動態保存中のPENTAX Q7/Q-S1と3本のズームレンズを久々に使ってみる

2021-10-08

 今年の8月末でQマウントは発売から満10年を迎えた。そんなQマウントについての個人的な思い出はすでに以下の記事に書いたので繰り返さない。

 Qマウント機の思い出に浸りつつ、いつもは防湿庫の奥にひっそりと佇んでいるQマウントの2台のボディと10本のレンズ(01と02を各2本持っているため)を取り出して動かして遊んでいたら、やはり写真を撮ってみなくては!と思い始めた。カメラなのだから当たり前だ。

 機能的にも性能的にも勝手に過去のカメラ扱いして「動態保存」などと言っていたが、本当にそうだろうか? 夢の超小型レンズ交換式カメラとして今でも十分通用するのではないだろうか?

東京都現代美術館の入り口PENTAX Q-S1, 02 STANDARD ZOOM(15mm), f5.6, 1/500sec, ISO100
 東京都現代美術館の入り口回廊はガラス張りで外からも見えて写真映えしそうなところだ。でもこの美術館の周囲は古い民家とタワーマンションがごちゃ混ぜに立ち並ぶ下町となっている。

 02 STANDARD ZOOMはこれと言って面白いレンズではないが標準ズームなんてそんなものだろう。近距離ではイマイチなのだが、普通にスナップなどに使うと恐ろしくきっちり写る。ウネウネした豆粒レンズの最新スマートフォンのカメラなんかに負けていない。
 

カルガモさんPENTAX Q-S1, 06 TELEPHOTO ZOOM(43.5mm), f2.8, 1/1000sec, ISO200
 角乗り用の池は普段はカルガモたちの休憩場所になっている。底がプールのように派手な色に塗られているので水も何となく変わった色になる。もうちょっとなんとかして鯉でも放つとモネの池になりそうなのだが。

 コントラストAFしかないQシリーズは動体撮影ができるカメラではない。が、のんびりしているカルガモくらいはどうにでもなる。ちょっとハイライトが滲み気味なところに一時代前の小型センサーの限界を感じるが、小型センサーである前に10年近くも前に設計されたカメラとは思えばむしろ悪くない。
 

木場公園の草原PENTAX Q-S1, 08 WIDE ZOOM(3.8mm), f5.6, 1/250sec, ISO100
 いつもの木場公園の広場にやってきた。芝とは言えない背の低い草が生えていて、強い日差しの中でもひんやりした空気を感じる。すぐ横にはドッグランがあるのだが、ワンコの目線からでも東京スカイツリーは見えているようだ。良かった!
 

木場公園大橋PENTAX Q-S1, 08 WIDE ZOOM(3.8mm), f8.0, 1/250sec, ISO100
 Qマウントの名物レンズと言えば色々意見はあると思うが、この08 WIDE ZOOMはいろんな意味ですごい。今でこそスマートフォンに超広角カメラが搭載されるようになったが、本気で作られたミニチュア超広角レンズとして今でも他にはない体験を得られる唯一無二の1本だと思う。

 Q-S1では多分このレンズの性能を生かし切れていないような気がする。日の目を見なかった新設計のQマウント機の影をこのレンズには感じる。
 
 ところで、08 WIDE ZOOMは青空にちょっとマゼンダが被る感じとかDFA15-30mmに似た発色をすることを再発見した。DFA15-30mmは他のDFAレンズとあまりにも発色が違いすぎて、チューニングをちゃんとしてないのではないかと思っていたのだが、もしかしたらPENTAX的には超広角はこうであるべき、と思って作ってるのかもしれない。DA★11-18mmF2.8はどうなのだろうか?
 

ダリアPENTAX Q7, 06 TELEPHOTO ZOOM(26.7mm), f2.8, 1/250sec, ISO100
 公園に咲いていたダリア。手間にボケているのはキバナコスモスだ。

 この06 TELEPHOTO ZOOMも名物レンズと言えるだろう。沈胴式ながら02 STANDARD ZOOMとほぼ同じ大きさと重さで、ズームリングはガクガクするし、前玉を覗いてもカム機構がむき出しで内面反射処理もちゃんとしてるようには見えない。お値段もとても安かった。トイレンズではないのだけど、限りなくトイレンズに寄せようとしたのではないかという雰囲気がある。

