デジタルカメラ市場が縮小する中、それでもレンズ交換式カメラの市場は確実にミラーレス機へと移行し、そこに各社生き残りをかけ戦略商品を続々と投入している。そんななか、我らがリコーイメージングは世間の流れに逆らい、独自規格マウントのQシリーズを終焉させることにしたようだ。
と言っても何も驚くべき話ではない。すでにこの方向性は何年も前から既定路線だった。今年に入って公式に「生産終了品」リストに移されたQ-S1が発売されたのは、なんと5年以上前の2014年のことなのだ。新ボディはおろか新レンズもその間発売されていない。事実上Qマウントが終了していたのは誰の目にも明らかだった。
なお、Qマウントのカメラは現行品から消えたが、Qマウントレンズは「まだ」そのまま表向き販売が続けられている。何かの間違いが起きてCP+でQマウントの新型機でもでてこない限り、レンズも早晩ディスコン扱いになるはずだ。本当の意味でのQマウント終焉はその時になる。
さて、Q-S1ディスコンのニュースを聞いて、現在手元に残っているQマウント製品を棚卸ししてみた。ボディはQ7とQ-S1。どちらもただのブラック仕様だ。レンズは01から08まで全てコンプリートしている。しかも01と02はシルバーとブラックがそれぞれ1本ずつある。そしてK-Qマウントアダプターも当然持っている。
Qマウントの特徴と言えばなんと言ってもその小ささだ。Q7/Q-S1の撮像素子は1/1.7インチしかない。今ではスマホでもこれより大きなセンサーを使っていたりする。初代のQとQ10に至っては1/2.3インチしかなかった。
このセンサーの小ささがQマウントをQマウントたらしめた最大の特徴であると同時に、ミラーレス全盛の時代に終了することとなった原因でもある。色んな意見はあるにせよ、やはりデジタルカメラにとってスマホと差別化するにあたってセンサーサイズはとても重要な一因なのだと思う(※個人の意見です)。
Q-S1はQ7の後継機として登場したが、実は中身がほとんど違わない。外装が変わっただけといって差し支えない。そういう意味ではQマウント機の進化はQ7発売の時点(2013年)ですでに止まっていたのだ。
現在では必須のスマホの連携機能が無いし、背面液晶は46万画素しかなくて明るさも足りないなど、やはり古くさは隠せない。でも、今改めて見るとなかなか意欲的で面白いカメラだったと思う。小さいながらもちゃんと写真を撮るための機能や操作性が考えられていた。コンパクト機とは明らかに違う。
さて、これらQマウントの機材はここ数年は実際に撮影に使うことはほとんどなく、動態保存をしていただけなのだが、棚卸ししたのを機に久々に使ってみることにした。以下はつい最近Q-S1で撮ってみた写真だ。特にコメントすることもないので、写真だけ貼っておく。
PENTAX Q-S1, 02 STANDARD ZOOM, f4.0, 1/400sec, ISO100, 0EV
PENTAX Q-S1, 06 TELEPHOTO ZOOM, f4.0, 1/8000sec, ISO200, 0EV
PENTAX Q-S1, 02 STANDARD ZOOM, f5.6, 1/250sec, ISO100, 0EV
PENTAX Q-S1, 02 STANDARD ZOOM, f4.5, 1/1000sec, ISO200, -0.3EV
PENTAX Q-S1, 06 TELEPHOTO ZOOM, f4.5, 1/320sec, ISO200, 0EV
撮影地は横浜の赤レンガ倉庫周辺だ。レンズは01から08まで全部持ち出したのだが、気がついてみると02 STANDARD ZOOMと06 TELEPHOTO ZOOMしか使わなかった。01と03と08が大好きなはずだったのだが。
7年も前の、しかも1/1.7インチセンサーのカメラでありながら、改めて撮ってみるととても良く写ることに驚く。純粋に写真の「質」という点では、最新のスマホにまだまだ勝ってると思う。それはやはりレンズがしっかり作られているが故なのではないかと思う。
