深川八幡祭りの御神輿連合渡御が6年ぶりに行われた

2023-08-15

 8月の旧盆といえばお祭りの季節だ。我が地元東京江東区の北西側、いわゆる「深川」と呼ばれる地域でも、お盆前後の週末に江戸三大祭りの一つに数えられる深川八幡(富岡八幡宮)のお祭りが行われる。特に3年おきに行われる例大祭では、氏子各町会の御神輿約50基あまりが、丸1日かけて深川地区を一周する御神輿連合渡御が行われる。

深川八幡の鳥居と入道雲Nikon Z 8, NIKKOR Z24-120mm f/4 S(33.5mm), f16, 1/125, ISO64
 深川八幡と呼んだり富岡八幡宮と呼んだりされる神社だが、鳥居の扁額には富ヶ岡八幡宮と書いてあったりする。いずれにしろこの神社は、江戸時代最初期に何もない海辺の小さな島だったこの地に創建され、その後埋め立てられて深川一帯の町家が整備されていく礎となった場所であり、まさにこの街の中心だ。

 そんな歴史ある神社の歴史あるお祭りだが、前回例大祭が行われたのが2017年。その年末には富岡八幡宮の利権を巡って凶悪な殺人事件が起きたことも忘れてはならない。さらに東京オリンピックのお祭りムードをさらに盛り上げるとしていた2020年の例大祭はコロナ禍のため開催できず、今年は実に6年ぶりの本祭り、御神輿連合渡御が開催されることとなった。
 

仲木場のお神酒所Nikon Z 8, NIKKOR Z24-120mm f/4 S(26.5mm), f8.0, 1/125, ISO64
 8月になると各町内会ごとにお神酒所が設営され、どこからともなくピカピカの御神輿が出てくる。寄付が集められ、神輿担ぎやお囃子の練習が行われ、オリジナルTシャツや半纏が販売され、街のあちこちに紙垂や提灯が飾りがつけられ、徐々にお祭り気分が高まってくる。

 これは地元に長く暮らす一人としての肌実感だが、この一帯の町内会というのはお祭り(御神輿)のために存在していると言っても過言ではない。地域の隅々に根を張るコミュニティ維持活動と御神輿は不可分一体の存在なのだ。

 だからこれは、大都会東京の洗練されたクールで演出された商業イベントとしての祭りではなく、全国各地のそれぞれ地域に根ざしたお祭りと同様に「東京の田舎町」である深川土着の風土と文化の表れとしての祭りでもある。
 

深川八幡境内をゆく御神輿Nikon Z 8, NIKKOR Z24-120mm f/4 S(70mm), f8.0, 1/125, ISO64

鳥居前で御神輿に水かけ 深濱のお囃子

 長々と微妙な熱量の前置きを書いたが、何が言いたいかというと、元来インドア派な自分であっても、深川八幡の本祭りが始まるとなると地元意識が刺激され、ソワソワとしてしまうということだ。

 そんな気分に誘われて8月12日土曜日のお昼過ぎに、猛暑の中祭りの本拠地である富岡八幡宮へと出かけてみた。本祭りのクライマックスは日曜日の御神輿連合渡御だが、それ以外にも週末前後を通して重要な行事が種々行われている。何をやってるかは調べずにただ様子を見に行っただけのつもりだったのだが、思いがけず境内に出入りする御神輿を見ることができた。
 

お祓いを受ける御神輿と担ぎ手Nikon Z 8, NIKKOR Z24-120mm f/4 S(120mm), f4.0, 1/500, ISO64
 どうやら順番にそれぞれの御神輿と担ぎ手達がお祓いを受けているようだ。だいたい4基ずつ出入りをしている。これは日曜の朝にやるものだと思っていたが、土曜日にやるパターンもあると始めて知った。 

 御神輿が鳥居をくぐり参道を出入りしていても特に規制はされず、担ぎ手達と一般見物客でもともとあまり広くない境内はごった返す。でも日曜日には混雑しすぎて鳥居をくぐるのもままならないので、土曜日にこの光景を見ることができて良かった。
 

深川八幡祭りの御神輿を見る人Nikon Z 8, NIKKOR Z24-120mm f/4 S(78mm), f4.0, 1/250, ISO64
 この日はここまでの写真の通りきれいに晴れ渡り、夏らしい猛暑の一日だった。翌日曜日は雨の予報が出ているが、とりあえず台風直撃は免れたので何とかなるだろう。もちろん晴れるに越したことはないのだが、過去には雨の中行われたことだって何度もあるしどうってことはない。
 

 ということで日曜日の朝。御神輿連合渡御の出発を知らせる花火が打ち上がる音を聞いて、慌てて朝ご飯を食べてカメラを持ち外に飛びだした。

水かけられながらやってくる御神輿行列Nikon Z 8, NIKKOR Z100-400mm f/4.5-5.6 VR S(400mm), f5.6, 1/500, ISO125
 天候は思ったよりも良くて、朝のうちは雲が多いながらも晴れ間が覗いていた。蒸し蒸しした暑さは相変わらずだ。予報では時間が遅くなるほど雨が降りやすくなりそうなので、午前中の早いうちに見に行くことにした。

