東京下町の住宅街で子育て中のカワセミを見に行く

2022-05-10

 前回エントリーの末尾に書いた通り、今度は最近ご無沙汰しているカワセミの様子を見に行ってきた。

 春になって親水公園の定番スポットにはあまり現れなくなったカワセミたちは、今は営巣地で子育てに励んでいるらしい。とは言え遠くにいってしまったわけではなく、そのカワセミの営巣地というのは親水公園からほど近い(徒歩または自転車圏内の)別のビオトープにある。

 このビオトープがカワセミの営巣地となっていることはわりと有名で公式に公開されている情報でもあり、隠したりごまかしたりする必要は全くないのだが、逆に言うと調べれば簡単に情報は手に入るはずなので、敢えて正確な名前や場所はここでは紹介しない。

カワセミの巣Apple iPhone 13 Pro Max, 望遠カメラ(77mm相当), f2.8, 1/99sec, ISO80
 カワセミの巣はこんな感じだ。鳥というと木の上に小枝などを集めて巣を作るものかと思っていたらなんと土に穴を掘っているとは! という程度にまだまだ初心者なので、カワセミの巣を見たのももちろん初めてだ。

 この池も土手も周辺の森も人の手で整備されたものだが、巣穴はカワセミたちが自分で掘ったものだ。複数開いてるのは古いものかもしれないし、複数のつがいがいるのかも知れない。あるいは人手でわざとつくったダミーもあるのかも?
 

餌を運んできたカワセミの雄PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 1/1000sec, ISO3200
 小雨模様の日で到着からしばらくは何も動きが見られず、諦めて帰って行ってしまう同業者(カメラを持った人)もいたが、何か起こるはずと信じてじっと待つこと1時間半。雨があがったところでどこからともなく餌を咥えた雄のカワセミが巣の前に現れた。ほらキタ!

 止まり木にしばらく佇んでいる。水に飛び込んで捕まえた小魚をその後ゆっくりとその場で飲み込む姿は何度も見たことあるが、このカワセミは小魚を咥えたまま飛んできて一向に自分で食べようとする素振りは見せない。
 

巣穴へ餌を運んでいくカワセミの後ろ姿PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 1/1000sec, ISO4000
 そしてそのまま巣穴へ飛び込んでいった。なるほど、あそこが今年使用中の巣穴なのか。運んできた餌は中にいる雛たちに与えているのだろう。外からは雛たちの様子は全く見えない。
 

餌を咥えたカワセミの雌PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 1/640sec, ISO3200
 先ほどの雄と入れ替わりにこんどは雌がやはり餌を咥えたまま戻ってきた。捕まえた魚はハゼか何かのように見える。巣穴の中にいると思われる雛もこのくらいの魚は飲み込めるのだろうか? すでにその程度には育っているのだろうか?
 

巣穴から飛び出てくるカワセミPENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 1/1600sec, ISO6400
 そして巣穴に入ってしばらくするとこうして手ぶらでまた飛びだしていく。これを雄も雌も交互にせっせと繰り返して子育てをしている。なるほど、だからゆっくりと親水公園で遊んでる暇はないと言うことなのだろう。

 なお漁場は巣の目の前にある池ではなく、近くのもっと大きな川(と言っても運河)まで出ているらしい。その様子はまたチャンスがあれば見に行ってみたい。まだダイブの様子をちゃんと撮れたことがないので……
 

水浴び後毛繕いをする雄のカワセミPENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 1/1000sec, ISO2000
 巣の周辺に気を取られていたのだが、池の隅っこにある木造のテラス(立ち入り禁止エリア内なので人はいない)に雄が佇んでいるのを偶然に見つけた。

 と思ったら目の前の池に飛び込んだ。なんだやっぱりここで漁をすることもあるのか!と思ったものの、魚は咥えていなかった。その後は羽をばたつかせたり毛を逆立てたりして、念入りに毛繕いのようなことをしていた。

