Nikon Zfを買ってから1年が経過した。昨年冬のキャッシュバックキャンペーンが始まるのを待って発注したことを思い出す。
その時点ですでにZfは発売から1年以上が経過し、そんなに目新しいカメラではなくなっていたわけだが、個人的にカメラに関しては新しいもの好きで、Z8やGR IVなど最近思い当たるだけでもわりと発表即予約、発売日初日に手にすることが多い中、珍しくこのZfはどんな製品なのか十分に調べ尽くした上で熟慮に熟慮を重ねて購入に至った珍しいカメラである。
それでも手にしてみないと本当のところ分からないことは多い。さらに、この1年の間にメジャーバージョンアップを2回もして現在はVer 3.00となり、ある意味別物のカメラになっているとも言える。
そんなこんなで、ここではこの1年間にZfで撮った写真(主に他のエントリーで使ってこなかったもの)とともに、製品レビューというよりもお気持ちを中心に、現時点でのZfに対する感想を記録しておこうと思う。なお内容と写真は関係ない。
いきなり結論的なことを正直に書くと、Zfを1年間使ってきてこのカメラに対して感じているのは「まぁまぁだな……」となる。字面の通り手放しで気に入っているわけではない。
外観はとても良い。Zfc登場時に感じたうっすらとした違和感はすでに消え失せて、このレトロ風味な姿はとてもかわいいと思う。個人的には先日出たばかりのシルバーのほうが好きだ。1年前にシルバーが出ていたら間違いなくシルバーのほうを選んだと思うが、買い足したり買い換えたりする気はない。
この外観のために操作性のかなりの部分が犠牲になっている。ボタンが少ないとか、AFポイント移動用のジョイスティックがないとか、コマンドダイヤルと各物理ダイヤルとの整合性に問題があるとか、あるいはグリップがないとかとか。
なおグリップについてはあれこれ迷走して、外付けグリップを試したりしてみたが、結局裸で使うことで今のところは落ち着いている。持ち方含めて身体のほうが慣れてきたということだろう。やはりZfは素の状態が一番美しい。
Zfを使いこなす上でシャッターダイヤルは1/3STEPに、露出補正ダイヤルと感度ダイヤルはCポジションに設定し、それぞれの操作はコマンドダイヤルを使う、というのが一般的な作法とされているが、自分の場合露出補正ダイヤルと感度ダイヤルはダイヤルとして使い続けている。そのためむしろコマンドダイヤル(特に前側)が機能的に死んでいる状態だ。勿体ない気がするが仕方がない。
結果的にとても操作性は悪い状態なのだが、この外観を受け入れる限りはそうするべきだと思い込んで頑張っている。それ自体はこのカメラを使う「楽しさ」であって決して「欠点」ではないと思っている。
実際のところ使っていて一番イラッとするのは、感度ダイヤルと同軸上にある露出モードレバーが緩すぎることだ。通常Aモードしか使わないのだが、ふとしたときに勝手にMやSに変わってる場合がある。
このレバーの操作はもっと固くしておくべきだ。露出モードはそんなに頻繁に動かさないのだから。なんなら廃止してメニューに潜って変更するようにしたって良い。
他のダイヤルを真鍮製として操作感に徹底的にこだわったというニコンが、意図を持ってこのレバーをこんなにユルユルのダルダルに設定したとは思えない。単に全く気にしていないのだろう。もっと真面目に作って欲しい。
センサーはZ6以来定評のある24Mピクセルの裏面照射CMOSセンサーで、世間の定評通り出てくる絵はとても綺麗だと思うし、総合的にとてもバランスが良い、とは思う。特に静止画では。
でも今となってはもう古くさいなと思う瞬間がない訳ではない。電子シャッターや動画撮影時のローリング歪みの大きさもそうだし、光源が急激に変化したときの追従性もそうだ。あと高画素大好き派としてはやはり24Mピクセルは画素数が足りないなと思う。主にトリミング耐性の意味で。
EVFファインダーはZ8と一緒に使っていると「暗い」と感じる瞬間があるのも事実だが、全体的には精細感や自然な見え味も含めて十分すぎるくらい綺麗だと思う。この辺はさすがZシリーズだ。
一方のライブビューで使用するバリアングルモニターについてはようやく慣れてきた。チルトのほうが好みであることに変わりはないが、まぁ、バリアングルでも許すという程度には受け入れられるようになった。Ver 3.00でバリアングル展開時にアイセンサーをOFF出来るようになったのも大きい。出来るなら最初からやっておいておくれよ!
