PENTAX K-1 Mark IIIの登場は見果てぬ夢となるのだろうか?

2021-12-08

 もう2週間ほど前のことになるが、11月27日のPENTAX誕生102周年記念日に「PENTAX ミーティング オンライン 2021」および「J limited online event 2021 “On The Birthday”」が開催された。

 合計で4時間半にわたる長丁場で、いろいろと情報が多すぎて一つ一つをここで振り返ることはできない。幸い製品にかかわる話についてはダイジェストがCAPA CAMERA Webにまとめられているのでそちらを参照してほしい。


 約2年前の100周年記念イベント以降の出来事の振り返りから始まり、開発者の方々によるDFA21mmF2.4ED Limited DC WRで撮影した作品バトルは思ってた以上に面白かった。

 こんなほのぼのした感じで進んでいくのだろうなと油断していた中、何の前置きもなくいきなり「新しいカスタムイメージについて説明します…」と始まって驚かされた。

 佐々木啓太さんと塙真一さんによる「里び」についての対談も面白かった。このとき実は送った質問が採用されていて、お二人の回答が聞けてちょっと嬉しかった。

 しかしその後、K-3 Mark IIIのカスタム案や派生モデル企画案についての話題に移ると、さらに驚きの展開となる。

K-3 Mark III派生モデル企画案

 難産の末ようやく量産出荷にこぎつけたK-3 Mark IIIを素材にして、あらゆる方面への可能性を探るという積極的な姿勢が見られる。どこまで本気でどこまでがネタ(あるいはイベントを盛り上げるためのサービス?)なのかよく分からない。個人的に漆黒とガンメタは何となく気になる。出たら少し考えてしまうかも知れない。

 でも、もちろんその影でK-3 Mark IIIxなりK-3 Mark IVなりは進んでいるのかな?とちょっと思った。もちろんそんな情報がここで出てくるとは思っていないのだけど、K-3 Mark IIIはいったい何年現役でいることになるのだろう?と、手元のK-1 Mark IIを弄りながらふと考えてしまった。

フルサイズ後継機4案

 そう、問題はK-1/K-1 Mark IIの後継機だ。K-1登場から数えてすでに5年8ヶ月が経過している。その話題は参加者から事前に集めたアンケートを元にした「ここが知りたいペンタックス」のコーナーで触れられた。

次期フルサイズは?

 これもまた唐突に次期フルサイズ機の企画案について4つの案が示されたのだ。内容についてスライドの1枚も用意されていなかったが、翌日送られてきたアンケートに詳細が書かれていた。

 その内容を上記のCAPAの記事から引用してみると以下のようになる。
 

■A案
「新開発の高屈折率ガラスペンタプリズム、新開発の画像処理エンジン、50M以上のセンサーを搭載した高画素モデル」で、「PENTAX K-1 Mark II」のさらに上をいくモデル。
■B案
「PENTAX K-1 Mark IIをベースとした25Mセンサーモデル」ということで、軽快な操作性を実現するモデル。
■C案
「撮影者が心で感じ、考え、操作することで写真とともに撮影体験をより鮮明に残す、マニュアル露出・マニュアルフォーカス仕様の25Mセンサー小型軽量シンプル機能モデル」で、「PENTAX K-1 Mark II」のボディにこだわらない、マニュアル操作を楽しめるカメラ。
■D案
35mmフルサイズ版「PENTAX K-3 Mark III」と言えるような、速写性能、AF捕捉・追従性能に優れた25Mセンサーモデル。「K-3 Mark III」の操作性や機動性を生かしたフルサイズ機。

 勝手な想像だが本命はA案とD案なのだろうと思う。B案は今更すぎるしC案はあまりにもニッチすぎる。これらはラインナップの一部として出すならわかるが、フルサイズ後継機たるK-1 Mark IIIにはなりえない。

 え?LXデジタル?

