HD PENTAX-D FA 21mmF2.4ED Limited DC WRで始める超広角単焦点の世界

2021-11-17

 前回からの続き。開封した日は幸いにも良く晴れた土曜日だったので、箱を開けて一通り動作確認をしたらさっそくK-1 Mark IIに取り付けて外に出かけてみた。

 「絶対買う」とか「今年一番の期待の新製品」とか強い言葉を使っておいてなんだが、実は「21mm単焦点で何が撮りたいのか?」と聞かれてもハッキリした答えはない。「何か今までにはない面白い写真が撮れそうな気がするから」というだけの話なのだ。だからどこへ行けば良いのか悩んでしまった…。

300PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f2.4, 1/2500sec, ISO100
 とりあえず若洲海浜公園にやってきた。このアスファルトの数字はもちろん距離表示だが何のためのものだろう? 以前はなかったような気がする。

 絞ってパンフォーカスにしても特に面白そうな景色ではないので、敢えて開放にして背景はうっすら中途半端にボカしてみる。広角域で微妙な距離のボケあり写真というのはセンサーサイズの力が発揮される領域なのでとても良い。特にピント面からなだらかにボケていくとともに光量が落ちていく感じが当たり前のようでいてなかなか味わい深い。
 

流木PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f2.4, 1/3200sec, ISO100
 岩場に流れ着いた流木。この日は風もなく波も穏やかで波打ち際まで出ても潮を被ったりはしないで済んだ。

 背後はもちろん東京ゲートブリッジで開放でも形が何となく分かる位だが、波のキラキラも含めてとても穏やかでボケ味が良いレンズだと思う。わりと強い逆光だが画面のクリアさとコントラスト感は現代のレンズらしさが出ている。でもそこに「Limitedらしさがない」みたいな文句を言う人はいないだろう。
 

海辺のサイクリングロードPENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f8.0, 1/200sec, ISO100
 若洲の南端。この寂れた何もない感じの東京湾の風景がとても好きだ。

 遠距離の風景なので今度は絞ってみた。いや、今どきのレンズは被写界深度の調整以外の目的で絞る意味はないと言われている。このレンズもきっとそうだろう。いずれにしろ手前の草むらから海上の船、遠く千葉の海岸線、さらには空に浮かぶ月までしっかり細部まで写っている。

 Lightroomではレンズプロファイルがまだサポートされていない。この写真は歪曲を+3だけ補正してあるが周辺光量は何も補正していない。なるほど、周辺光量の調整を目的に絞りを選ぶというやり方もアリなのだろう。
 

ススキと太陽PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f10, 1/400sec, ISO100
 若洲といえば大昔はススキしか生えていない荒れ地だらけだったのだが、今はもうあまり目にしなくなった。

 背景をボカしたいと思いつつも、一方でどうやっても画面に入ってくる太陽に光条(光芒?)を出したくて仕方なく絞ってみた。偶数絞りなので羽根の枚数分8本出ているが、先が鋭いウニ型ではない。いや、それってレンズで決まるのではなくて条件で変わるのだっけ?

 あと、絞ってるせいかもしれないが、真ん中のピントを置いたススキにはほとんどフリンジらしきものがないのも素晴らしい。これにもまた「Limitedらしくない!」と怒る人もいないだろう。そしてやはりゴーストがない(ほんのちょっと虹色のやつが出ているが)しフレアもない。

 ただ背後の玉ボケに強い年輪が出ているが、縁取りがあまり強くないので拡大しなければそんなに気にならないだろう。でも絞ったときの球ボケには注意したい。
 

東京ゲートブリッジと日没と釣り人PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f11, 1/125sec, ISO100
 若洲といえば東京ゲートブリッジのビューポイントだ。夕暮れの岩場には釣り人達とともにカメラを持つ人達が集まってくる。

 「はじける白波」も「水平線の自然なボケ」とも全然違うけれども、そのフレーズを思わず思い出した。この夕陽と海と岩場のコントラスト感がとても良い。画面全体ではコントラストがしっかりあって階調豊かなのに、細部のエッジは立ちすぎておらずキリキリした感じがない。とても穏やかな写りだ。

 隅っこの方に太陽を置いたので、さすがに反対側にうっすら大きなゴースト的なものが出ているのだが、シャドウ部にあってもこの程度だ。逆光耐性の強さは素晴らしい。もう少しそこで味わいを演出しても良いのではないかと思えてくるほどだ。
 

