2回目の無償修理案件 Nikon Z 8のストラップ取り付け部に関する不具合

2023-08-25

 Nikon Z 8に関して、6月末に告知されたマウントに関する不具合に続き、8月上旬にもまた2回目の無償修理をともなう不具合が発表された。発売から半年も経たないうちに2回も無償修理を実施するなんて前代未聞の事態だ。

 Nikon Z 8のストラップ取り付け金具がすっぽ抜けるという問題は、7月頃からちらほらとネット上の口コミでくすぶっていたのだが、発生頻度の極めて少ないマイナーな現象だと思われていた。海外から発信された情報で前後の状況や背景がよくわからないし、それなりに数が出ていると思われる日本国内では、同様の報告は(その頃はまだ)見かけなかった。
 

 噂の通り本当に落としたりぶつけたりしていないのにストラップ吊り金具がポロッとはずれる……と言う状況は想像するだけでゾーッと背筋が寒くなる。その現象が自分のZ 8でも起こるかもしれない、と言われると心理的ダメージは大きい。

 だがこれは過去に例がない珍しい現象というわけではなく、他社の過去製品でもちらほらと起きていた。だが製品の問題とメーカーが認めて大規模な無償修理を行ったという例はなく、すべて個別対応で、基本的に「偶発的故障」として扱われてきたようだ。

 しかしNikon Z 8はそこそこ高額であり、販売数も多くて良くも悪くも注目される製品なので、こういったインパクトのある現象についてはSNSなどを中心に話題に上りやすいのだが、きっと他社の過去例と同じように、個別対応で処理されていくのだろう……と、思っていたら冒頭のようなことになった。

 つまりニコンはこの現象に関しては、製品の設計上または製造上の不具合であると認めて、問題のある出荷済みの製品については、すべて無償で修理を行うということになった。

Z 8の無償修理受付はニコンプラザ東京の予約は不要

 前回のマウントの問題時と同様に、製造番号を入力して調べたところ、当然のように「対象製品です」という結果が返ってきた。そうだよね、初期ロットだもんね。

 無償修理に出すには、指定の修理センターに直接送付する方法と、東京または大阪のニコンプラザにあるサービスカウンターに持ち込む方法があるが、東京在住者としてはやはり後者が便利だ。しかしニコンプラザのサービスカウンターは基本的に予約制になっているのだが、Z 8の無償修理受付に関しては専用窓口が設けられたらしく、予約がなくても受け付けてもらえるようになったらしい。

 このツイートを見た翌日の8月19日土曜日、念のため混雑を避けて午前中に新宿のニコンプラザへ行ってきた。Z 8を手渡して伝票を作ってもらうだけで、待ち時間もなくスムーズに受け付けてもらえた。

 修理完了後の受け取りは窓口でも出来るし、送ってもらうことも出来る。自分の場合は前回同様に後者を選んだ。いずれにしろ費用はかからない(細かいことを言えば新宿まで行く交通費はかかっているが)。

 Z 8が戻ってくるまでの出来事を時系列をまとめておくと以下のようになる。

  • 8月19日:ニコンプラザ東京のZ 8無償趣里専用窓口にて手渡す
  • 8月22日:普通郵便にて受付伝票が届く
  • 8月23日:SMSにて修理完了および返送した旨、荷物追跡番号が届く
  • 8月24日:ヤマト運輸より修理完了したZ 8が自宅に届く

 という感じだ。前回のマウント周りの修理よりも2日ほど余計にかかっているが、返送含めて一週間かからなかったのだから十分に早い対応だと思う。

どこが修理されたのか?

 さて、戻ってきたZ 8を眺めてみたが、どこをどうしたのかは外見からはまったく分からない。

Nikon Z8吊り金具右手側

Nikon Z8吊り金具左手側

 実際に外れたという報告が上がっていたのは右手側(グリップ側)ばかりだったが、無償修理対象は両側の金具ともだった。

 もしかしたら吊り金具自体が交換されているかと思えばどうもそんな感じはない。三角環は使用感があり、恐らくこれまで使ってきたそのままだと思われる。もちろん三角環を新品の吊り金具に付け替えた可能性もあるが、吊り金具自体は特に目立つ傷などもつけていなかったので分からない。

 トップカバー自体も特に新しくはなっていないと思われる。肩液晶に貼った保護フィルムがそのままになっているし(某ゲーム機メーカーのように貼り替えてくれた可能性もなくはないが)。また、トップカバーを固定してると思われるネジはドライバーを当てた跡があるので、外したのは間違いないと思われる。
 

2回目の無償修理を終えたNikon Z8

 ということで、恐らく外に見える部品はそのままで、吊り金具をトップカバーに固定しているピンに対策を施したか、対策品に交換したか、そんなところなのだろうと思う。いずれにしてもこれで安心してストラップに吊り下げられる。
 

 真の原因がどこにあってどんな対策をしたのかは分からない。そういう細かいことは公表されないしこれからもしないだろう。が、発生数が少ないからとうやむやにせず、ちゃんと無償修理対応をし、それもかなり素早く実施されたことは良かったと思う(対応せざるをえない大問題をはらんでいたのかもしれないが)。

 しかし、もちろんこんな問題はそもそも発生するるべきではないわけで、ニコンにおいては、よりいっそう設計や製造における品質の向上をはかってもらいたい。

 ……という優等生的なコメントでこのエントリーを締めても良いのだが、一言付け加えておきたいと思う。

ぶら下がるZ 8

 もちろん大前提としてストラップ金具は抜けてほしくないし、レンズマウントは確実にロックされるべきだ。こういう問題を繰り返すとブランドの信頼は落ちていくわけで、それはニコンにとって命取りとなるだろう。

 その上で、個人的にはこのZ 8の相次ぐ不具合問題が後に「呪い」となって、先々の製品開発において「無用な」あるいは「過度の」対策にコストをかけてしまうことで、より保守的で安全ばかりを重視するようなことにはなってほしくない。絶対にストラップ金具が壊れることがない代わりに、時代遅れのつまらない製品ばかりを生み出されても困ってしまうな…… という、うっすらした心配がある。

 そういったもろもろ含めて、カメラの選択肢がSとCの2つだけになったらよりつまらなくなってしまうので、ニコンにはなんとか上手いことやっていって欲しい。
 


 

2023-08-25|タグ: , ,
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