6本目のZマウントレンズNIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sを買った

2023-09-23

 Zマウントのレンズを買った。これで6本目となる。まだまだレンズシステムとしては足りてない感があって、次に手に入れるべきレンズについてはいろいろと候補はあったのだが、優先すべきは何か?を考えて今回は「マクロ撮影」が出来る「マイクロレンズ」(※注1)にした。

Nikon Z 8 + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

 Zマウントには50mmと105mmの2本のマイクロレンズが用意されている。標準域も兼ねて気軽に使える50mmも良い。しかしここはやはり中望遠マイクロレンズとして定番の105mmだろう。Sラインだしインナーフォーカスだし、大きいけど軽くて割りと安い。

外観チェック

 さっそく箱から取り出して、いつも通りどんなレンズなのか外観から確認していこう。

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S 同梱品

 本体と同梱品(紙類は除く)はこんな感じ。前後キャップにフード、Zレンズでおなじみの薄手の布ケース(衝撃保護と言うよりは傷防止向き)で、マイクロレンズだからといって特に変わったことはない。
 

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

 画質重視のSラインのレンズらしくガワはわりと大きい。長さ140mmで最大径は86mmほど。しかし手にした感じはとても軽い。実際のところ重量は630gとまぁまぁあるのだが、見た目とギャップがあるせいでそう感じるのかもしれない。

 鏡胴のほとんどをピントリングが占めているが、マウント側にはレンズファンクションボタンや小さなディスプレイ、コントロールリングとスイッチ類が並んでいる。なお先端部の細いローレット部分はいかにも回せそうだが回らない。ただのデザインだ。
 

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S前玉側 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S後玉側

 光学系は11群16枚構成でEDレンズが3枚、非球面レンズが1枚使われており、コーティングもナノクリスタルからアルネオ、フッ素コートまでフル装備だ。当然ながら等倍撮影に対応しており、最短撮影距離は撮像面から29cmとなる。

 なおインナーフォーカスで全長は変化しない。AF駆動はステッピングモーターで2群のフォーカシングユニットを動かすという複雑なことをやっているらしい。無音だし速度も思ったより速い。さらにレンズ内に手ぶれ補正が入っており、Z 8のボディ内手ぶれ補正との協調動作にも対応している。

 最大径が86mmあると先ほど書いたが、その割に前玉はそんなに大きくない。その証拠にフィルターネジ径はなんと62mmしかないのだ。レンズキャップがとても小さく見える。
 

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S スイッチ類

 スイッチ類はこんな感じだで、AF/MF切り替えとフォーカスリミッターが設定できる。リミッターは50cm以下の近距離限定かフルかの2択で、遠距離側のみに制限することは出来ない。また、VR入りのZレンズ全般にそうなのだが、手ぶれ補正のON/OFFはレンズ側では出来ないし、レンズ側だけOFFにするということも出来ない(そうする意味があるかどうかは別として、そういう思想で作られている)。
 

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S 距離表示 NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S 撮影倍率表示

 ディスプレイは普段消えているのだが、DISPボタンを押すと情報が表示されるというのは100-400mmなどと同じだ。ただし、表示内容はマイクロレンズ用にカスタマイズされていて、撮影倍率が表示できるようになっている。
 

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S 絞り値表示

 あと、このレンズの使用上で注意するべきなのは、絞り値が実効値で表示されるという点だ。なので、開放に設定してあっても撮影距離が短くなるにつれて実効絞り値は大きくなり、等倍では最終的にF4.5となる。ただし、例えば絞り優先やマニュアルでF8に設定したとすると、撮影距離にかかわらずF8が維持される。

 そうか、等倍まで繰り出すと露出量は1段以上変わるのか。外部の露出計などを使っていない限り特に何かをしないといけないということはないのだが、今まで意識したことなかったので、この絞り表示を見ているとちょっと不思議な感じがするし、面白い。
 

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S + Nikon Z 8

 Nikon Z 8に取り付けてフードもつけるとこうなる。フードはかなり深くて大きく望遠レンズなどと同様にロック付きのバヨネット式だ。大柄なZ 8のボディには見た目のバランス的にはよく似合っているし、操作感もとても良い。
 

NIKKORレンズ保有状況

 これでZマウントレンズは6本目。ズーム偏重かな?と思っていたが、意外に26mmや40mmも気に入ってよく使っていものの、Sラインの単焦点レンズは初めてだ。あとはF2を切るような明るいレンズが何か欲しいと思っているが、それは追々考えていくことにしよう。願わくば大きさと明るさと性能のバランスがとれたF1.4のシリーズが出てくると良いのだが、どうやらロードマップに残っている35mmとか135mmの単焦点レンズはすごいやつになるらしい(それはそれで楽しみ)。
 

少し撮ってみた

 さっそくZ 8に取り付けて試写してみたので何枚か貼っておく。等倍に近いようなマクロ撮影(※注1)をガンガンやりたいと言うよりは、マクロ撮影域(※注1)も使える中望遠レンズと思っているので、そういう感じで使ってみた。

都庁とJALのA350Nikon Z 8, NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S, f5.6, 1/2000, ISO400