マジックアワーの東京ゲートブリッジPENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f8.0, 1/30sec, ISO100
 日も沈んで空はブルーに染まってきた。富士山もクッキリ裾野のまで見えているし、そこに羽田に向かう飛行機のシルエットが掠めて行く。そして空の色を映した橋の構造物も美しい。今この瞬間に自分の防湿庫があったなら、きっと望遠レンズを取り出そうとするだろう。

 しかしこの日は21mmしか持ってこなかった。だから望遠のイメージは全て頭からかき消して、21mmでガーッと全部写してしまう。引くことも寄ることもできない相手にはそれしかできないから。でもそれこそがまた単焦点レンズの、さらには超広角の楽しさのような気がする。
 

木場公園の花壇PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f11, 1/125sec, ISO100
 そして翌日、相変わらず良い天気なので別の公園にやってきた。もうあまりくどくど語ることもなくなってきた。なんだか目が慣れてきて21mmくらいは普通の画角のような気がしてくる。これって標準レンズとしてK-1 Mark IIに付けっぱなしで普通に使えるんじゃない? と。

 そしてやはり遠景だとつい絞ってしまう。手前の草が中途半端にボケないようにと思ってのことだが、深度の感覚がまだ分かっていない。その辺は今後探っていこうと思う。
 

大道芸PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f8.0, 1/100sec, ISO100
 大道芸のクライマックス。ライブビューで腕を高く上げてハイアングルから撮った。

 21mmは普通に使えばそれほどパースが強調されずとても使いやすい。人垣の輪の中に入っている状態で全体が写る距離感、遠近感。たまたまそういう位置関係だったわけだが、ここでもし24mmしか持っていなかったら、プレビューを見てシャッターを押すのを諦めていただろう。15mmだったらどうするか悩んだだろう。でも思った通り21mmならぴったりはまった感が嬉しい。もう自分は21mmの目を持っているのではないかと錯覚する。
 

ダリアPENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f5.6, 1/320sec, ISO100

菊PENTAX K-1 II SE, HD DFA21mmF2.4ED Limited DC WR, f2.4, 1/4000sec, ISO100
 このレンズは寄れることも大きな特徴の一つだ。最短撮影距離は0.18mとなっているからわりとレンズ前スレスレまでいけるはずだ。ということで試してみた。

 どちらもギリギリまで寄ったわけではない。超広角の近接撮影といえばiPhone 13 Pro Maxを使い始めて何となく触れるようになった世界だが、なるほどこうなるわけか。超広角の近接撮影は被写体の形が歪みやすいが迫力は出る。被写界深度の適度な深さも穏やかで良いし、影にさえ気をつければわりと面白いと思えてきた。

 そしてやっぱりボケが綺麗だ。後ボケだけでなく前ボケも。
 

K-1 Mark II Silver Edition と DFA21mmF2.4Limited

 ということで発売直後の週末に撮ってみた写真はだいたいこんな感じだ。

 結局いまだにこれで何を撮るのか?撮りたいのか?はハッキリしないのだが、それでもこれは良いレンズだ。出て良かった、買って良かった、という思いを強くしている。

 超広角域の特殊な画角でありながら尖った感じがなく、自然に思った通りにふんわりキリリと写る。解像もボケも穏やかだ。それでは超広角らしさがなくて物足りないと感じる人もいるかも知れないが、21mmなんて何に使ったらいいか分からないという人にはとっつきやすいはずだ。

 21mmという焦点距離はもしかしたらAPS-Cで使うことも念頭に置いて選ばれた焦点距離なのではないか?とうっすら思っていたが、多分そんなことはない。これはきっとK-1/K-1 Mark II専用に造られたレンズなのだと思う。そうに違いない。そう思うと少し安心してくる。なぜなら、自分はやはりK-1 Mark IIが一番好きだから。

 もしかしたらしばらくはK-1 Mark IIにこれ1本で良いかも?と一瞬思いそうになったが、やはり21mmだけというのは相当な割り切りが必要で常用は難しい。少なくともこれに標準域の1本を組み合わせたい。50mmでも43mmでも良いのだがちょっと使い勝手と大きさが違いすぎるのが気になる。いっそのことこれにDFA28-105mmを組み合わせるのがベストだろうか… などなどと色々考えてしまう。

 だからこのDFA Limitedが今後もシリーズ化されることを願っている。もちろんK-1 Mark IIIも是非お願いしたい。
 


 

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