そして撮っていてとても楽しい。レンズを取っ替え引っ替えするのも楽しい。しかも何もかもミニチュアサイズなので、レンズ8本持ち歩いても重くも何とも感じない。というか、レンズキャップやマウントキャップがすぐどこかに行ってしまってむしろ焦る。
PENTAX Q-S1, 01STANDARD PRIME, f1.9, 1/100sec, ISO200, 0EV, BC3
Qマウント機は小サイズセンサーであるが故に、スマホ同様にボケを生かした写真が苦手だ。そこで最近のスマホではマルチショットと画像処理を生かして無理矢理背景ボケ写真を作る機能があるわけだが、実はQマウント機にもまったく同様のアイディアでボケを作り出す機能が搭載されていることを思い出した。というかQの方がずっと早い段階でこのアイディアを実現していたわけだ。
↑この写真はその一例だ。ボケコントロールと呼ばれるこの機能を使うと、レンズのピント位置を動かしながら撮影と画像処理が行われ、主要被写体がボケの中に浮かび上がった写真が記録される。が、仕上がりが微妙であまり多用しようという気にはならなかったので、そのまま忘れていた機能だ。
現代のスマホとはプロセッサのパワーもソフトウェアの技術もかなり制限があるなかで、頑張ったと言うことは良く分かる。いずれにしろ、このボケコントロール機能の方向性は間違っていなかった。Qシリーズの開発がずっと続き、このボケコントロールもブラッシュアップさせていたらどうなっていただろうか?
ミラーレスと言えばマウントアダプター遊びをしなくては勿体ないという風潮があるが、Qマウントの場合ちょっと事情は異なる。何しろ他のフォーマットと比べセンサーサイズが違いすぎるので、ほとんどのレンズは超望遠になってしまうのだ。
だったら割り切って超望遠遊びをすれば良いのだ。Q-S1に300mmレンズを取り付けると、フルサイズ換算で約1400mm相当の超超望遠になる。他のマウントではなかなか体験し得ない世界だ。
PENTAX Q-S1, DA★300mm F4ED [IF] SDM, 約f8, 1/800sec, ISO200
こうなると撮るものと言えば月くらいしかない。ほぼトリミングしなくて済む程度の大きさで撮ることができる。ただ撮影するには、フレーミングとピント合わせと手ぶれとの戦いだ。手持ちで1400mmはかなり辛い。数打ってまぐれ当たりを狙うしかない。
元レンズの性能次第でビックリするくらい綺麗に写すことが出来る。DA★300mmF4なんかQ-S1の極少ピッチセンサーでもビクともしないくらいシャープだ。
この超超望遠遊びはQならではの世界であり楽しみ方だ。高倍率ズームを積んだコンパクト機はいまだ生きのこっているように、この方面にも生きのこる道はあったかも知れない。
ということで、久々にQマウントを使ってみた。このシリーズが終わってしまうのは本当に残念という思いを一層強くした。
Q-S1をベースにコツコツと進化させて、Wi-FiやBluetooth機能を搭載し、背面液晶を最新の高解像で明るいパネルにアップデートし、できればチルト機構くらい付け、センサーもスマホ向けに作られているような最新のものにして、SRも強化などなどしていたらどんなに良かっただろうか? などと思ってしまう。
ただ、そんな製品があったからと言って現在のデジカメ市場で生きのこっていけたとは思わない。このシリーズに無駄な投資をしなかったのは正しい判断なのだろう。
だいたい、こうしてQマウント使うのはおまえだって久しぶりなんだろ?普段は思い出しもせず、見向きもせず、SNSでもブログでもほとんど触れていなかったじゃないか! と言われると、ぐうの音も出ない。無くなると聞いて急に悲しいとか寂しいとか言い出すのは本当にずるい!と言われたらスミマセン、と謝ることしか出来ない。
多分Qマウントは人類には早すぎたか、あるいは登場が遅すぎたかのどちらかなのだろうと思う。