むしろバリアングルの欠点と言えば、使い勝手の面よりもヒンジ部の出っ張りの醜さだと思う。これではヘリテージデザインが台無しではないか。
今はもう余り触れられることも少ない気がするが、シャッターダイヤルの根本に備わるモノクロモードへの切り替えスイッチはとてもよい。メニューからピクチャーコントロールを選択するのと結果は変わらないが、ワンタッチで澄むという過程の違いは非常に大きい。
RAWで撮っているので現像時にどうとでもなるし、実際そういう雑なこと(現像時にモノクロ化)をすることも多いのだが、撮っているときに「ここはモノクロで撮るとどうだろう?」と考えることは撮影体験の質に大きな違いが生じる。そういう思考ができるのは、この単純な切り替えレバーがあればこそなのではないかと思っている。
モノクロモードは特にVer 3.00で追加になったフィルムグレインとの相性が良い。これもまたRAW現像でどうにでもなることだが、撮影時に想像しながら撮る感覚が得られるとさらにその楽しさが増す。フィルムグレインのON/OFFをもっと手軽にやりたくて、それこそ物理スイッチが欲しくなる。
Zfはそのレトロな外観と操作性から、マウントアダプターを使ってオールドレンズを付けて使うということがよく行われている。それでこそこのカメラの存在意義があると主張する人も多くいるだろう。
一時期Kマウントへのアダプターを使って遊んだことがあったが、余り長続きしなかった。ZfにはMF時の被写体認識と、Ver 2.00からはシャッターボタンの半押し拡大解除機能が出来るようになったので、MFレンズはとても扱いやすくなっていて、実際面白かったという印象はあるのだが。
長続きしなかったのは、使ってたレンズが今ひとつなのかもしれない。もっと古い本物のオールドレンズを使ってみるとまた違うのではないかと思っている。いずれまたその気になったときに挑戦してみよう。
ところで、ファームウェアがVer 2.00になってからZfはフレキシブルカラーピクチャーコントロールとかニコンイメージングクラウドなどなどに対応した。これはかなり大きな機能追加であり、Zfの商品性が一段と上がったと言えると思う。
自宅のWi-Fiを通して勝手にクラウドに撮影データが転送され、Lrのカタログと接続されるとか、さまざまなイメージングレシピをカメラにダウンロードして登録できるとか、今風だし使い道がいくらでもありそうな機能で少し期待したのだが、結局のところ使用していない。
理由はとても単純に「使いずらい」から。今どきアプリを介在せずにブラウザで操作するなんてあり得ない。PCならそれで良いのかもしれないが、それにしては余りにもクラウド側のアプリの出来が悪いし応答が遅い。ページを遷移するたびにすべて再ロード&再レンダリングするなんて!とてもついて行けない(ここ数ヶ月触ってないので今は改善されているかもしれない)。
カメラが直接クラウドにつながるのは理屈としては正しいのだろうが、そこにユーザーがどう関わるかという視点が抜けた机上の空論システム設計になっていると思う。
やはりクラウドサービスとはいえ、今の時代絶対にスマホやタブレット端末をハブとして間に介在させるべきだと思う。カメラはIoT端末とするには余りにも出来が悪く能力が足りない。そこはやはり素直にスマホに頼るべきではないのだろうか。
せっかくSnapBridgeというハブになるアプリを用意しているのに、ローカルあるいはオフラインでSnapBridgeと接続できるように設定していると、クラウドには一生つながらないのだ。そして逆もまた然り。家でクラウドに繋いだ設定のまま外に持ち出しても、ジオタグを付けたり出先でスマホに画像転送するためには、いちいちカメラ側のメニューで接続サービスを切り替えないといけないなんて、まったくどうかしている。何のためのBLE常時接続なのか?
だからクラウドには対応せず、フレキシブルカラーピクチャーコントロールのみサポートしたZ8は正しい。自分にとってはSnapBridgeによる撮影中のジオタグ記録と画像転送のほうがずっと重要だ。だからニコンイメージングクラウドはもはやないものと思うことにしている。
ということで、なんだか全体的にネガティブな書き方をしてしまった気がするが、これらはすべて愛しているが故の裏返しだと思って欲しい(誰に向かって?)。
ここであまり触れなかったAFとか手ぶれ補正とか高感度性能とか色味とかシャッターフィールとか、そういうカメラとしてより重要で基本的な部分は、特にコメントする気にならないほどしっくりときていて気に入っているし手に馴染んでいる。Z8を持ち出すほどの気力がないときにZfなら持ち出す気になることも多いし、同時に混ぜて使っても意外なくらいに違和感はない。操作感の上でも仕上がりの上でも。
そしてこれだけのカメラが20万円台で手に入るのだから、そのコスパを含めて考えると大変素晴らしいカメラだと言わざるを得ない。
そんな感じで点数を付けるとすると100点満点で92点くらいを付けられると思ってるが故に、残りの8点部分がどうしても気になってしまうのだ。惜しい、あと少しで完璧なカメラになるのに。そのためにあと5万出せるかと言われるとそこは考えさせて欲しい、となってしまうので、結局のところその程度の勝手な一ユーザーの戯れ言に過ぎないのだが。
※ ↑この内容はすべて個人の感想です
























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