 全53基の御神輿が門前仲町の深川八幡の前を早朝にスタートして、深川から一部隅田川の向こう、箱崎や新川など氏子地域全長約8kmのコースを半日かけて反時計回りにぐるっと一周する。コースは例年ほぼ同じで、永代橋や清洲橋といった重要な幹線も含めて、一帯の道路は長時間通行止めにして行われる大イベントだ。
 

御神輿へ消防団の放水Nikon Z 5, NIKKOR Z24-120mm f/4 S(24mm), f9.0, 1/320, ISO100
 深川八幡祭りの御神輿連合渡御は別名「水かけ祭り」とも言われる。お清めの意味だけでなく、担ぎ手のクールダウンのためもあって、御神輿に向かって沿道の見物人は盛大に水をかけることになっている。

 バケツとホース、水鉄砲などにはじまり、即席の巨大な水槽があらかじめ用意されていたりするし、地域の消防団が消火栓を使って盛大に放水をするのも名物だ。
 

千石一丁目の御神輿Nikon Z 8, NIKKOR Z100-400mm f/4.5-5.6 VR S(150mm), f5.6, 1/500, ISO110
 御神輿の担ぎ手だけでなく各町内会の総代や役員、錫杖や団扇、高張提灯や旗持ちなどなど、いろいろな人がぞろぞろと行列を成してやってくる。その隊列の編成は特に決まっていなくて各町によっていろいろだが、衣装や法被には決まり事があり、各町会ごとの個性を出しつつもちゃんと全体として統一感が保たれている。

 なお御神輿(とその担ぎ手)以外の先導の人たちには水をかけてはいけない、という暗黙の決まりがあって、沿道の住民達はもちろんそれをわかっている。水をかける対象はあくまでも御神輿であって、要求されない限りは担ぎ手を狙い撃ちしてはいけない(要求してくる人は少なくないのだが)。
 

御神輿担ぎ手の足並み 御神輿を差す手

水を浴びながら御神輿を差すNikon Z 8, NIKKOR Z100-400mm f/4.5-5.6 VR S(400mm), f5.6, 1/500, ISO125
 とにかく大量の水を浴びる御神輿は、蒸し暑い真夏のお祭りならではの光景で、あたりにはムッと水の匂いが立ちこめる。沿道で見物する人、水をかける人、そして写真を撮るひとたちも結局水を浴びてずぶ濡れになることに変わりはない。「踊らにゃ損」精神みたいなものだろうか。
 

御神輿への放水Nikon Z 8, NIKKOR Z24-120mm f/4 S(120mm), f8.0, 1/125, ISO64
 水飛沫の中を豪快に担がれる御神輿と担ぎ手達の姿は美しい。そして清々しくて気持ちよい。
 

Nikon Z 8, NIKKOR Z100-400mm f/4.5-5.6 VR S(340mm), f5.3, 1/400, ISO80

御神輿を先導する扇子 御神輿を先導する団扇

 結局この日は天候が不安定で、午前中からときおりゲリラ豪雨のような大雨が断続的に降ったりしていた。とは言えもともと濡れるのだから影響はないし(カメラには注意!)雨が降っているからといって水かけが止まることもない。

 清洲橋や永代橋、門前仲町を貫く永代通りなど、普段は交通量の多い幹線道路を行く御神輿の姿も良いが、午前中早い時間の前半部では、地元民の生活道路となっている細い裏路地をすり抜けて行くのも良い。自分が生まれ育った地元深川のお祭りって感じだ。
 

東京スカイツリーと御神輿Nikon Z 8, NIKKOR Z24-120mm f/4 S(120mm), f4.0, 1/250, ISO64
 東京スカイツリーと御神輿の取り合わせも欠かせない。
 

 最後に適当に撮った動画を貼っておく。Z 8だけではなくZ 5やiPhoneで撮ったものもごちゃ混ぜにしてショートクリップをつないでいっただけだが、だいたいこんな感じで雰囲気は出ていると思う。特に音がいい(音質がという意味ではなくお祭りの御神輿の空気を感じられるという意味で)。

 三社祭の浅草神輿のかけ声は「ソイヤッ!」だが、深川では「わっしょい!」と決まっている。担ぎ手はじめ祭りの参加者はみんなカタギというか住民の人々であり、変な治安の悪さはまったくない。そういう意味での素人っぽさがこの深川八幡祭りの良いところだ。

 富岡八幡宮は神社本庁から脱退して独立社となっており、そのいざこざは6年前の凄惨な事件を引き起こし、神社運営内部の醜聞を世にさらけ出したが、今後長い目で見れば結果的に独立は良かったのだと思っている。いつまでも純粋なる「地元の氏神様」でいてほしい。6年ぶりでそれなりに世代交代が進んでいる中、これだけのお祭りが出来るのだからきっと大丈夫だろうと思う。また3年後!

 いやいや、各町御神輿連合渡御は3年後だけど、お祭り自体は来年も再来年も行われるから、また来夏!としておこう。
 


 



 

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