NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR はスペックよりも10cm寄れる

2021-04-21

 もう昨年末の話になるが、Zマウント導入の1本目のレンズとしては NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR を選択した。昨年にZ 5とほぼ同時に登場した高倍率の便利ズームだ。しかしある意味Zマウントの特性をとても良く生かした1本であり、その描写性能はとても高倍率ズームとは思えないほど、クリーンで安定している。

 大きさ重さはそこそこあるがレフ機用ではあり得ないサイズ感だし、お値段がそこそこするわりにSラインに属していなかったりするが、メカの作りもしっかりしていて安っぽさは微塵もない。

Nikkor Z 24-200mm F4-6.3 VR

 だがこのレンズにはひとつだけ大きな欠点がある。それは最短撮影距離が遠いことだ。ワイド端24mm時で50cmとなっている。うむ、これはちょっと遠い。あと20cm…、いや10cm短ければいいのに。

 と思って、購入時にウジウジ悩んでいたら、ネット上の噂によると、実際はもっと近くまでピントが合うという口コミを複数見つけた。それならばということで手に入れてみたのだが、本当にそうなのか実際に自分の手元にある実機でテストしてみた。

最短撮影距離実測結果

 カメラを三脚に乗せて水平を取り、壁に対してAFで合焦マークが出るギリギリの位置を探った。焦点距離はズームリングの位置指標に目測で合わせている。距離は普通の家庭用金属メジャーを使い手動で測っているので、ある程度の誤差が含まれると思って欲しい。なお、レンズ前玉ではなく、ちゃんとボディの撮像面基準マークから測っている。

 で、いきなり結論となるが、噂は本当だった。以下に実測結果をスペックと並べて表にしておく。
 

焦点距離 最短撮影距離(スペック) 最短撮影距離(実測)
24mm 0.5m 0.39m
35mm 0.54m 0.43m
50mm 0.55m 0.50m
70mm 0.58m 0.54m
105mm 0.65m 0.62m
135mm 0.68m 0.65m
200mm 0.7m 0.68m

 特にワイド側ではスペックよりかなり寄れる。ワイド端24mmでは11cmも近い0.39mにピントが合う。テレ端になるにしたがってスペック値との差が小さくなってゆき、テレ端200mmではわずか2cm程度短くなってるだけだ。

 しかし、ワイド側でスペックより10cm前後寄れるというのはとても良いことだ。描写性能が基準から外れるとか製造上の都合とかなにか色々と理由はあるのだろうが、スペック表記の奥ゆかしさはニコンらしい。

近接撮影の作例

 ということで、本題は終了なのだが、以下には手に入れてからこの4ヶ月あまりの間に、比較的近距離のものを撮ってみた結果を並べておいた。

Z24-200mm近接テストNikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(82mm), f14, 2sec, ISO80, -1.0EV
 適当に静物を並べて撮ってみた。ズーム位置は中望遠域の82mm。このままテレ端にズームしてもピントは合うから70cmほどの距離だったと思う。
 

PENTAX K-1 Mark II ペンタ部アップNikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(93mm), f8.0, 1.6sec, ISO100, -1.0EV
 PENTAX K-1のペンタ部をアップにするくらいのことは十分出来る。
 

エッフェル塔小物Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(50mm), f6.3, 1/25sec, ISO220, 0EV
シトロエン小物Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(42mm), f5.3, 1/25sec, ISO100, 0EV
 その辺のテーブルの上に並んだものとか、どこかお店のディスプレイを近寄って切り取るなんてのも全然問題ない。こういう場合自然と50mm前後の画角を選んでしまうのは、やはりこの領域が視覚に近いのだろうか。
 

葉っぱNikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(200mm), f6.3, 1/250sec, ISO400, +1.0EV
スイセンNikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(200mm), f6.3, 1/125sec, ISO100, +0.7EV
苔と紅葉Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(85mm), f10, 1/50sec, ISO2800, -0.7EV
 さすがにマクロ風味とまではいかないが、目に入った草花や植物なんかを撮るのも自然に出来る。望遠側にズームレンジが広いので、グイッと近づかなくてもそこそこ迫力ある写真が撮れる。
 

ビリエットのノンアルコールビールNikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(37mm), f5.0, 1/20sec, ISO800, +0.3EV
ビリエットの肉盛り合わせNikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(55mm), f5.6, 1/30sec, ISO900, +0.3EV
 それでもちょっとつらいシーンと言えば、こうしたテーブルフォトだろうか。特に出先のお店で出た料理を撮るのには向かない。

 いや、撮ることはできる。できるが、やはり最短撮影距離を大いに意識することになる。それに、そもそも食事の席に出すにはちょっと大きすぎて野暮だ。

 でもまぁ、旅先であればアリだろう。食事を撮ることも入れてこれ一本で旅に出かけるというのは最高ではないかと思う。
 

PEUGEOT 308SW GTエンブレムNikon Z 5, NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR(86mm), f6.3, 1/30sec, ISO200, +0.7EV
 PEUGEOT 308SWのGTエンブレム。ボディサイドの光の反射がキレイだったのでグイッと寄ってみた。格好イイ!
 

NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VRはイイぞ!

 最短撮影距離付近の領域になると、特に光学設計的に無理してると、なぜかぼんやり滲みが出るズームレンズなんかもあったが、このレンズはそんなことはまったくない。特にスペック外の領域で厳密にチェックしたわけではないが、画質の安定感は近距離でも全然変わらない。

 この4ヶ月間を通して、何か撮ろうとして、カツンと最短撮影距離の制限に当たってガッカリしたと言うことは、ほとんどほど起きていない。テーブルフォトには要注意だが、高倍率ズームとして普通に使う分には十分な近接撮影能力があると言える。

 ということで、繰り返しとなるが「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR は(ワイド端において)スペックよりも10cm寄れる」が結論であり、Zマウントを代表する1本として自信を持ってお勧めしたいレンズだ。
 


 

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