Zマウントの標準レンズ NIKKOR Z 50mm F1.8 S を買った。ズームレンズではもちろん50mmをカバーしたものを使ってはいたが、単焦点レンズの50mmを買ったのは、Zマウントを本格的に使うようになってからはじめてのことだ。ここらで一度”標準レンズ”に立ち返ってみようではないか。
このレンズはZマウントの最初期、つまりは7年ほど前に登場した基本中の基本の1本で、手にするのも今さらという感じはするのだが、いずれは通らざるを得ない道なのだとも思う。
なお6月末より夏のキャッシュバックキャンペーンが始まっており、最新製品や一部の超人気製品以外、Zマウントのほとんどのカメラボディやレンズが対象となっている。しかも実売価格が10万円を前後のf/1.8 Sシリーズのうち35mmと50mmと85mmの3本は、なんと15,000円もキャッシュバックされるという破格ぶりだ。
中でも一番安い50mmF1.8なら、下取りやらなんやらうまいことやると、ほとんどタダみたいな値段で手に入ってしまうかもしれない。
開封
ということで、さっそく届いた箱を開けてみよう。
いつものZマウントレンズの箱だ。キャッシュバックに応募するためにはこの箱のバーコード部分(3つもある!)を切り抜かなくてはならない。箱は取っておく方だがそれほど思い入れはないので、切り取ることで箱の完全性が失われるのは気にならないのだが、単純にこのそこそこ分厚い紙で作られた箱から切り取る作業が面倒くさいなとは思う。
最近のミラーレス用レンズらしく前玉はそれほど大きくないが、後玉はF1.8という明るさ控えめの割りにかなり巨大だ。ちなみに前玉はかなり曲率の大きな凹面になっていて、そこに付いたホコリがまるでレンズの内側にあるかのような錯覚を起こすほどだ。
デザインについていろいろ言われた初期のZマウントレンズの典型的な1本だが、個人的にはそんなに悪くないと思う。こんなにピントリングを大きくせずとも、Fnボタンかコントロールリングでも付けてくれたら良いのに、とは思うが。
なお買ってから気がついたのだが、このレンズにはフッ素コート(Fluorine Coat)がされていない。Sラインのレンズは全てされていると勝手に思い込んでいたのだが、調べてみるとズームレンズと超望遠やマイクロなど一部の単焦点レンズだけで、ほとんどの単焦点レンズにはフッ素コートは採用されていないことを今さらながら知った。保護フィルター付けない派としては意外、というかちょっとガッカリな点だ。
ということでさっそくZ8に取り付けてみる。専用の花形フードが付属している。フィルター径は62mmでこれがZマウント単焦点レンズの基本サイズとなっている。MC105mmと同じサイズだ。
フードなしでZfに付けてみるとこんな感じ。見た目はともかく手にした感じは悪くない。実用上はフードは使うことが多いと思うが、いずれにしろこの組み合わせも悪くない。
NIKKOR Z 35mm f/1.4 と並べて見るとサイズ感はほとんど同じで、意外なくらいにそっくりだが、質感はそれなりに違う。では写りはどうだろうか?
画角が違うのは当たり前として、非SラインのF1.4と、Zマウント創設に当たってニコンが本気で作ったはずのSラインのレンズと、そっくりな見た目とは裏腹に、その成り立ちはかなり違っているはずだ。
実は今回50mmF1.8を手に入れるに当たって35mmF1.4は手放してしまった。35mmの画角はもともと好きだったのはずなのだが、1年くらい使っているうちに35mmF1.4に対してはいろいろ思うことが出てきたので、心機一転今後は50mmのほうに賭けてみようと思う。
撮ってみた
ということで、さっそく試し撮りにその辺に出かけてみた。どんな感じだろうか?
