HD PENTAX D FA★ 70-200mm F2.8ED DC AWはとてもイイぞ!

2020-01-14

 先日、Twitterのタイムラインでカメラマン誌1月号に掲載された「間違いだらけのレンズ選び!!」という記事が話題になっていた。当該誌毎年恒例の特集であり、プロカメラマン数人による座談会形式で各メーカーのレンズについて辛口評価を加えていくものだ。

 PENTAXコーナーはわずか1ページ。その内容については辛口評価以前に突っ込みどころ満載なのだが、特にD FA★70-200mm F2.8がひどく貶されていたのが気になった。

 要約すると「このレンズは他社の同スペック製品と比べるととても見劣りがして30万円の価値はない。この程度で満足しお金を貢いでくれるペンタキシアン向けなのだろうw」といった感じだ。

HD PENTAX D FA★ 70-200mm F2.8ED DC AW 
 そもそもこのレンズは30万円もしない。20万円あれば買える。

 それはさておき、製品自体の欠点をあれこれ言うのは別に構わない。それこそメディアとレビュアーの役割であり自由だ。しかしどさくさに紛れてペンタキシアンがディスられているのであれば、反論しておかなくてはならない。

 大きなお世話だ、放っておけ! それに HD PENTAX D FA★70-200mmF2.8ED DC AW はとてもイイぞ! と。
 

オホーツク海の流氷と知床連山とカモメPENTAX K-1, HD DFA 70-200mm F2.8ED DC AW(200mm), f9.0, 1/500sec, ISO100, +0.7EV
農家のおばあさんPENTAX K-1, HD DFA 70-200mm F2.8ED DC AW(200mm), f2.8, 1/2000sec, ISO200, -1.0EV
 このレンズは発売延期が繰り返され製品発表から約1年後、K-1が発売される直前になってようやく手に入れることができた。そういう意味では確かにペンタキシアンが待ち望んでいたレンズではある。

 だが、正直なところ最初に使ってみた印象は「ふ〜ん、こんなものか…」だった。なんというか撮れた絵にピンとこなかったのだ。一見ぼんやりというかあっさりしすぎているように感じられ、中央と周辺の描写も均一に感じられず、なんだか古くさいレンズのような印象を受けたのだ。

 しかし、使い込んでいくうちにジワジワとその印象は変わってきた。実はPENTAXにはそういうレンズが多い。
 

LED電球PENTAX K-1, HD DFA 70-200mm F2.8ED DC AW(160mm), f2.8, 1/250sec, ISO100, 0EV
ゲイン塔と積乱雲PENTAX K-1改, HD DFA 70-200mm F2.8ED DC AW(200mm), f5.6, 1/1600sec, ISO100, 0EV
 撮影後に背面液晶で見ただけでは「ふ〜ん」としか感じなかったカットが、あとでLightroomで良く見てみると「あっ!」と思える瞬間があるのだ。なんだ、すごい写ってんじゃん! 線が細いとはこういうことか? と。

 隅々まで解像していて色収差はないし、像が流れたり形が崩れるわけでもなく、発色も安定していてとても素直だ。歪曲もほとんど無くボケがとても綺麗。開放付近の周辺光量低下が気になるが補正は簡単だ。だから撮って出しも実はとても良いのだけど、RAW現像の素材としても、質が高く情報量の豊富な絵が撮れる。

 ただし(多分レンズ端面の)内面反射処理が少し甘い気がしている。ゴーストやフレアが出るわけではない。むしろ逆光耐性は強いほうだと思う。しかしRAW現像をしているとふとした瞬間にうっすらとリング状にコントラストが低下した帯が浮かび上がってくることがある。それは過剰補正の領域なので事実上問題は無いのだが気になる。もしかしたら個体差なのかも知れない。
 

御神輿を担ぐ手PENTAX K-1, HD DFA 70-200mm F2.8ED DC AW(108mm), f2.8, 1/2000sec, ISO200, 0EV
セバスチャン・ベッテルPENTAX K-1, HD DFA 70-200mm F2.8ED DC AW(150mm), f3.5, 1/3200sec, ISO200, 0EV
 鏡胴の造りは非常に良く、インナーズームなのでバランスは崩れにくく、AFはDCモーターでそんなに速くはないが、K-1との相性はとても良くて精度は完璧に信頼できる。もちろんAWなので雨でもへっちゃらだ。前玉はSPコーティングされているので汚れにも強い。

 ただし重たい。だいたい400gくらい他社同等品より重たい。この重さを正当化できるほどの利点はない。

 また、全域で1.2mという最短撮影距離は一眼レフ用としては標準的だが、ピント位置による焦点距離変動がかなり大きいために、最大撮影倍率は0.13に留まる。そのためスペックほど寄れた気がしないというのも欠点だと思う。
 

桜並木PENTAX K-1, HD DFA 70-200mm F2.8ED DC AW(123mm), f2.8, 1/1600sec, ISO100, 0EV
高ボッチ高原から望む富士山PENTAX K-1 Mark II, HD DFA 70-200mm F2.8ED DC AW(200mm), f4.0, 1/60sec, ISO200, -1.0EV
 ということで、上に書いたような欠点もあるが、全体的には素晴らしく20万円の価値は十分にある。自信を持って「HD PENTAX D FA★70-200mmF2.8ED DC AW はとてもイイぞ!」と世界中の人にお勧めしたい。

 冒頭にも書いた通り30万円するというのはデマだ。公式ストアでは保証書無しのアウトレット品なら、なんと17万円台で売っている。他社の同スペック品より圧倒的に安くとてもお買い得だ。

 だから「こんな安物でお茶を濁すなんて貧乏なペンタキシアン向けなんですね」と揶揄されるならよく分かるのだが(分かるのかよ!)「こんなに高いのに他社より劣る性能で満足するペンタキシアン」と真顔で言われると困惑するばかりだ。DFA24-70mmやDFA15-30mmではあるまいし(おい!)。

ANA A320流し撮りPENTAX K-1, HD DFA 70-200mm F2.8ED DC AW(200mm), f2.8, 1/15sec, ISO1600, -1.0EV
 ほとんどのペンタキシアンはそれぞれのPENTAXレンズの長所も欠点も分かった上で使い込んでいる。他社にもっと「性能」が良いレンズ(とカメラ)があるであろうことも分かっている。だからこそ、色んな意味でKマウントレンズの現状に満足などしていない。熱心なファンというのは一番辛辣な批判者でもあり得るのだ。特にペンタキシアンにはその傾向が強い。

 だから、いかに販売部数が落ちて回復の見込みがない雑誌メディアがオワコンであるからといえ、スポンサーに遠慮しない俺たちカッケー!とイキってい見せたところで、腐っても一般ユーザーを対象にした商業誌たるものが、製品の出来不出来と熱心な信者としてのペンタキシアンをごちゃ混ぜにして揶揄するのはとても品がよろしくない。

 そういうイキリと自虐はペンタキシアン自身にのみ許された特権なのだ。

※すべて個人の印象です
 

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