PENTAX K-7を買い戻して原点を思い出す

2020-01-12

 いまさらながらPENTAX K-7を買った。K-7は約10年前に使っていたことがあって、その後一度手放してしまったのだけど、最近になってまた欲しくなってきていた。古いカメラなのでお値段もかなり安いし、そもそも状態の良い個体の流通量が減ってきているような気がして、年が明けたばかりのある日、思い切って買い戻すことにした。

 このカメラについての思いは、昨年↑この記事に書いた。過去のカメラとしてずっと気にしていなかったのだが、10周年を機に改めて思い出を辿り、昔撮った写真などを見直してみると、いろいろと魅力的なカメラだったと再認識したのだ。

 なにより、自分をペンタキシアンにしてしまった記念すべきカメラなのだ。その後の全てはここから始まっている。
 
PENTAX K-7 
 新宿のマップカメラで良品の個体が16,800円の値札を付けていた。店頭には同じ価格の物が2台だけあって、両方とも見せてもらったけど、特に差は無かったので適当に片方を選んで買ってきた。

 購入後ExifのMaker Noteを調べてみると製造年月日は2009年の8月で、シャッターカウントは2400回あまりと非常に少ない。もしかしたら基板が交換されていたりするかも知れない。

 その他外装は目立った傷もないし、ファインダーやセンサーも綺麗に清掃されていてとても綺麗だ。美品と言われても違和感は感じない。
 

PENTAX K-7背面 
 背面の操作系はこんな感じだ。液晶は3インチ92万画素あるのでそれほど古さは感じない。AFまわりを除いてが基本的な操作系やメニューの構成はK-1とそんなに違わないので、そのままスッと手に馴染む。

 ただ、やはり表示フォントはギザギザだし実際いろいろ触っていると各所の操作感に懐かしい感じが滲み出てくる。そして、やはりK-1にいたる現在のPENTAX一眼レフ機の基礎の多くはここにあるのだと思う。
 

PENTAX K-7各部 
 このK-7の外装デザインをベースにしてK-5, K-5II, K-3, K-3IIとモデルチェンジを繰り返していったが、やはり初代のK-7が一番まとまっていて美しい。

 ペンタ部の形状は角の面取りが柔らかく、K-3/K-3IIはもちろんK-5/K-5IIとも実は違う。モードダイヤルはK-5以降の機種と比べて高さが低く、K-7ロゴ周辺のボディ形状もスッキリしていてとても綺麗だ。ボディ内手ぶれ補正機構を表すSRバッジも赤地でとても目立つ。

 そして、このカメラが発売された時代、PENTAXはHOYAの一部門だったことがボディ底面に刻み込まれている。だから何?と言われても困るが、今以上に存続が危ぶまれていたPENTAXのカメラ事業が、リコーに買収されるというニュースを聞いたときの安堵した気持ちを忘れないようにしたい。
 

赤レンガ倉庫PENTAX K-7, FA43mm F1.9 Limited, f5.6, 1/100sec, ISO100, 0EV
 眺めているだけでは勿体ないので写真を撮ってみた。K-1と比べるととにかく軽くて小さい。そしてシャッターフィールがとても良い。K-1改はもちろんK-3以降のカメラとは明らかに違う。K-5とも少し違う。この柔らかいシャッターフィールにやられて、ほとんど衝動買いしたことを思い出す。
 

東京の夕暮れPENTAX K-7, HD DFA15-30mm F2.8ED SDM WR, f5.6, 1/15sec, ISO100, 0EV
 K-7でCTE+リバーサルフィルムに設定して夕景を撮ると、見た目とは全然違っていて、本当にリバーサルフィルムで撮ったみたいな色が出る。このカットのような紫のグラデーションはsRGB+JPEGでは上手く表現できないギリギリな感じだ。

 最近の高性能で広ダイナミックレンジなデジタルカメラで撮ると、こういうシーンは事もなげに正確な色で綺麗に写し止めてしまってつまらない。
 

ススキPENTAX K-7, HD FA35mm F2, f2.0, 1/2000sec, ISO100, -1.0EV
 AFはまぁそれなりだ。10年前当時でももちろん他社と比べて最高レベルではなかったが、今でもなんとか使いこなせる。特に百戦錬磨のペンタキシアンなら問題ないだろう。

 とは言えこうしてヒラヒラと風に揺れる草などはちょっと厳しい。どこにピントが行くのかまったく予測がでかない。かえって緊張感が増しファインダーへの集中度が高まる。なお、ライブビューはあるがまだおまけ程度の時代だ。実用性はあまりない。

 なおファインダーのスクリーンはとてもよく見えるが、画面下の撮影データ表示が暗すぎて明るいところではほとんど見えない。これは古くなってへたっているせいなのか、最初からこうだったのかは思い出せない。
 

東京ゲートブリッジのエレベーターPENTAX K-7, HD FA35mm F2, f5.6, 1/800sec, ISO100, -1.0EV
 K-7を再び手にしてやってみたかったのは「銀残し」だ。何となくイメージの中のK-7は「銀残し」にとても合いそうな気がしていたのだ。だが、K-7自体には実は「銀残し」は搭載されていない。あれはK-5から搭載された新機能なのだ。

 しかしPENTAXの純正現像ソフトDCU5を使うと、K-7で撮影したデータ(RAWでもJPEGでも)から「銀残し」で現像することが出来るということでさっそくやってみた。

 ローキーで高コントラスト、低彩度の渋い発色で被り気味。うーん、とても良い感じだ。ただこれがK-7にしか撮れないかと言われると微妙なところだ。
 

真っ青な東京湾PENTAX K-7, HD FA35mm F2, f5.6, 1/640sec, ISO100, 0EV
 もう一枚やってみた。被せる色を抜いて、その他いろいろ調整すると、色味は「銀残し」っぽくないものの、階調の渋さは明らかに「銀残し」のそれになる。周辺減光補正はわざと補正しない(というかむしろ盛っている)とさらにそれっぽくなる。 

 こうして見ると東京湾だって捨てたもんじゃない。とても綺麗な海に見える。
 

航路標識PENTAX K-7, HD FA35mm F2, f5.6, 1/500sec, ISO100, 0EV
 でもローキーで渋くするだけがK-7の味ではない。K-7は「ほのか」が初めて搭載されたカメラであり、K-7といえば「ほのか」で撮ることが(極一部で)流行っていたこともあった。

 「ほのか」は低彩度でハイキーで柔らかい描写が特徴だ。この写真は空の色を出したくて青だけ盛ってある。シャドウのノイズが弱点だったK-7にとっては本当はこういう方向性の方が得意だったのかも知れない。
 

 一通り撮影してみて、カメラ自体の使い勝手は古さをそれほど感じず普通に使えるが、撮れた写真はやはり古さを感じてしまったというのが正直な感想だ。

 画素数(14Mピクセル)はそれほど問題ではない。が、なんというかノイズがどうこうよりも、ダイナミックレンジが非常に狭いのだ。特にハイライト側。当たり前だがこの10年の間にデジタルカメラは相当に進歩していることをいまさら感じた。

 さて、あとK-7といえばグリーンを試してみたいのだが、残念ながら今の時期はあまり綺麗な緑の風景には出会わない。また新緑の頃に是非試してみようと思う。
 

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