの頃、1986年に接近した「ハレー彗星」だ。当時まだ未開の荒れ地だった東京湾岸の埋め立て地まで行って見た。が、肉眼では見えなくて近くにいた見知らぬおじさんが双眼鏡で見せてくれた。
 もう一つは就職後の1997年に接近した「ヘール・ボップ彗星」で、たしか週末にスキー場に向けて真夜中の東北道を北上しているとき、なんか変な形の雲が正面上空にあるな… と思っていたら彗星だった、という思い出がある。

 この中でハレー彗星は75年周期らしいので、ものすごく長生きすればまた見られるかも知れない。しかし一般的に彗星は一期一会だ。ヘール・ボップ彗星は約2500年、今回のネオワイズ彗星は5000年以上経たないと次はやってこないらしい。

 でも、また別の彗星がやってくることだろう。地球に衝突しない程度にもっと接近してくれると良いのだが。

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