 そんなチープ感がプンプン漂っているのに、撮るとものすごく良く写る。クッキリはっきりでボケも綺麗。欠点と言えばセンサーサイズが小さいのに寄れないことくらいだ。

 今持っている06は何度も落としているし、だいぶくたびれているので、流通在庫がなくなる前に新品をもう1本確保しておこうかと思ってるくらいだ。
 

PENTAX Q7, 06 TELEPHOTO ZOOM(43mm), f2.8, 1/2000sec, ISO100
 東京23区内の住宅地だがなぜか水田がある。そろそろ収穫が近そうだ。

 画角が狭いというだけではなく、なんだかとても本格的な望遠の雰囲気がすると感じる。実際には15mm程度の焦点距離でありながら、量はともかくボケの質が良いのではないかと思う。
 

PENTAX Q7, 06 TELEPHOTO ZOOM(27.8mm), f4.0, 1/500sec, ISO100
 柵の隙間から顔を出すアオサギ。カワセミなども出現する自然豊かな親水公園の主と言えばサギ達かもしれない。妙な視線を感じるなと思って辺りを見回すと、こうしてサギがじっとしていたりする。人間なんか眼中にないかのようだ。

 02と08と06の3本のズームを持っていれば、18〜200mm相当をカバーすることができる。この3本を持ち出してもまったく嵩張らない。重さも気にならない。むしろレンズが小さすぎて普通のカメラバッグでは使いづらい。だからQが出た初期のころには専用のカメラバッグやレンズケースなども作られた。向井理がCMで装着していたQレンズ用インナーベストは販売されなかったのだが、あれも欲しいと思っていたユーザーは多かったと思う。
 

彼岸花PENTAX Q7, 06 TELEPHOTO ZOOM(34.2mm), f2.8, 1/250sec, ISO100
彼岸花PENTAX Q-S1, 08 WIDE ZOOM(3.8mm), f8.0, 1/250sec, ISO100
 もう季節はすっかり進んでしまったが、いまさら彼岸花の写真を貼っておく。1枚目は06 TELEPHOTO ZOOMで、2枚目は08 WIDE ZOOMで撮った。どちらも良い感じに撮れて自己満足している。01など標準域でも撮ったのだがイマイチだった。その辺は腕とセンスの問題だろう。

 いずれにせよこんな風に撮れるならK-3 Mark IIIやK-1 Mark IIで撮った写真に混ぜたとしても、ブログ程度なら一見ではバレなかったかも知れない、と素直に思った。
 

トンネルPENTAX Q-S1, 02 STANDARD ZOOM(15mm), f8.0, 1/25sec, ISO1600
 今さらになってしまったが、ここまで貼った写真はすべてRAWファイルをLightroomで現像し3:2にトリミングしている。レンズプロファイルはサポートされているがカメラプロファイルはないので、わりとガリガリといじってはいる。

 でもQシリーズと言えば、クイックダイヤルでスマートエフェクトをかけたJPEGで楽しむのが正しい使い方ではないか… と、思い出してハードモノクロームを使ってみた。ハイコントラストなモノクロは何となく意味ありげな良い写真が撮れた気分が楽しめる。

 これはただの歩行者&自転車用トンネルを撮っただけなのだけで、特に意味も意図もないのだけど。意味も意図も何もなくてもQだったらシャッターを切るのにためらいがない。
 

PENTAX Q-S1とQ7

 ということで、久しぶりにQマウントを使ってみたらとても楽しかった。本当はQと言えば01STANDARD PRIMEは外せないし、トイレンズシリーズも持ち出したりしたのだが、気がついたら上記した3本のズームばかり使っていた。

 Qシリーズに関しては、数年前の時点でかなり古くささを感じ、これはもう終わったカメラなんだなと思い込んでいた。しかし改めて今回使ってみてその認識が少し変わってきた。もしかしてこれまだいけるんじゃない? と。

 自分が成長したのか、あるいはただ綺麗にそつなく写るばかりの最近のカメラに飽きてきた反動なのか? とにかく撮影体験が唯一無二で面白い。このカメラでしか楽しめないことがあると思う。

 そうなるとつくづく後継機がないのが惜しい。わりと早い段階で値崩れして投げ売りされ、意図しないユーザーに激安福袋に入れられるなどしてばらまかれてしまったのはいろいろと不幸なことで、製品寿命を縮めたのではないかと思う。いずれにせよ、Qマウントの終焉は避けようがなかったことかも知れないのだが。

 せめてあと1世代新しい設計のボディが出ていたら… と本当に心から惜しんでいる。
 


 

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