 調べてみるとカワセミの生態として、身体の清潔を保つためにときどき水浴びをする習性があるらしい。特に巣穴の中は不衛生で繁殖期は身体の汚れが気になるらしい。なのでこの時見た行動は、単に漁に失敗しただけではなく、たぶんそれだったのではないかと思う。
 

カワセミの巣にゴイサギ現るApple iPhone 13 Pro Max, 望遠カメラ(77mm相当), f2.8, 1/99sec, ISO64
 さて、日付が変わって翌日もまた見に行ってみた。するとカワセミの巣の周辺ではこんなことになっていた。一見すると1枚目と同じに見えるかも知れないが……

 今回は左の止まり木にゴイサギが佇んでいて、カワセミは右の低い位置にある止まり木にいる。このゴイサギもここには写っていないアオサギに追い立てられてこの止まり木まで逃げてきたのだが、どうやら居心地が良くなってしまったらしく、片足立ちですっかり居座りモードに入っている。

 カワセミの親は餌を咥えて戻ってくると、まずはこの左の止まり木に止まって一休みしてから巣穴に飛び込んでいくのだが、ゴイサギが気になって左の止まり木が使えなくなってしまったようだ。
 

カワセミのつがいPENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 1/800sec, ISO400
 餌を咥えた雌が仕方なく右の止まり木に戻ってきたが、ここからでは位置と角度的に巣穴に入るのが難しいのか、あるいはゴイサギの圧が強すぎて近寄れないのか? 何度か飛びだしてはアプローチを試みたが、失敗してまたここに戻ってきてしまう。

 そのうち雄も戻ってきて夫婦でどうするか相談しているようだった。ゴイサギを追い払うためなのか、一度オスが左の止まり木に近づいてみたりしたが、ゴイサギはまったくカワセミなんか気にしていないようで動じない。

 実際ゴイサギは邪魔してるつもりはないのだろう。止まり木も使いたいなら使えば良いのに、という感じだがやはりカワセミとしてはそうはいかないらしい。
 

餌を飲み込む直前のカワセミPENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 1/800sec, ISO400
 最終的に雌は雛のために運んできたハゼのような小魚を自分で飲み込んでしまった。時間が経って魚が乾いてしまうと、雛はもちろん自分自身も餌として飲み込むことが出来なくなり無駄になるので、雛にあげるのは諦めて自分で食べてしまうことにしたようだ。

 しばらく嘴で器用に魚をくるくる回して、スルッと頭から飲み込んだ。そう言えば、雛のために運んできた魚はみんな頭を嘴の先側にしていた。雛が飲み込む方向に合わせていたということか!
 

背中を向けるカワセミの雄PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 1/800sec, ISO2000

お腹を向けるカワセミの雄PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 1/500sec, ISO2000
 さてその間、餌を持っていない雄の方も餌をとりに出かけることなく、ビオトープ内の森を行ったり来たりしてゴイサギの動向を注視していた。ときおり鳴いてもいたようだ。雌と何か会話していたのか、あるいは雛に何かを知らせていたのか?
 

カワセミPENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(150mm), f4.5, 1/200sec, ISO160
 ということで、残念ながらゴイサギが去ってくれるところまで見届けることはできず、その後どうなったか分からないのだが、巣(雛)に危害を加える相手ではないので(だよね?)、きっとこの問題は時間が解決してくれたことだろう。

 ここに限らないがカワセミの雛たちにとって最大の天敵はヘビだ。この場所でも過去に何度も巣穴がヘビに襲われて繁殖に失敗しており、ここに巣が作られないことも何年か続いたそうだ。営巣場所の土手に少し工夫してヘビが入りにくいようにはしているそうだが、ヘビが住み着くのも含めてビオトープと言うことで敢えて駆除のようなことはしていないそうだ。もちろんそうあるべきなのだろう。

 さて今年はどうなるのだろうか? すでにあのサイズの魚を飲み込める程度に育った雛がいるとすると、あと2週間もしないうちに巣立ちするのかもしれない。是非そうなって欲しい。
 


 

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