都庁第二庁舎とベトナム航空のA350Nikon Z 8, NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S, f8.0, 1/2000, ISO500
 いきなり遠景を撮った。新宿の都庁と言えば羽田新ルートが運用され始めてからは飛行機写真の撮影ポイントにもなっている。狙っていたわけではないのだが、ちょうど新宿をうろついているときに上空を飛行機が飛び始めた。100mm前後の中望遠はちょうど良い画角ではないかと思い、良い位置を探りながら撮ってみた。

 Frightradar24を見ながら都庁に隠れる直前までは飛行機を肉眼で確認しつつ、機首が隙間に現れた瞬間から秒間20コマで連写した。このレンズの用途として普通はやらない使い方だが、やればできてしまう。もちろん遠景でも写りはまったく問題ない。
 

逆光と前ボケ彼岸花Nikon Z 8, NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S, f2.8, 1/500, ISO64
 季節ものの彼岸花。今年は酷暑が長引きすぎているせいか開花が全体的に遅れているっぽい。パラパラと咲いていた彼岸花にちょうど陽が差し込んでいて、きれいだけど明暗的にも色的にも難しくてエモい感じだった。

 中望遠のこのレンズにもぴったりな距離感だったが、ボケはどうだろうか? 前ボケはまぁまぁきれいな気がする。前玉が小さいしそういうレンズではないので、流石に端っこの方の玉ボケはかなりラグビーボール状になる。
 

彼岸花寄りNikon Z 8, NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S, f5.6, 1/500, ISO64
 ここで初めてマイクロレンズらしくぐっと寄ってみる。赤の発色もとてもきれいだし、彼岸花の花びら(なんだっけ?)の質感もギトギトすぎず柔らかすぎず良い感じだ。

 AFの自由さと性能の高さはこういう撮影でも「効率」に影響してくる。自分のZ 8では、AF-Cモード固定を前提に、シャッター半押しはエリアAF+被写体認識、AFボタン押すと3Dトラッキング、さらにマルチセレクターの中央押しでは全画面オートになるようにカスタマイズして、場面によってAFエリアと認識系のモードを使い分けられるようにしている。今のところこれが一番使いやすい。このカットを撮ったときはAFボタンを押して3Dトラッキングを使った。

 そしてマクロ撮影領域(※注1)でもAFスピードは十分で、身体が前後したり風に被写体が揺られたりする動きにも問題なく追従する。何かの拍子にピントが大きく抜けた場合はピントリングで少し戻してやる必要はあるが、そういう場合のMF/AFの切り替えもスムーズだ。ということで、使い心地は想像して期待していたとおりで、この領域でも普通に手持ちでもほとんど問題なく撮れてしまうのが素晴らしい。
 

新宿公園の池の亀Nikon Z 8, NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S, f2.8, 1/500, ISO64
 公園の池にいた亀。水面から首を出してじっとしているのがかわいい。中距離の撮影でもシャープさと抜けの良さが生きているし、明暗と質感の出方がとても良い。
 

葉っぱNikon Z 8, NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S, f3.3, 1/2000, ISO64
 紫陽花の葉っぱにぐいっと寄ってみた。マクロ撮影領域(※注1)だとボケはなだらかだし量もたっぷりできれいだ。

 f値が3.3となっているのは開放に対して露出係数分補正された結果だ。これでもかなり思い切って近寄ったつもりだが、等倍では補正後の開放f値は4.5となるはずなので、まだまだ近寄れる余裕があるということだ。マイクロレンズは楽しい。バンザイ!
 

サルスベリNikon Z 8, NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S, f8.0, 1/500, ISO200
 真夏の花というイメージがあるサルスベリ。長い期間楽しめているのは酷暑のせいだろうか? と思ったが、サルスベリは漢字で書くと「百日紅」であって、その字の通り「100日くらい咲いてる」という意味らしい。良く見ると実ができた先にさらに花が咲いている。だから長持ちしてるように見えるのか。

 これも風でユラユラと揺れているのだが、3Dトラッキングと連写にまかせて前ボケとの位置関係がちょうど良くなるカットを選んだ。一枚入魂とは正反対のこういう撮り方はずぼらで良くないのかもしれない。でもせっかくそういうことができるカメラがあるのだから頼らないと勿体ない、という言い訳もできる。
 

木場公園Nikon Z 8, NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S, f8.0, 1/250, ISO64
 最後にまた遠景。しかもそこそこ絞り込んでしまうと本当にフラットで真っ直ぐでカッチリしている。風景にもぴったりなはずだ。
 

Nikon Z 8 + NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

 ということで、まだ手にしてから1週間ほどしか経っていないのだが、思っていた以上に使いやすくて万能な中望遠レンズだと感じた。もちろんそう期待していたのだが、想像以上に手に馴染む感じで大変気に入っている。それはZ 8との相性という点も大きいと思う。大きさ重さや見た目だけではなく、AF周りを中心に使い心地という点で。

 もちろん人それぞれなのは前提として、Zマウント機をメインに使っていくなら、ぜひ持っておいて損はない1本ではないかと思う。

(※注1:「マクロ撮影」という用語はニコンが公式に使っている表現でありそれに従って使い分けている。ソースは以下のリンク先。



 

関連記事