夏至を過ぎたばかりの太陽の光を浴びる白い花。キョウチクトウというらしい。とにかく真っ白で眩しい。
若洲海浜公園の350mライン。そこそこ遠景ながらわざと絞り開放で撮ってみると、ピント面はやはりそれなりに薄い。この画角と明るさの絶妙なバランスが良い。
どことなくWindowsを思い出させる丘の景色。上空には羽田へアプローチする飛行機がひっきりなしにやってくる。良い季候の頃ならここは寝転ぶ人があちこちにいるはずだが、この灼熱下では誰もそんなことしていない。
F8.0まで絞ったが、その程度では全くパンフォーカスにはほど遠く、手前の草はボケてしまった。もっと絞れば良かったのかもしれないが、このレンズはF16までしか絞れないので、全面ボカしたくない場合はピントの置き場所を考えないといけない。
そこそこ近距離。アスファルトの割れ目から伸びる雑草は良く見かけるが、こんなに綺麗な花を咲かせるやつがあるなんて。
前ボケと後ボケもなだらかで自然な感じでなかなか良い。量よりも質を追求した感じの、このさらっとしつつも滑らかなボケがこのレンズの美点ではないかと思う。もちろんこれで量も得られたら最高なのだが、f/1.2シリーズとかはそうなのだろうか?
満8年を経過したプジョー308SW。自分にとってはまだ新しい車のつもりでいるのだが、T9世代もすでに過去の車になってきた。
50mmくらいだと車を撮るにもパースもちょうどいい感じだと思う。この距離感でわざと開放で撮ってみると、これまたふんわり背景がボケてとても良い。
ピント面は滲んだり曖昧になったりすることもなく、少しフリンジはあるものの十分抑制的で、さすがSラインという描写だ。このカットでは周辺光量と歪曲の補正はオンにしてあるが、Lightroom上でもレンズ補正はオフが可能なタイプで、味わいのために敢えてオフにしても良いかもしれない。
暑いので車内に戻って運転席から。ほぼ最短撮影距離に近い領域。明暗差をものともせず、さらっと自然に描写してみせるのはZ8のおかげだけではないと思う。そして何度も言うがこの距離でもボケが綺麗だ。
テーブルフォトに向くとまでは言えないが、このくらいの画角でもう少し寄れるレンズがあったら、本当に万能レンズになるのにと思う。
東京都現代美術館の格好良いエントランス。風景というかスナップ的な写真を撮り歩くときでも安心して絞りを開放付近に設定できる。意味があるかどうかは別にして。
枯山水の庭園にニョキッと生えてきた1本の草。庭園風景として意図したものなのだろうか……?
ちなみにこのカットはZ8のVer 3.00で搭載されたフレキシブルカラーピクチャーコントロールを使っている。自作ではなくNikon Imaging Cloudに公開されているAirGreenというイメージングレシピ(軍司拓実さん作成)を利用した。
と言ってもZ8はNikon Imaging Cloudには対応していない。そこでまずNikon Imaging Cloudに対応しているZfにイメージングレシピをダウンロードしてからその設定で適当に1枚写真を撮影し、その写真をNX Studioに読み込みレシピデータとしてNP3ファイルを書き出し、それをZ8に読み込んだ(とても手間がかかる & ルール的にグレーかもしれない)。
緑色の車とトラック。写ってはいないが同じ色のトラックがもう1台あった。この色が好きというか、コーポレートカラーみたいなものなのだろうか。それにしてもよく色が揃っている。
ヴィンテージ化してきたあじさい。この何とも言えない淡くて汚いような綺麗なような寂れた色合いがけっこう好きだ。
またもやボケの話になるのだが、背後の木漏れ日による玉ボケも、さすがに端っこはレモン状になるがスッキリしていてとても綺麗だと思う。さすがSライン、というかこのレンズが地味なスペックながら根強い人気がある理由が分かる気がする。こうなると他のF1.8シリーズのレンズが気になってくる……
まだ使い始めて1週間くらいしか経っていないが、今のところ印象はそんな感じだ。しばらくはZ8にはこれをつけっぱなしにするかもしれない。
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