RICOH GR III / GR IIIx の良さを改めて思い出す

2024-08-29

 ここ最近…… というのは具体的にはおよそ1年くらいのことだと思うのだが、なんとなくGR III/GR IIIxを使う機会が減っていた。Zマウントに本格移行したことは無関係ではないと思う。レンズ交換式のフルサイズ機とGRではまったく成り立ちも用途も異なるカメラとはいえ、複数のカメラを同時に使い分ける器用さは自分にはないので、無意識にGRに触れないようにしていた、というとちょっと格好つけすぎではあるが、それほど外れてはいない。

 巷ではフィルム時代もか何度目かの高級コンパクトカメラのブームが訪れていて、GR IIIシリーズは5年も前に発売されたカメラでありながら、品薄状態でほとんど手に入らない。いつの間にかHDFバージョンなども追加されているが、時々公式サイトで抽選販売が行われるだけで、選択肢が増えたとは言いがたい状態だ。

 そんななか東京の原宿に新たにGRの SPACE TOKYOなるGRのためのコミュニケーションスペースがオープンし、プロモーション活動には依然として力が入っている。少なくともリコーはGRを続けていくつもりはあるらしい。

GR IIIとGR IIIx

 自分の手元にあるGR IIIは、発売日の2019年3月に手に入れた超初期ロットだ。途中で一度レンズユニットとイメージセンサのユニット一式とメイン基板(つまり外装以外の中身丸ごと)を交換している。その頃からずっと無線の調子が悪くBluetooth経由のWi-Fi起動が上手くいかないがそれ以外は快調だ。

 GR IIIxのほうはUrban Editionというカラバリ版で、手に入れたのは2022年7月だから実は2年しか経っていない。感覚的にはもっと長く使っている気がしている。こちらはなぜか無線周りもすこぶる調子が良く、故障や修理歴もない。

 欲しいのに手に入れられないという人が大勢いるなかで、使い古しとはいえこの2機種を防湿庫に眠らせておくのは勿体ないと思いたち、久々に使ってみることにした。

GR IIIで神戸の夜を撮る

 まずはGR IIIを改めて使ってみた。場所は神戸の中心部、元町から三宮のあたり。ぶらぶらと散歩しながら撮ってきた。実のところ1ヶ月半ほど前、7月中旬のことだ。

 雨上がりの夜、元町と三宮の間を走る鉄道の高架下。昔この界隈を飲み仲間達とハシゴしまくった記憶が蘇る。あの時の居酒屋やバーはどこにあったのだろうか?
 

雨の繁華街

 三宮に近づいてきた。町の雰囲気が一気に変わる。でも別に危険な感じではない。賑やかでとても良い雰囲気だ(酔っ払いの感想)。
 

三宮駅前のゴミ

 三宮駅前。なかなか行儀というか治安が悪い感じだが、写真的にはちょっと惹かれるので撮ってみた。お酒じゃなくて甘いものが多いのがちょっと面白い。しかし最終的にいったい誰が片付けるのだろうか?
 

高架下のアーチ

 神戸の中心部の高架や駅は古いものが多い。町並みは阪神淡路大震災で甚大な被害を受けて建て替えられたものが多いし、鉄道だって例外ではないはずなのだが、部分的にそのまま残っているのか、あるいは古く見えるだけでやはり建て替えられたものなのか?
 

スローシャッターでバス

 電車の軌跡をスローシャッターで撮ろうと思いたち、カメラの設定をして待ち構えていたらバスがフレーム内を横切っていったので思わずシャッターを押した。ただそれだけなんだけどわりと気に入っている。
 

雨上がりの坂道

 神戸は坂道の町でもある。そのせいか路面に反射する雨上がりの光が美しい。
 

三宮駅前

 三宮駅の少し外れにある小さなスクランブル交差点。前夜の雨は跡形もなく上がりきれいな夏の青空が広がっていた。東京にもそこら中にありそうな普通の街の風景だが、知らない土地にいると思うとなんだかフォトジェニックに思えてシャッターを切ってしまう。そして仕上がりもやっぱり良い感じだと思う。
 

