iPhone 13 Pro Max の内蔵カメラについての感想

2022-01-19

 iPhone 13 Pro Maxに機種変更したのは昨年の9月末。それから約4ヶ月が経ち、今はもう普通に日常生活の中の道具として馴染んでいて、特に何か新しいIT系ガジェットであることを意識することはなくなった。しかしカメラ/写真クラスタとしては、やはり最新のiPhoneのカメラがどんなものなのかについては感想を書いておかなくてはなるまい。

 特にスマートフォンのカメラの進化はデジタルカメラ市場を破壊した直接的な原因のひとつであるため、つい「一眼と比べても遜色ない」とか下手をすると「一眼を凌駕する!」などと煽られて大げさに言われがちだが、そこは用途や求めるもの次第なので、その論に乗っかるのは得策ではないだろう。

iPhone 13 Pro Max のカメラ

 なので以下あくまでもiPhone 13 Pro Maxのカメラで撮ったいくつかの写真を貼りつつ、思ったことを書き連ねておく。
 

saruのスープApple iPhone 13 Pro Max, ワイドカメラ(26mm相当), f1.5, 1/100sec, ISO64

JAL A350-900 伊丹空港Apple iPhone 13 Pro Max, 望遠カメラ(77mm相当), f2.8, 1/122sec, ISO100

小諸城趾の紅葉Apple iPhone 13 Pro Max, ウルトラワイドカメラ(13mm相当), f1.8, 1/544sec, ISO32
 上から、標準(ワイド)カメラ、望遠カメラ、超広角(ウルトラワイド)カメラで撮った。iOS標準のカメラアプリを使い、デフォルト設定のままHEIC形式で撮影したもので、カメラロールに保存された写真をiOSまたはmacOSの写真アプリでちょこっと調整したりしつつ、JPEGに書き出したものだ。なお個人的好みにより3:2にトリミングしていると同時に、ブログにアップロードする都合上1920×1280に縮小している。

 いやいや普通に綺麗でしょこれ。その場の情景を記録しておくにはなんの問題も無いというか、これらの写真がポケットから取り出して何となく撮るだけで得られるんだから本当に良い時代になったものだ。

 画素数は相変わらず12Mピクセルに抑えられているものの、iPhone 13シリーズからはセンサーサイズが大きくなており(ワイドカメラで1/1.7インチ?)もはや「豆粒センサー」ではなくなっている。実際、無理にエッジを立てて線で画像を描いてる感は薄くなり、ちゃんと光と影で滑らかに面を写しているというかなんというか、そんな余裕すら感じられる。

 ただしこの印象は、光がそこそこあるところでデジタルズームを使わない場合限定だ。
 

saruのドルチェApple iPhone 13 Pro Max, ワイドカメラ(26mm相当), f1.5, 1/100sec, ISO125, ポートレートモード
 ポートレートモードも進化している。被写体の認識にLidarスキャナを使用しているらしく、背景や前景の分離がiPhone 11世代よりもずっと正確になった。グラスに刺さったストローも消えないし、木や花など細かいものを撮っても違和感が少なくなってきた。

 ただしポートレートモードに限らないのだが、撮影時のライブビュー画像と撮影結果の差が大きくなったことが気になる。例えば撮影時はストローが消えているのに撮影結果は消えていない、みたいなことが起こるので、ライブビューから仕上がりを想像するのが難しい場合がある。

 リアルタイム処理の限界とか電池のセーブとか色々あって、後処理が高度化したが故の現象なのだが、スマホカメラの進化はこういう方向性で良いんだっけ?と、ちょっとモヤッとしている。
 

PENTAX K-1 Mark II Silver EditionApple iPhone 13 Pro Max, 望遠カメラ(77mm相当), f2.8, 1/242sec, ISO25, ポートレートモード
 望遠カメラが77mm相当になったおかげで、ポートレートモードの本来の目的である人物撮影などではよりそれっぽい効果が得られるし、↑この写真のようにちょっとしたブツ撮りなんかにもとても良い。しかし一方でテーブルフォトなどの近距離はとても苦手になってしまった。

 エッジの精細感がどうとか、背景をぼかすとか小賢しいことを考えなければ、普通にデジタルズームしてしまえばフレーミングは自由自在なのだが、写真を趣味としてきた一人としてなかなか割り切れない。デジタルズームしない素の場合が綺麗なだけに余計に。

 なお、近接撮影について言えば超広角カメラにはAFが搭載されマクロ域に対応している。しかしやはり13mm相当の超広角の近接撮影というのは、いくらスマホといえども実用的ではない。パースが強すぎるし影の処理も難しすぎる。固定概念にとらわれすぎて使い方が間違ってるのかも知れないが。
 

東京国際フォーラムApple iPhone 13 Pro Max, ウルトラワイドカメラ(13mm相当), f1.8, 1/235sec, ISO32
 iPhone 11世代から比べても明確に変わったなと感じるのはHDR処理だ。善し悪しは別にしてかなり強力にHDR効果が得られるようになった。しかも設定でオフすることもできないし後処理でも解除できない。もうこれがiPhone 13 Pro Maxの撮って出し処理として固定されている。なんという割り切りと自信だろう。

