2022年11月8日の皆既月食と天王星食を撮影した

2022-11-10

 数日前のことになるが、2022年11月8日は日本の多くの地域で皆既月食が見られた(天候要因は不明なので除く)。およそ1年前にも「ほぼ皆既月食」があって、東京では雲の隙間をついてギリギリ見られたが、今回はきれいに晴れて絶好の月食日和となった。

 皆既月食はそれほど珍しいことではなくて数年に1回くらい発生している。が、今回は「442年ぶりの天体ショー!」と言われていた。何が442年ぶりかと言えば、皆既月食中に惑星食が同時に発生するらしい。今回月に隠れるのは天王星だそうだ。

 天王星…… もちろん存在は知っているが、見たことないしなじみが薄い惑星だ。それが今年一気に日本中から注目を浴びたのだ。

 さて、天王星食はともかくまずは月食を撮らなくてはならない。昨年の反省を生かしつつ今回も月食撮影に挑戦してみた。

皆既月食の過程をインターバル撮影する

 まずは多重露光(インターバル合成)に挑戦した。去年は変化に乏しい、ただ多重露光しただけの写真になってしまったが、今回は月が欠けていく過程など月食の時間変化がちゃんと写るように考えて撮ってみた。

皆既月食前半のインターバル合成PENTAX K-1 II SE, HD DFA*70-200mmF2.8 ED DC AW(100mm), f6.3, 1/60sec, ISO200, インターバル合成
 まずは月食の始まりからほぼ皆既月食に突入するまでの様子。K-1 Mark II内蔵のインターバル合成機能を使い、間隔は2分半に設定した。

 ズームは100mmに設定したので本当はもっと画角が広いのだが、終盤のほぼ皆既月食状態に入ったあたり数回分は露出が足りなくて月の姿が写っていなかったので、その部分はばっさりトリミングして切っている。

 露出に迷ったが、半分欠けたあたりでほぼ適正になるようにマニュアルで固定した。最後に影に入った赤い月がぼんやりとでも写れば……と期待したが、さすがにそうはいかなかった。なおホワイトバランスは太陽光でRAW記録したファイルをLightroomで現像している。

 だいたい想像していたとおりというか、目指したような感じには写せたと思う。ちゃんと月食の進行具合が分かるように撮れたという点で、昨年来の宿題のひとつは果たせた。
 

皆既月食中のインターバル合成PENTAX K-1 II SE, HD DFA*70-200mmF2.8 ED DC AW(140mm), f5.6, 2.0sec, ISO800, インターバル合成
 皆既月食に入ったところでインターバル撮影の2回戦目をやってみた。皆既月食中も月の明るさは刻々と変化していく。ちょうどもっとも食が深いところを中心に前後の過程を写せたと思う。

 インターバル設定は先ほど同様に2分半のまま。1回目で月の移動コース(角度)がだいたい読めたので、余白をぐっと削って140mmにズームし、フレームの対角線上を月が移動するようにカメラを設置したので、このカットはトリミングをしなくて済んでいる。

 そして露出はもちろん大幅に変更し、シャッター速度は2秒まで遅くした。倍率が低いとは言えいわゆる被写体ブレしていると思うが、月面の模様をシャープに写すことが目的ではないので、まぁ良いのではないかと思う。が、せっかく開放F2.8のレンズを使ったのだから、絞りはもう1段開けてシャッター速度は1秒にした方が良かっただろう。ISO感度も1600まで上げてさらに0.5secまで詰めた方がさらに良かったかも知れない。露出の詰めは次回への宿題としよう。

 なおここまでで満足してしまって後半の撮影はしていない。というか、撮影場所の問題で高い位置は撮りずらかったので止めてしまった。
 

月食のアップと天王星食

 次にインターバル撮影ではなくて月のどアップを狙ってみた。

月食欠け始めPENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f9.0, 1/250sec, ISO500
 まずは欠け始めたところで練習してみる。手持ち機材の中ではもっとも望遠効果が得られる組み合わせと言うことで、K-3 Mark IIIにDFA150-450mmを付けて撮影した。が、ここに載せた写真はさらにガッとトリミングしている。

 まだこのくらい月が明るいうちは手持ち撮影も可能だが、皆既月食に入ると無理になるので、三脚にしっかりと据え付ける必要がある。あとはシャッターショック防止のために、ライブビューで電子シャッターを有効にして、レリーズは赤外線リモコンを使った。K-3 Mark IIIの場合はこの設定にすればミラーアップしたまま固定されるので、シャッターショックもミラーショックも完全にゼロに出来る。

 (像面位相差こそないけれどタッチパネル含めてライブビュー撮影のことをこんなに考えて作ってあるのに液晶がチルトしないなんて!)と、イラッとしながら撮っていたが、それについてはここでは置いておく。 
 

皆既月食中天王星食直前PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 0.4sec, ISO3200
 さて、このカットの撮影時刻は20時38分。東京では20時42分頃から天王星食が始まるとされていたので直前の状態だ。皆既月食自体は一番深い状態から徐々に回復しつつあるところだ。

 肝心の天王星がどれなのかは確信がないまま撮っていたのだが、どうやら月の左下、時計で表現すると6時半の位置にあるやつがそうだ。ちょっと縦長なのは被写体ブレかカメラブレのどちらかだろう。
 

皆既月食中天王星食始まりPENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 0.4sec, ISO3200
 20時40分過ぎ。天王星が月にほぼ接したところ。

 なお、こうして超望遠域で月を撮っていると、その動きの速さにまず驚かされる。なるべく低感度を維持したいと思ってシャッター速度を1secに設定しようものなら、月も天王星もその他の星も目に見えて”線”になってブレてしまう。それはもちろん地球の自転によってもたらされている動きだなわけだが、その中でもまた月は自身の公転によって、天球の中を違う速度で動いていて、月食の状態はもちろん、天王星や周辺の星々との位置関係は時々刻々変わっていくのだ。

 頭ではそれらの理屈はなんとなく分かっていても、超望遠レンズを通してその動きを実感するとまた改めて「ほぉ〜本当にそうなるんだ!」と思ってしまう。
 

皆既月食中天王星食PENTAX K-3 III, HD DFA150-450mm F4.5-5.6ED DC AW(450mm), f5.6, 0.4sec, ISO3200
 さらに1分もしないうちに天王星は月の影に隠れて消えた。いや、このカットでも良く見るとほんの少しまだ見えていたりするのだが。

 ということで、今回の皆既月食および天王星食の撮影結果は以上だ。このあと皆既月食が明けて徐々に月は明るさを取り戻しつつ、天王星も4時方向に再び現れてきたはずだが、それら月食の後半戦は肉眼で見るだけにしておいた。

 さて、月食撮影に関する今回の反省点と今後の課題は以下の通りだ。

  • ターコイズフリンジ(地球の影のエッジ付近に出来る青いエリア)を撮る
  • 地上の風景を絡めたもっと長い時間にわたるインターバル撮影
  • 月のアップ撮影でアストロトレーサーを利用しもっと鮮明に写す
  • 露出の設定をもっと詰めて最適化する

 惑星食はともかく皆既月食はまた3年後にあるらしいので、その時まだ写真を撮る気力があれば以上のことに挑戦してみたいと思う。今回同様雲ひとつない穏やかな天候に恵まれることを今から祈りつつ。
 


 

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