28年前に行ったはじめてのヨーロッパ旅行の写真を再発見する

2020-04-15

 最近は新しい写真がなかなか撮れなくなってしまったので、週末はひたすら過去写真を掘り返していた。そうこうしているうちにNASの中に保存された一番古い写真に行き当たった。

 それは1992年の3月に人生初めての海外旅行として出かけたヨーロッパ縦断の旅で撮ってきた写真だ。当時すでにベルリンの壁は崩れていたが、EUはまだ発足していない。バブルを経て世界中どこに行っても日本人旅行者が溢れていた時代とは言え、スマホなんて影も形もなく海外に行くハードルは今よりもずっと高かった。

 しかし、写っているのは今でもその姿がほとんど変わらないベタな観光地ばかりで、画質が悪い以外に特にこれといって面白い写真ではない。それにイタリアやフランスにはその後も繰り返し訪れたりもしている。でもやはり初めての海外旅行というのは、撮った本人にとってはとても特別な思い出だ。

 それに、今現在はこれらのヨーロッパ各地に物見遊山で旅行することはできなくなってしまった。一時的なこととは言え、まさか28年前よりも世界が遠くなる日が来るとは思ってもいなかった。

ローマのスペイン階段

 成田からヘルシンキを経由して最初に到着したのはイタリアのローマだった。言わずと知れたスペイン階段。いつの時代も映えるスポットで、それは28年前も変わらない。
 

バチカン美術館の回廊

 バチカン美術館の廊下。唖然とする美しさだった。
 

フィレンツェの街角

 ローマから鉄路で北に向かう。フィレンツェで途中下車して半日だけ観光した。この馬車は観光客向けだったのだろうか? いかにもイタリア人ぽいおじさんが普通にくつろいでいた。
 

ウフィツィ美術館
 ウフィツィ美術館もちゃんと行った。ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」など教科書で見たような絵がたくさんあった。あれは本物? レプリカ? ヴェッキオ宮殿前にはかの有名なミケランジェロの「ダヴィデ像」が立っていたが、28年前の時点ですでにレプリカに置き換えられていた。
 

ミラノのドゥオモ

 ミラノのドゥオモ。ここは昨年も行ってきたばかりだ。こんなコテコテの観光地に大人になった自分が仕事で何度も訪れることになるなんて、まったく想像もしていなかった。
 

ツェルマット

 イタリアからさらに鉄道に乗ってスイスに入った。ここはツェルマットからゴンドラを乗り継いで登ってきた展望台兼スキー場ゲレンデの最上部だ。標高は確か4,000m以上あったと思う。はしゃいでいたら息切れしてしまった。右手に見えている鋭い三角の山はマッターホルンだ。雲海と鋭い山々と氷河だらけの景色は圧巻だった。

 朝にゴンドラに乗って山頂にやってくるとお昼前、そこから滑って山を下ってツェルマットまで下るとちょうど夕方になる。スキーリゾートの一日はそれで終わる。なんと優雅なことだろう。
 

ホーエンシュヴァンガウ城

 スイスを抜けてドイツに入った。オーストリア国境近くにあるかの有名なノイシュバンシュタイン城… の横にあるホーエンシュヴァンガウ城も見てきた。こっちの方が何となく好きかも知れない。レゴで作れそうなお城だった。
 

ロマンチック街道沿いの建物の飾り窓

 本家「ロマンチック街道」は本当にロマンチックというか、何でもない街道沿いの建物もいちいち壁に装飾がされていて、バスから眺める車窓の風景がとても美しかった。だからわざわざフィルムを一枚消費してこんなカットも撮っていた。
 

パリ凱旋門の上からの景色

 その後ミュンヘンを経由して夜行列車に乗りパリへ。これは凱旋門の屋上から、シャンゼリゼとは反対方向を向いて撮った。パリにも新市街の高層ビル群がちゃんとあるのだ。真正面に見えているのは新凱旋門こと「グランダルシュ」だ。当時できたばかりでわりと有名だったと思う。

 ちなみにこの道路の左側にプジョーの本社がある。当時はまだプジョーになんの興味もなく、10年以上後にプジョー乗りとなって聖地巡礼を果たすことも知らない。
 

ロンドン

 そしてパリからは飛行機に乗ってロンドンへ渡った。この旅では何よりも楽しみにしていた街だ。当時はいろいろとイギリスにかぶれていたのだ。パリよりも何倍も楽しい!と思ったものだ。
 

ベーカー街221b

 ロンドンでどうしても行きたかったのがベーカー街221bにあるアパートの一室。ここはシャーロックホームズが住んでいた部屋だ。

 いや、シャーロックホームズは架空の人物であり、ベーカー街221bも本来は実在しない。が、実在するベーカー街の片隅にこうして再現されているミュージアムがあるのだ。これもまた聖地巡礼みたいなものだ。本を読むことの楽しさはシャーロックホームズシリーズで覚えたことを思い出す。
 

フィンエアの機窓

 と言うことで、約3週間かけてヨーロッパ5カ国を巡った。飛行機はフィンエアーを使ったが、当時は成田ーヘルシンキ間がDC−10、ヘルシンキから乗り継いだヨーロッパ域内はMD-80シリーズだった。想像もつかないだろうが、当時はまだ機内のほとんどの席で喫煙可能だったことを思い出す。

 ちなみにカメラはニコンF-801sで、レンズは純正の28-70mmを使っていた。この旅にはそれ1本だけ持っていった。フィルムはコダックのISO100のネガフィルムだ。全行程で36枚撮りを8本くらい撮った。コマ数にしてたったの300枚弱にすぎない。今なら半日で撮りきってしまうかも知れない。

 なおこれらの写真をデジタル化したのも20年前のことで、ニコンのLS2000というフィルムスキャナを使っていた。思い出の大切な写真だからといって、思い切り高解像度でスキャンしたつもりだったが、わずか80万画素くらいだし、画質もこの通りでピントや解像感、色合いやダイナミックレンジなんてお話にならない。

 しかし、プリントは今見てもとても美しい。やっぱり写真はプリントだな、と思う。ネガフィルムなのだから当たり前なのだけど。

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