 なんとなくネガティブな書き方してしまったが、個人的にはこのHDRの効き方は嫌いではない。記録用のカメラとしてシャドウ部をできるだけ再現するという方向は正解で正義なのだろうと納得している。

 動画も4K30pで何も考えずにHDRで撮影されたりして、後でMacで編集しようとしてむしろ扱いに困るほどだ。HDR処理に関してはスマートフォンがデジタルカメラを凌駕している部分だと実感する。デジタルカメラもこうなって欲しいとは全然思わないのだけど。
 

品川駅上空Apple iPhone 13 Pro Max, ワイドカメラ(26mm相当), f1.5, 1/25sec, ISO640
 この写真は悪天候の夕暮れに東京上空を羽田に向けてアプローチする機内から撮った。ちょうど品川駅から大崎駅に向けて山手線がグイッと曲がってる辺りが写ってる。感度はISO640でそれほど高感度ではないし、わりと盛大にブレているのだが、ぱっと見はなかなか綺麗でInstagramなら十分使える。

 ホワイトバランスも正解かどうかはさておき、これはこれで写真としてはアリかと思う。翼端の赤や東横インのネオンなど、ちゃんと色が出ているのも地味に良い。しかしやはり画像を一生懸命塗りつぶしてノイズ処理した感に溢れていて解像感はまったくない。いわゆる「溶けた」絵だ。

 もっと暗い夜景などを撮るとナイトモードが働き、数年前のスマホでは到底撮れなかったような一見綺麗な写真が撮れるのだが、一方でその写真もやっぱり盛大に「溶けている」ことに変わりはなく、フルサイズのデジタルカメラを三脚に載せて低感度でたっぷり露光したり、オリンパスのカメラで8秒チャレンジしたような夜景写真とは比べものにならない。
 

富士山と飛行機Apple iPhone 13 Pro Max, 望遠カメラ(283mm相当), f2.8, 1/167sec, ISO32
 思い切りズーム(約11倍)して撮ってみた富士山と飛行機。さすがに細部は潰れているというか、そもそも情報がないものをいろいろ辻褄合わせていることが手に取るように分かる。でもこれに「解像してない」などと文句を言うのはさすがに野暮すぎる。

 それよりこんな良い景色を目の前にして、なんのカメラ機材も持っていないという場合でも、iPhoneがあればこのくらいの写真は撮れるという体験と結果がなによりも重要なことだ。これぞスマートフォンカメラにしかない性能であり機能であり最大の利点だと思う。

 なお、ここまで極端なズームは滅多にしないとしても、少しでもデジタルズームを使うと突然線が極太になったりしてそれっぽさが如実に出るので、なるべく使いたくないのだが。
 

機上から富士山Apple iPhone 13 Pro Max, ワイドカメラ(26mm相当), f1.5, 1/3356sec, ISO50, RAW現像
夕景Apple iPhone 13 Pro Max, 望遠カメラ(77mm相当), f2.8, 1/127sec, ISO32, RAW現像
 この2枚はRAW(DNG形式)で記録し、Lightroom(非Classic版)に読み込んでで現像した。RAWデータにはそれなりに情報量がある。特にハイライト側の粘りがここまであるとは思わなかった。精細感もあって何もあんなにシャカリキに塗りつぶさなくても… と思えてくる。

 でもその感想も条件がいいところで撮った場合限定だ。高感度だったりちょっと難しい光源になると、途端にノイズだらけになったり色が薄くて転びまくったRAWデータに面食らい、どう現像したら良いのか途方に暮れてしまう。いかにiPhone 13 Pro Maxの画像処理が優秀なのかを実感する。

 だからRAWで撮ってLightroomを使えばすべて自分好みに仕上げられて、本当に「カメラとしてiPhoneを使う」が実現できるかも?と期待していたが、その夢は早々に打ち砕かれた。これは素人が扱うにはちょっと難しすぎるようだ。
 

沖縄海中道路からの眺めApple iPhone 13 Pro Max, ワイドカメラ(26mm相当), f1.5, 1/9434sec, ISO50

 ということで、褒めているのか貶しているのかわかりにくい微妙な感想を書き連ねてきたが、iPhone 13 Pro Maxのカメラに関する「※個人の感想」は以上だ。

 「所詮は…」という諦めと割り切りがある一方で、結局のところ期待が高いが故の感想なのかな?と自己分析している。実際に知らず知らずの間に「今日はiPhoneだけでいいや」と割り切れることが増えてきた自覚がある。便利なのだから仕方がない。

 GR IIIとK-1 Mark IIを比較することにあまり意味がないのと同じように、スマートフォンのカメラと大サイズセンサーを搭載したデジタルカメラを比較するのもほぼ意味がないことなのだ。だからiPhoneはiPhoneとしてその特長を生かして使えば良い。

 …というごく常識的で無難な落としどころでここは締めておきたいと思う。
 

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