ピビンパ

 テーブルフォトで使うにはパースがつきすぎたり手やカメラ自体の影が入ったりして使いにくいと思っていたが、しかしそういうことも含めてその場のテーブルの雰囲気が一番出やすくてむしろ良いと思えるようになった。

 ということでやはり28mm相当の画角は良い。スマホの標準カメラとほぼ同じ画角ということもあって、すごく自然に感じる。だったらスマホで良いのか?と言われると、そうかもしれないけれどそういうことじゃないな、と思う。その一方でZマウントで代用できるものでもない。

GR IIIxで東京をぶらつく

次に日本橋や銀座界隈に用事があったついでに散歩しながらGR IIIxを使ってみた。

銀座の歩行者天国

 日曜日の銀座中央通りは恒例の歩行者天国だけれど、暑いこの時期はみんな日陰を歩くのでちょっと変な風景になる。Negative Film調の仕上げが追加されてから気に入ってよく使っている。夏の強い日差しが少し和らぎ爽やかさだけが残る感じだ。

 街中とかでこういう遠景を撮るとき、空と地面のバランスを考えてカメラを上に向けがちになるが、GR IIIxくらいの画角だと上下方向のパースが付きすぎないのが良い。
 

999.9の店先

 パッとしないときはついモノクロにしてしまいがち。写真の撮り方、仕上げ方として全くダメなのは分かっているのだけど。こういう面へ正対するありがちな撮り方をした場合も、40mm相当くらいの画角だと縦横が出しやすくスッキリする。
 

和光のガラス

NISSAN

 銀座4丁目交差点の体格に位置するランドマーク。それぞれのショーウィンドウのガラスの反射はなんとなくいつも撮ってしまう。こうなると逆に画角がちょっと狭いなと感じ始める。いや28mmだとそれはそれで色々入りすぎて迷うに違いないのだが。

 そしてここまで3枚連続でガラス面ばかり撮っている。銀座にはそれしかないのか? 少なくともカメラを持った自分の目にはそれしか見えなくなってしまうようだ。銀座は写真を撮る場所としてあまり面白くないと感じている原因はその視野の狭さかもしれない。決してGR IIIxのせいではないだろう。
 

日本橋三越ビアガーデン

 そしてこれは日本橋の三越のビアガーデンで飲んだビール。ビアガーデンに来たのはものすごい久しぶりだ。もちろんコロナ禍の影響は大きかったし、そもそも老舗の古き良きビアガーデンの多くが東京から消えてしまった。ここは残された「デパート屋上ビアガーデン」の最後の砦だ。
 

鎌ケ谷の梨

 今回の最後の一枚は見ての通りの梨。千葉県は鎌ケ谷産の幸水だ。毎年お盆の前後に農家さんの直売所まで買いに出かけているのだが、今年はちょっと時期がずれていたようで、あまり良いものが買えなかった。とはいえ、近所のスーパーで買うよりは安いし美味しい。

 さっきのビールもそうだがテーブルフォト的な場面にはGR IIIxは合っている…… と思っていたが、お皿やグラスにフォーカスしやすい反面、そればかりになりがちで雰囲気に欠けるような気もする。余白にあるはずの場の雰囲気が写らないというか何というか。

 おまえは本当にそんなに食べ物や飲み物「だけ」の写真を撮りたいのか?という根本的な問題を考えてしまう。飲食店で写真を撮る意味は何だ?と。あとから見返していつどこで誰とどんな時間を過ごしたかすぐに思い出せる写真じゃないと面白くない。

 そしてそんな余白が足りない感じは実はテーブルフォトだけではなくあらゆる場面で撮る写真に共通しているのかも?と思い始めた。

 なので、もしこの先リコーが最近のGR人気に気を良くして、なにかを改良して進化させたGR IVとGR IVxが出たとしたならば、自分はGR IVだけを買うことになるのだろうと思う。というか、早く新型を出して欲しい。「GR III/GR IIIxは今でも十分完成している」なんて嘘っぱちだ。デジタルカメラである限り、やれること、やるべきことはたくさんあるはずだ。


 

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