9月と言えば彼岸花の季節。各種SNSには山ほど赤いはかなげな花の写真が流れてくる。とくに写真クラスタの中で生きているなら、初秋の彼岸花は桜や紫陽花、花火やブルーインパルスと並ぶ、アマチュアにとっての一大コンテンツのひとつという気がする。
見慣れた被写体、どう撮っても毎年同じにしか撮れない花ではあるけれども、もしかしたら今年はひと味違う写真が撮れるかも?と期待しながら毎年撮ってしまう。今年とて例外ではない。
しかし今年は酷暑が続いたせいか、9月中旬のお彼岸になってもなかなか咲かず、我々をヤキモキさせた。そして9月下旬になって突然土の中から生えてきたかと思うとあっという間に咲いたという感じだ。どうも季節感が狂ってしまって調子が出ないのだが、なんとか地元の彼岸花ポイントを最低限巡って来ることができた。
彼岸花には雨が似合う。雨との相性の良さは紫陽花を超えるかもしれない。
この彼岸花が咲いていた周辺は殺風景な住宅街なのだが、暗い背景を選んでグイッとマイクロレンズで寄ってしまえば問題ない。というか虫の視点で見える世界は面白いし美しい。
しかし彼岸花の写真となるとさっきみたいな高コントラストで高彩度でローキーなやつはありふれてる気がして、明るく鮮やかで爽やかに撮ってみたいといつも思うのだがなかなかうまくいかない。やはり彼岸花の赤はハイキーで処理するには濃すぎるのではないかと思う。晴れの日に撮るとまた違うだろうか?
なのでやはりこう…… なる。わさわさと一面見渡す限りに咲いている景色も見事だが、こうしてポツンと咲いているのも風情があって良い。ということで、雨が上がった別の日、久しぶりに宝蔵院へやってきた。規模は小さいが地元の隠れた彼岸花の名所だ。
石仏などが並ぶ前に少し固まって咲いているエリアもあって、いかにも彼岸花っぽい雰囲気がある。望遠で切り取ってしまえばそれなりのボリュームに見えなくもない。マイクロ105mmはZ8との相性も良くて素晴らしい。
35mmでちょっと引いてみるとこんな感じだ。全体的に最盛期よりも少し早いくらいだった。彼岸花が秋のお彼岸を遙かに超えて10月になってから見頃を迎えるなんて。
白い彼岸花も咲いていた。通常白いほうが少し開花時期は早いはずだが、今年は全体的に遅れたためか、赤と白の開花時期の差がほとんどなかったように思える。そいういう意味ではちょっと贅沢な景色だったのかもしれない。
白い彼岸花も暗めが良いのか明るめが良いのか? 露出差が出るのでコントラストもつけやすいし、やや黄色味がかった白い花はハイキーにも仕立てやすい。どちらかと言うと白いのも好きだが、彼岸花はあくまでも赤が原種であり白はいのは人の手で作られたものなのだとか。そう聞くとやはり赤という気もしてくる。
最後におまけで夏水仙。これは8月中旬にたまたま近所で見かけた。まさかもう彼岸花?と思って思わず撮ったのだが、調べてみると夏水仙というのは真夏に咲くものらしい。そこから1ヶ月以上も待たされるなんて。
さて、この後はちゃんと紅葉の季節が来るのか心配だ。あまり夏が暑いと葉が色づく前に枯れて散ってしまうなんてこともあるらしい。秋はどんどん短くなり夏が終わったと思ったら冬が突然訪れるのだろうか。とりあえずまた来年の彼岸花を楽しみにしたいと思う。例年通り9月中旬に咲きますように。