 敢えて「ネタにマジレス」すると、夢はあるのかも知れないが支持しない。往年の名機を懐かしみ、その生まれ変わりを求める気持ちは分かるけれども、過去にあまり成功例を見たことがないし、未来につながるとも思えない。知らんけど。

 で、端的に言うと個人的にはD案を切に希望する。K-3 Mark IIIの画像処理エンジンとソフトウェア、AFやAEをそのまま流用したフルサイズ機+α。これで十分に夢があるではないか。ファインダーは色付きさえ修正してくれれば倍率は(とりあえずは)今のままで良いと思う。

 ただ、D案で引っかかるのはセンサーがなぜ25Mなのか?という点だ。もう決定なのだろうか? データが重くなろうとなんだろうと、デジタルカメラの大きな夢の一つは高画素化だと思う。センサーサイズと画素数は絶対的正義なのだから。

 K-3 Mark IIIのように12コマ/秒を求めたりはしない。軽快で高速で格好良くてバランスが良いK-3 Mark IIIに対し、K-1 Mark IIIは高画素番長でも良いではないか。60Mピクセルで描くPENTAXの絵を見せて欲しいと思っている。

K-1 Mark IIIは幻かもしれない

 と、ここまでグダグダ言っておいて何だが、個人的にはそもそもK-1 Mark IIIはもうないのではないか?と思っている。

 PENTAX STATEMENTはきっとK-3 Mark IIIのためものであって、あの詩的な美しい言葉の中に(少なくとも今のところは)K-1 Mark IIIは含まれていないのだろう。

 K-1を最後にKマウントの一眼レフは終わりなのではないか?といううっすらとした諦めは、実はK-1登場当時からずっと自分の中でくすぶっているものだ。結果的に「一眼レフ」はK-1では終わらなかったが、「フルサイズ一眼レフ」は本当に終わりなのかもしれない。

 そもそも4つものまったく異なる方向性の企画案が公に公表され、一般から広くアンケートを集めるという時点で、開発は白紙で何も進んでいないことを示している。よほどアクロバティックなマーケティングをしていないかぎり。
 
 ひとつ前向きに捉えられることがあるとすれば、曖昧な言葉でお茶を濁されるより「今は何も進んでいない」ことを態度で示してくれたことは、ガッカリしたけどある意味スッキリして良かったとも言える。

 でもつい最近 DFA21mmF2.4 Limited が出たばかりだし、1年前にはDFA★85mmF1.4も出たではないか。フルサイズを諦めようとするメーカーがやることとは思えない。常識的に考えて。

 確かにそれはそうなのだが… 「大は小を兼ねるから…」と言ったらあまりに悲観的すぎるだろうか? 既存のK-1/K-1 Mark IIユーザー向けで十分ペイするという目論見なのだろうか? いずれにしても来年のCP+あたりで更新されるであろうレンズロードマップに注目したい。

テストファームウェア リリース予定

 新カスタムイメージの「里び」について、K-1/K-1 Mark IIへの移植は「無理してなんとかやることにした」という感じだったことも気になっている。12月7日のファームウェアリリースとともに公開された以下の記事にこう書いてある。

(里びは)K-3 Mark III用として開発したものです。K-1、K-1 Mark II、KP、K-70は、開発環境が全く異なり、これらの機能に対応するのは大変困難であることが分かり、ファームウェアのアップデート対応は一度は断念しました。しかし、K-1に関しては、ずっと長く使い続けて頂きたいとの思いからファームウェアのアップデートを継続的に行っていくことをお伝えしていたにも関わらず、それがしばらくできていないことの問題提起があり、何とか里び(SATOBI)だけでも、K-1、K-1 Mark IIに対応できないかと多くの設計者で議論を行い対応するに至りました。

 K-1/K-1 Mark IIでも「里び」がサポートされるとについて、素直に「とてもありがたい」と感謝する気持ちの裏に「何だその言い草!」という気持ちも少しある。

 フルサイズ機はまだまだK-1 Mark IIでやっていきたいと話していたが、それが本気であるならば現役製品としての魅力を維持する努力をして欲しい。ファームウェアのサポートは必須だ。仕方なくやるのではなく当然のこととして。

 開発環境がどうとか、技術的リソース的にいろいろ難題があるのはわかるのだが、あえて厳しく言うならそういうことは「ユーザーには関係ないこと」だ。

 いろいろな事情でもはやK-1 Mark IIIを開発することが叶わないのならば、せめてK-1/K-1 Mark IIをできる限り長く使えるように、あるいはもう1台新品を買い直そうと思えるような、そういうサポートを真剣に考えて欲しいと思っている。

 その辺についてある時点で諦めと納得が自分の中でできれば、通算4台目のK-1シリーズボディとして、J limited 01の導入を真剣に考えたいと思っている。

※ 本エントリーの内容は私個人の感想です。異論が多々あることは十分に理解しており尊重いたします ※
 

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