誰もいない雪の松前城を堪能した翌日、いよいよ北海道の日本100名城を代表する超有名な城跡を訪れた。それは函館の市街地にある「五稜郭」だ。
姿形はだいぶ異なるが、幕末に外国勢に対する防衛拠点として築城されたという意味では松前城と同じ経緯をたどっている。そしてここは実際に戦場となった。恐れていた外国との戦いではなく日本国内の内戦ではあったけれども。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(14mm), f4.0, 1/8000, ISO320
ということで、朝一で五稜郭タワーにやってきた。
なお函館市内の観光はバスや路面電車や徒歩、あるいはタクシーを使った方が自由が効くと思ったのだが、レンタカーを借りてしまっているので車で移動した。市街地にはあちこちにコインパーキングがあって、概ね上限500〜600円で利用できる。
なお、函館市内の道路はほぼ雪と氷で覆われており、ツルツルまたはガタガタな上、路肩には雪の壁が出来て車線が狭くなっており、都市部の雪道を知らない東京人には非常に運転が難しい難コースばかりだった。けど頑張った!
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(16mm), f8.0, 1/8000, ISO100
五稜郭タワーは特定のシーズンには混雑して大変な行列になるらしいのだが、土曜日とは言え真冬だしお昼前という時間帯のせいもあってか、チケット売り場もエレベーターも待ち時間ゼロだった。さすがに松前城のように無人ではなかったが。
エレベーターに乗って展望台まで登ると、そこはちょっとした資料館になっていて、五稜郭の歴史が詳しく説明されている。なるほどなるほど………。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(30mm), f8.0, 1/640, ISO800
土方歳三もいる。戊辰戦争を最後まで戦った新撰組の生き残り。榎本武揚らとともにここ五稜郭を本拠地として、この北海道の地に明治新政府から独立した別の国家を作ろうとして戦った中心人物の一人だ。明治2年の5月、激戦地となった一本木へ向けて五稜郭を出たのち、銃弾を受けてその生涯を閉じたとされている。
彼に明確な政治的思想があったかどうかはともかく、当初から一貫して反長州、反薩摩の立場をとり続け、最後は反政府軍の首謀者となったのに、どちらかと言えばヒーローとして扱われているところがまた幕末史の面白いところでもある。
個人的には箱館戦争における重要度で言うと、土方歳三よりも榎本武揚の方がよほど面白いと思うのだが、その後もうまくやって明治時代を生き延びた榎本よりも、戦いに敗れて殉職した土方の方がドラマチックだと言うことなのだろう。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(15mm), f8.0, 1/100, ISO100
五稜郭の模型。それにしても本当に面白く美しい形をしている。その姿は特に日本国内の城郭にあって唯一無二の存在である。
外国に対する防衛を目的として、その外国の技術と考え方を取り入れて大真面目にこれを建設したという経緯も大変興味深い。幕府は組織として崩壊の過程にあったとは言え、決して刀や相撲で黒船を追い払おうとした無能の集団ではなく、正しかったかどうかはともかく、開国と防衛を真面目に考え、両立を計ろうと必死だったのだ。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(14mm), f8.0, 1/500, ISO100
さて、勿体つけて引っ張ってきたが、見たかった景色はこれだし、五稜郭タワーへの滞在時間のほとんどはずっとこの景色を眺めていた。写真も山ほど撮ったがこれ以外に撮りようがない。
幸い日が差してきて雪の白さが際立った。そんな真っ白な雪に覆われた五稜郭は美しすぎる。堀もほとんどが凍結して雪が積もっているのが特に良い。
もちろん、春にはピンク色に染まり、夏には新緑に覆われ、秋には紅葉する景色もとても良いだろう。でもこの冬の姿こそ函館らしいのではないかと思う。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(16mm), f8.0, 1/500, ISO100
もちろん五稜郭タワーの展望台は360°ぐるっと見渡せる。これは函館の中心部方面で真ん中やや左奥の山はもう一つの函館展望スポットとして有名な函館山だ。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(30mm), f7.1, 1/60, ISO100
展望台にありがちな真下を見下ろせる恐怖スポットもあった。といっても展望台の高さは90mほどだから、ゾワゾワ感で言えば東京スカイツリーやあべのハルカスと比べるとそれほどでもない。
ちなみに靴は数年前に買ったアディダスのスノーブーツで、見た目のわりに防水性も防寒も雪面グリップもそこそこちゃんとしている。雪国の街歩きには十分ではないかと思う。あと靴下はスキー用のわりと高級な厚手でコンプレッション効果のあるやつを履いていて、それもとても良かったと思う。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-120mm f/4 S(24mm), f8.0, 1/640, ISO100
上から眺めるだけでなく、ちゃんと五稜郭の中も歩いて見てきた。
中心部には木造再建された箱館奉行所がある。五稜郭は城郭ではあるが、戦国時代式の大名家の居城とは違い、実態としては奉行所という行政機関だったわけだ。しかし奉行所として機能したのはわずか数年にすぎず、徳川幕府はその後間もなく崩壊し、榎本や土方らがやってきて箱館戦争の舞台となる。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(14mm), f6.3, 1/30, ISO2800
奉行所の中はもちろん見学することが出来る。こんな巨大な大広間があったり、応接用の客間があったりして、中はまるでお城の本丸御殿と変わらないどころか、かなり規模が大きい建物だ。
いろいろな展示物もあってじっくり見て回るとそれなりに時間がかかるが、この日はたっぷり時間があったのでゆっくり見て回った。廊下は冷えているのだが、各室内は床暖房がされていてとても暖かかった。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-120mm f/4 S(24mm), f8.0, 1/800, ISO100
奉行所を後にしてから五稜郭の中をぐるっと散策してきた。特に何があるわけでもなく、一面雪に埋もれているだけだったが、これもまた松前城と同じく静かでキリッとした空気とともにとてつもなく美しかった。
ここもまた桜の名所なわけだが、桜が満開になった景色を想像するとやはりまた訪れたくなる。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 24-120mm f/4 S(46mm), f8.0, 1/800, ISO100
名残惜しくて堀の外から五稜郭の方をまた眺めては写真を撮ってしまう。ほとんどが雪に覆われていて石垣がわずかしか見えない。上の方は土塁になっているのだっけ? 堀の水はどんな色をしているのだろうか?
榎本武揚や土方歳三たちはここで明治元年から2年にかけて冬を越しているはずで、彼らもこの景色を見たに違いない。美しいと思ったのか? クソ寒くてやってられん!と思ったのか? その両方だっただろうか。
Nikon Z 5, NIKKOR Z 14-30mm f/4 S(30mm), f4.0, 1/40, ISO100
ということで、五稜郭のスタンプも無事ゲットした。日本100名城の中でも最難関と言われる根室は4年前にすでに行ってるので、今回で北海道の3城はすべて制覇することができた。
開始からまもなく6年が経過するがトータルで53城。残りあと47城。先はまだ長い。
なお函館旅行に関するエントリーはもう少し続くことになる予定だ。