東京でも秋の空気がだいぶ深まってきた10月下旬、予告されていた秋向けの新しいカスタムイーメージがようやくリリースされた。もう北日本や標高の高い地域では紅葉が進んでいるというのに、秋モノを市場に出すにはあまりにも遅すぎるだろうとかなんとか、そういう文句というか愚痴をいちいち書くのは止めておく。
さて、その新しいカスタムイメージの名前は「九秋」となった。この記事のタイトルには「紅葉を写すための……」と書いたが、これは必ずしも正しくはないかも知れない。と言うのも、この「九秋」というカスタムイメージは、紅葉向けというにはあまりにも渋い仕上がりなのだ。
PENTAX K-1 Mark IIのカスタムイメージ画面でみると↑こんな感じだ。キーはやや低め、コントラストはやや高め、グリーンとマゼンタが強調されているのは「雅」や「夏天」と似ているが、特徴的なのは逆にイエローとブルーが大幅に低く抑えられていることだ。
画像仕上げ設定はこの画面から読み取れることがすべてではないとは思うが、結果的に少し暗めで色の薄い写真が出来上がる。だから、紅葉を撮っても眩しいくらいのギラギラな映え写真にはならない。
と言うことで、さっそく試しに近所で撮ってみることにした。空気はすっかり秋だが、さすがにまだ景色は秋の入り口程度なので「九秋」の本領発揮とは行かないかも知れないが、それっぽいところを少し撮ってきた。カメラはPENTAX K-1 Mark IIで、レンズは先日smc版から買い換えたHD PENTAX-FA43mm F1.9 Limitedだ。
左が「九秋」(1920×1280の画像はこちら)で右は「鮮やか」(1920×1280の画像はこちら)で仕上げたもので、どちらもカメラ内現像したほぼそのままだ。
こうして見比べると明らかなように「九秋」はとても渋い発色となる。というか、語彙がなくて「渋い」としか言えない。銀杏の黄色やその他の木の緑、空の青や右下にうっかり写り込んだ赤いコーンも何もかも彩度が低い。これはすごい。
同じく左が「九秋」(1920×1280の画像はこちら)で右は「鮮やか」(1920×1280の画像はこちら)だ。
シャドウの締まり方は「鮮やか」同じような感じだが、何しろ空の色が薄くて、良く晴れた日の日中に撮ったのに太陽の存在感が薄く感じられるし、なんならすこし露出が足りないようにも見えてしまう。
もう一つサイドbyサイドで比較。やはり左が「九秋」(1920×1280の画像はこちら)で右は「鮮やか」(1920×1280の画像はこちら)だ。
全体的に茶色の被写体には特に嵌まるのではないかと思う。テカテカしすぎずにしっとり良い感じだ。赤や黄色といった少し鮮やか目の色があっても茶色に溶け込んでいく。何となく分かってきたぞ……
ここからは「九秋」の写真だけ普通に貼っていく。
PENTAX K-1 II SE, HD FA43mmF1.9 Limited, f2.0, 1/1000, ISO100
PENTAX K-1 II SE, HD FA43mmF1.9 Limited, f5.6, 1/60, ISO400
色の少ない、あるいは一面茶色い渋いシーンにはとてもよく嵌まる。けど、そういうことじゃないんだよな…… 多分。
PENTAX K-1 II SE, HD FA43mmF1.9 Limited, f11, 1/320, ISO100
逆光で撮るかどうかはともかく、この木が真っ赤に紅葉するとどうなるだろうか。どう写るだろうか? カスタムイメージの選択を「九秋」にしたままで耐えられるだろうか?
PENTAX K-1 II SE, HD FA43mmF1.9 Limited, f8.0, 1/400, ISO100
この渋さはもしかして街角スナップなどに良いのではないかと思った。特に、キラキラした都心部ではなくて寂れた下町にはちょうど合いそうだ。
PENTAX K-1 II SE, HD FA43mmF1.9 Limited, f5.6, 1/640, ISO100
PENTAX K-1 II SE, HD FA43mmF1.9 Limited, f2.8, 1/5000, ISO100
青空の色が特に特徴的ではないかと思う。この手の渋い発色といえば昨年追加された「里び」もそうなのだが、青空の写り方は全然違う。鮮やかではないのに濃く感じられるというか何というか。もしやこれは空を撮るのが嵌まるのでは?と思えてきた。
PENTAX K-1 II SE, HD FA43mmF1.9 Limited, f5.6, 1/60, ISO800
最後に綺麗な雲ひとつない夕暮れの空を撮ってみた。先週まで東京はずっと天気が悪かったが、今週になってようやく秋晴れの日が増えてきた。
ホワイトバランスをCTEにしてあることもあって、夕焼け空らしい色合いはしっかり出ている。空のグラデーションが深い紫色に沈んでいくあたりが「九秋」ぽい。ホワイトバランスなんて調整が難しかったフィルム時代、こんなふうな仕上がりになったことがあった気もする。
手持ちの「九秋」対応キットはこれだけだ。ボディーをK-3 Mark IIIにしても良いのだが多分その組み合わせでは使わないだろう。
そう言えば色のことばかり気にして撮っていたら画角のことはほとんど意識することがなかった。GR IIIxで慣れてきたこともあってか、43mmという画角に苦手意識が消えたと言うよりむしろ、なんだか好きになってきた気がする。そしてなにしろ小さくて軽い(※突っ込み可)のがいい。明るいし、あと10cm寄れると良いのだが(すべてのレンズに向かって同じことを言ってる気がする)。
Limitedレンズで夏空を写すための専用カスタムイメージ「夏天」を試してみる(2022年7月2日)