レンズを買った。なんか最近デジタルカメラ市場の冷え込みに関する報道をたくさん見て気が滅入っていたのだが、そう言えば今年は自分自身が買い支えてないな、と言うことに気がついた。今年はレンズを1本(HD FA35mmF2)、カメラは1台(RICOH GR3)しか買っていない。
欲しいカメラは今のところないので、だったらレンズを買えば良いじゃない? という結論に至ったのだ(錯乱)。そうだ!レンズを買おう!
で、買ったレンズというのはこれだ。
「Kマウント最高のレンズは?」と問われると、いろいろ意見は分かれるだろうが、中でもきっとトップを争うに違いない一本がこの FA31mmF1.8AL Limited だ。
フィルム時代終焉期に発売されたので、いろいろな点で設計が古い。光学系はもちろん、クイックシフトフォーカスもないし、AF駆動もボディ内モーター駆動で、簡易防滴ですらない。
今このスペックのレンズを作ると、きっとサイズも重量も値段も倍以上になってしまうだろう。でも、HD FA35mmF2を手にしてつくづく感じたのだが、本当にそんな馬鹿でかいレンズが必要なのだろうか? レンズなんてこれくらいで十分なのではないか?と思う。
実はこのレンズを買うのはこれで3回目だ。1本目はおよそ10年前、K-7を使っていた時代に中古でブラックを衝動買いした。素晴らしい描写に惚れ惚れしたものだ。その後、カメラ本体をK-5 Limited Silverに乗り換えたのを機にシルバー仕様に買い換えた。それが8年前のこと。
そして今回またシルバーからブラックに色変更することにしたのだ。そう、つまり同じスペックのレンズを買うのはこれで3本目なのだ。そして2回も買い換えた主な理由は外装色をボディに合わせるためだったりする。
ちなみに製品自体は発売以来基本的にどこも変わっていない。ただ、初期は日本製だったものが途中でベトナムに生産移管されたり、企業名がPENTAXからHOYA、そしてRICOHへと変遷するにしたがってパッケージが変わったりした程度だ。
いや、実は大きな変更点がひとつだけある。と言うのは、FA31mmとFA77mmにだけ許されたフィンガーポイントの七宝焼きの玉の色が大きく変わっている。
これまでは濃いグリーンだったのだが、あるときからブルーに変わっていた。入手性の問題なのか、規制の問題なのか分からないが、七宝焼きの素材を変えたらしい。
新ロットであることは工業製品としてはいいことだが、FA Limitedはややクラシック扱いもされつつあるので、ペンタキシアン同志によるFA Limited愛のマウンティング合戦では負けてしまうかも知れない。「けっ! 青い七宝焼きなんて七宝焼きじゃねぇ!」って感じで。
さて、普通のブラックボディなK-1を手に入れてから3年半が過ぎ、Limitedレンズをブラック仕様に色変更するのも今さらという気はする。そもそも黒ボディにシルバーレンズの組み合わせは悪くない。むしろこっちの方が好きだという人も多いだろう。
それに本当のペンタキシアンなら、Limitedレンズはブラックもシルバーも両方揃えておくべき、という話もある。次に買うカメラがブラックである保証もない。
いやそれ分かるけど…
うん、やっぱりK-1改ブラックにシルバーのLimitedレンズの取り合わせは悪くない。というか格好イイ。
いやしかし!ブラック×ブラックはやっぱり最高にクールだ。やっぱりコレじゃないかと思う。
2015年のCP+で、後にK-1と呼ばれることになる、PENTAX初のフルサイズ デジタル一眼レフのモックアップが公開されたとき、そこに付いていたのは、このブラック仕様のFA31mmF1.8AL Limitedだった。
来るフルサイズ機ではFA31mmF1.8が、そのまま31mmの画角で使えるんだぜ!というその静かなるアピールは、心の奥底にとても響いたものだ。K-1がK-1であるための原点のようなレンズと言ってもいい。
さて、これで手元のFA Limitedシリーズはこうなった。31mmと43mmがブラック、77mmだけがシルバーだ。
むむ? 77mmはどうするのかって? そんなことは分からない。不思議と77mmはこのままシルバーで良いという気がしていて買い換え欲が湧かない。FA Limitedレンズの中では一番好きな1本なのに。いや、だからこそかも。
最後に、作例というのもおこがましいが、買い換えたばかりのブラック仕様のFA31mmF1.8ALで撮った写真を2枚だけ貼っておく。
PENTAX K-1改, FA 31mm F1.8AL Limited, f1.8, 1/640sec, ISO100, 0EV
まずは開放で近距離で撮った花。K-1改との組み合わせならAFもバシッと決まる。
PENTAX K-1改, FA 31mm F1.8AL Limited, f8.0, 1/200sec, ISO100, +0.7EV
f8.0まで絞った海と奇岩。設計が古いレンズだなんてことはどこにも感じられないくらいビシッとしている。
どちらもレンズ補正を入れているので歪みも周辺光量も補正済みだ。素でも歪みはそれほどでもないが周辺光量はそれなりに落ちる。クラシックらしい味を出すにはレンズ補正しない方が良いかもしれない。
いずれにしろ発色が良くコントラストも解像感もあって、ボケもきれいだ。描写の上での欠点はハイライトのフリンジと、特定の角度の入射光でフレアが出ることがある程度だ。
そして31mmという画角がとても良い。ラフに使っても28mmほど雑然とはしないが、35mmほど窮屈にはならない。GRの28mm単焦点縛りになれてくると、K-1改+FA31mmという組み合わせもなかなか万能な気がしてくる。大きさ重さはだいぶ違うのだが。
最近あまり使っていなかったFA Limitedシリーズだが、これを機にもっともっと使ってみなくてはと思い直した。新しいレンズがなかなか出なくてブツクサ言ってるけれども、FA LimitedあってこそのKマウントでありK-1/K-1IIなのだと、改めて思う。