今冬はそれなりに寒い日が続いているが、東京にはまだ雪が降っていない。平穏な生活のためには東京には雪が降らないほうが良いに決まっているのだが、過去にも何度か起きたような混乱とともに、真っ白な雪景色もそろそろ見てみたい。そしてワンコのように外に飛びだして雪にまみれたい(※個人の意見)。
そんな雪景色が見たい欲が急激に高まって、真冬の北海道に出かけようと突然思い立った。雪がやってこないならこちらから雪があるところへ行けば良いじゃないか。
一面の雪が見られればどこでも良くて、旭川か帯広か?やっぱり釧路や知床方面か?あるいは昨初夏のドライブ旅では諦めた宗谷岬に行くのもありかも?と考えていたら、まだ未達の日本100名城が北海道にあることを思いだした。
そうだ函館だ!道南の海岸線をドライブして松前城へ行ってみよう!
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-120mm f/4 S(48mm), f8.0, 1/400, ISO100
函館空港でレンタカーを借りて一路西を目指す。途中大雪に降られて松前までは辿り着けないのではないか?と思ったりもしたが、なんとか北海道最南端の白神岬までやってきた。海の向こうには松前城下が見える。晴れてきて良かった! なお気温は−5℃ほどで海風で体感温度はかなり低い。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(21mm), f11, 1/320, ISO100
さて松前城に到着した。天神坂門の内側には小さな堀の奥に三本松と搦手二之門がある。奥にすでに天守の姿が見えている。
こまで来るのが大変だった。さすがに松前城に真冬に来る観光客はほとんどいないのか、駐車場を見つけるのにも苦労したし、車を降りてからも新雪の上に獣道のようなトラックがあるだけで、どこをどう歩けば見学できるのか分からない。上の写真も実際に天神坂門に表から入ったのではなく、天守のある奥側から回り込んでたどりついた。
その他の場所も、誰かのトラックがあるかないか?なかったとして行けるのか行けないのか? 慎重に見極めながら遭難しないように雪の上を歩きまわってきた。途中で観光客らしき人には全く出会わず仕舞いだった。100名城に数えられてるような城跡を独り占めできるなんて贅沢すぎる。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(18mm), f8.0, 1/640, ISO100
松前城の天守は三層だがなかなか立派な姿をしている。本物は戊辰戦争やその後昭和にかけての戦禍も逃れたというのに、1949年の火災で失われてしまったそうだ。いまあるのは外観復元天守だが、木造再建の計画があるらしい。
そもそも今目にすることができるこの天守を始めとした松前城は、ペリー来航の少し前に、海外(主にロシア?)に対する防御を目的として幕府の命令で築城されたという、時代的にも経緯としても他の城にはない変わった背景がある。もともとの松前藩はこのような城を持たず館しかなかったそうだ。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(18mm), f7.1, 1/250, ISO100
この本丸御門は天守を焼いた戦後の火災をも逃れて現存している建築物で、国の重要文化財に指定されている。エッジの効いた隙間のない石垣からも時代の新しさを感じる。石高にして一万石少々(松前藩は米の収穫がなかったので実際の石高ではない)の門にしては確かに巨大で格好イイ。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(19mm), f8.0, 1/250, ISO100
本丸御門と天守の前はちょっとした広場になっているが、雪のまっさら具合に訪れる人の少なさが分かる。わずかに付いている足跡は自分が付けたものだ。もう少し慎重に歩けば良かった。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(14mm), f14, 1/400, ISO100
なお天守前の広場はソメイヨシノが並んでいて春(といっても5月?)は桜の名所となるらしい。そのころは地元からも遠くからも多くの観光客がやってくるのだろう。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-120mm f/4 S(26mm), f5.6, 1/200, ISO100
本丸御門の他にもう一つ現存建築物が残っていて、それがこの小さな本丸表御殿玄関だ。表御殿は小学校として再利用されていたが、色々あって最終的にこの玄関部分だけが残っているそうだ。
ちゃんと表示があったから良かったが、無かったらボロい小屋にしか見えなかったことだろう。多くの文化財といわれるものは保存や修繕の努力があってこそのものなのだろう。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-120mm f/4 S(24mm), f8.0, 1/400, ISO100
本丸御門の奥は公園になっている。さらにその奥、北の丸跡には松前神社が建っている。もちろん明治になってからできたものだ。さらにその奥は寺町となっていて桜並木もずっと奥まで続いている。冬のこの時期は雪に埋もれていて歩くのもままならない。車でもどうにもならない。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(14mm), f11, 1/500, ISO100
なお本来は天守に松前城資料館があるのだが、残念ながら冬期は休業している。つやはりこんな時期に100名城めぐりの観光客がやってくるなんて想定されていないのだろう。いや、オフシーズンなのは分かってて敢えて来たのだから別にかまわないのだが。
誰もいない雪の中の城跡は風情があってとても良い。これが江戸幕府や京都の朝廷からみて日本最北端の領地であり、アイヌとの交易や北前船による関西方面との物流で生きていた松前藩の城だとなればなおさら良い。
アイヌの人々の歴史でもなく、明治以降の入植者によるものでもない、また別の北海道の歴史がある。宇江佐真理さんが作中に何度も登場させたあの松前藩がここにあったということを、真っ白で静かな雪の上を苦労して歩きながら味わってきた。
Apple iPhone 13 Pro Max(超広角カメラ 13mm相当), f1.8, 1/1340sec, ISO32
問題はスタンプだ。通常は資料館で押せることになっているのだが、その資料館が冬期休業中でやってないとなるとどうなるのか?と思ったら、無人の案内所にちゃんと小さな張り紙がしてあった。スタンプは町役場に保管されているからそこに行け、と。
町役場は松前城のすぐ目の前にあった。しかし窓口に備え付けてあるのではなく、奥の方に厳重に保管されているらしく、来訪の意図を窓口に伝えると、奥の担当者へと引き継がれて、時間をかけてどこかからわざわざ持ってきてくれた。そんな大事になるとは思っておらず、お手を煩わせて申し訳ない。本当に冬に100名城めぐりでやってくる人などいないのだろう。
いずれにしても無事にスタンプをゲットできた。これで52城目となる。
Apple iPhone 13 Pro Max(広角カメラ 26mm相当), f1.5, 1/75sec, ISO125
ちょうどお昼時だったので役場の近くにあった三久本店という食堂に入ってみた。基本地元の人向けのお店らしい。そこで「浜ちゃんぽん」という魅惑の響きのするメニューがあったのでそれを食べてみた。海鮮がたくさん入ったちゃんぽんでとても美味しかった。
時刻は午後2時。時間がたっぷりあるなら江差まで行きたかったのだが、今回はそろそろ函館に戻らないといけない。江差方面は、いずれ「続・日本100名城スタンプ」を始めたらまた訪れなくてはならない場所だ。その時は自分の車でやってくるのも良いだろうと、さっそく「また行く」リストに加えておいた。
さて、北海道の日本100名城はまだこれで終わりではない。函館にラスボスが控えている(続く)