フィルムの値段が高騰しているらしい。以前は用途に応じていろいろ選べた銘柄の選択肢はぐっと狭くなり、しかもどのフィルムも品薄で入手しづらいのだとか。現像の窓口も減ったし時間もかかるようになった。30年前当たり前だった1時間仕上げの現像&プリントサービスなんて都内にもほとんどない。
写真やカメラがデジタル化され、さらにはスマートフォンとインターネットの時代に移行してすでに10年以上が経過しており、フィルムが消えてゆく流れは仕方がないのだろう。
そんな中で以下のブログ記事を読んだ。
とある一人のフィルム(カメラ)ファンによる、フィルムを取り巻く現状に対する悲痛な思いが綴られている。現状と将来への見方としては過度に悲観的な方かもしれないが、先のことは誰にも分からない。フィルムを深く愛してるからこその焦燥感みたいなものが伝わってくる。
死蔵フィルム発掘
それはさておき、PENTAXがフィルムプロジェクトを始めると言いだした頃に、そういえばずっと前に買ったフィルムの在庫があったような……と思い出して冷蔵庫の奥を探ってみたら、やはり何本か出てきた。
いずれも有効期限が切れているが使えないと言うことはないだろう。色味がおかしくなってるならそれはそれで「味わい」として楽しむしかない。
120サイズのVelvia50など、目当てもなく適当に使うには勿体ないフィルムは有効活用してくれそうな人にあげたりしつつ、手元には36枚撮りのFUJICOLOR 100が2本と写ルンですが1台だけ残った。
特にフィルムで撮りたいものはなかったのだが、これ以上保管していても仕方がないのでこの際一気に使い切ってしまうことにした。
久しぶりにフィルムで撮った写真
デジタルだと1日に何百枚もシャッターを切ることはザラなのにフィルムだと36枚はなかなか終わらない。最近ようやく撮り終えて現像に出した。なおデジタルデータ化も現像時に同時にやってもらった。以前は自力でやったこともあったがそういう気力はもうない。
以下、適当に仕上がった写真からセレクトしたものを10枚ほど貼っておく。特に意図して撮った写真はほとんどなくて説明することはないのでコメントも最小限だ。
RICOH GR1
逆光の河津桜。このフレアはGR1ならではのものか? フィルムだからなのか?
写ルンです
青空と河津桜。被写体までの距離と構図がはまる(周辺部が背景に抜けている)と 写ルンです で撮った写真もとてもシャープに見える。記憶という印象の中の 写ルンです はもっとボヤボヤだったのだが。
RICOH GR1
黄色いコーンとハト(の影)。GR1とか 写ルンです みたいなカメラは正確なフレーミングが難しい。自然と詰め詰めの写真は撮らなくなる。
RICOH GR1
日没。フィルム時代は夕焼け空の見た目の色を出すのが大変だったことを思い出す。特にカラーネガとプリントでは。しかしこんなに露骨に周辺減光するものなんだっけ? デジタルでここまでやるとやり過ぎといわれそうだ。
RICOH GR1
写ルンです
冬の公園。こうして見るとGR1と 写ルンです のレンズ性能の差が分かる。そして確かに 写ルンです のほうがエモい。
写ルンです
エモいけど、意外にダイナミックレンジ(フィルム時代はラティチュードって言ってったっけ?)が広い。だから優しい感じでエモくなるのか?(やや循環気味)
PENTAX LX, Zeiss Distagon T* 2/35mm
一眼レフにツアイスレンズを組み合わせて撮ってみた。さすがに 写ルンです とは違うしGR1よりもさらにキレがでる。隅までパキッとしていて綺麗なのだが、現代的な目で見るとちょっと中途半端な気がする。ネガカラーに解像や画質を求めているわけじゃないんだよ、と(個人の意見)。
PENTAX LX, Zeiss Distagon T* 2/35mm
PENTAX LX, Zeiss Distagon T* 2/35mm
レンズが広角寄りの35mmだし、被写体までそこそこ距離があるからそんなに難しくはない条件なのだけど、ちゃんとピントを合わせられてエラい。LXのファインダーはK-1などより倍率が高いのだが、いろいろ古くて劣化しているせいか、暗くザラザラで色付きもひどい。なのでほとんど勘でピントリングを回していた。いや、ピントなんてこのくらいで良いんだよ、ということか?
PENTAX LX, Zeiss Distagon T* 2/35mm
再びド逆光の河津桜。そんなに古いレンズではないのだが、このフレアっぽい感じはやはりデジタルでは自然には得られないもののような気がする。
ということで久しぶりにフィルムカメラを使ってみた。比べてみないと本当のところはわからないが、全体的に期限切れであることの影響はほぼなかったと思う。
キャプションにも入れたとおり、使ったカメラは↑この3台(便宜上 写ルンです も1台に数えている)を使った。
GR1は上面の液晶表示がほとんど読み取れないし、LXはもともとジャンクに近い個体だったのであちこちガタが来ている。それでも電池を入れてフィルムを装填すればちゃんと写ることは分かった。LXは基本メカが多いから良いとして、GR1はフィルム給装やレンズの沈胴機構含めて、重要な部分の電気系もちゃんと生きている。
せっかくカメラがあるのだから10年ぶりくらいにリバーサルフィルムを試してみたいような気もするが、もはや気軽に手に入るものではない。
36枚撮り1本当たりベルビアが2500円、エクタクロームだと5000円…… プラス現像代とスキャンの手間またはコストがかかると考えると、1本使うのに7000円から1万円くらいかかる計算になるだろうか? もちろん趣味なのでコストですべてを判断するわけではないのだが、無視するというわけにもいかない。
冒頭で紹介したブログ記事のように、フィルムはこのあとゆっくりと消滅していくのか、どこかで需要と供給のバランスがとれて細々と続いていくのか、あるいはむしろデジタルカメラがスマートフォンに完全に駆逐されて、趣味のカメラと言えばフィルムだけが残る、という世界線だってあるかもしれない。
近い未来がどうなるかは分からないが、いずれにしても個人的には今回でフィルムで写真を撮るのは最後だな、と思っている。今後意図してフィルムが使いたくなることがないとは言えないが、そういう状況はちょっとピンと来ない。あったとしても 写ルンです をまた手にするかも?くらいの感じだろう。
でもGR1やLX、その他Hasselblad 500CMなど今手元にあるフィルムカメラは手放さず動態保存に努めるつもりだ。
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