PENTAXの新APS-Cフラッグシップ機の名前は「K-3 Mark III」に決まる

 昨年来「新APS-Cフラッグシップ」とか「K-new」とか、仮の名前で呼ばれていた新機種の正式な製品名が、先日の10月27日、火曜日にもかかわらず発表された。

 もちろん発表されたのは製品名だけではない。いままで明かされていなかった仕様や発売時期、価格レンジも発表された。しかしまだ正式な製品発表ではない。なんだかもどかしい。

 発表された製品仕様については↑このページを見て欲しい。ほぼ既存製品とかわらないレベルの詳細な仕様表が公開されている。だからこの情報からどんなカメラなのか、かなり細かい部分まで想像が出来てしまう。

 また同時に、今回の製品名と仕様の発表に合わせて高橋社長からの説明(一部釈明)と新たなメッセージ動画が公開された。先ほどのページにはない新情報もこの動画には含まれている。

 ということで、仕様表をいちいち詳細チェックはしないが、高橋社長の動画を中心に、今回の発表内容で気になったところを振り返っておきたい。

名前は「K-3 Mark III」

機種名はK-3 mark II

 まずは製品名だ。大方の予想を裏切って製品名は「PENTAX K-3 Mark III」となった。新鮮味がないと取るか、馴染みがあると取るか、微妙なところだ。
 
 コンセプト的にK-3シリーズの流れの延長上にあるのは確かだが、中身も外観も(そして最後に触れるお値段も)K-3シリーズとはかなり違う。当初の話ではK-3 IIのさらに上のクラスを目指すとも言っていたはずだ。だから「K-3」を引き続き名乗ることはやや意外だった。

 しかし、ぶっちゃけ名前なんて何でも良いのだ。撮れる写真には影響しない。たぶん。
 

とにかくファインダー命

ファインダー倍率は1.05倍

 ファインダーへのこだわりについては5月の動画以来すでに何度も繰り返し言われてきた。動画内ではしれっとファインダー内下部の情報表示の様子も公開されている。やけに細かい情報がファインダー内で確認できるようだ。これらをすべて一度に把握する能力が自分にあるかどうか心配だ。ここまでしなくて良いのに… とちょっとだけ思っている。

 倍率については分かったので、肝心のスクリーン上の映像の見え方も含めて、最高のAPS-C光学ファインダーになっていることを期待するしかない。特に、どうやらK-1/K-1 IIと同様に透過液晶が挟まっていると思われるが、それによる光量低下や色付きがないことを祈るばかりだ。

AFポイントは101点

 なおAFセンサーはSAFOX13となり、AFポイントはなんと101ポイントまで増えるそうだ。うちクロスは25ポイントと控えめだが、単純にAFポイントが増えたことは素晴らしい。ペンタックス機で3桁に達する時代が来るなんて。

K-3 mark III AF関連スペック

 なにげに低照度にも強くなっている。AFポイントはどのくらいの分布になっているだろうか? 実際のAF性能はどうだろうか? F1.4の大口径レンズでもピタッと精度が出るだろうか? 動体追従性能は? 隅っこの方でもちゃんとピントくるだろうか? ジョイスティック状のセレクターレバーの操作感含めて期待と不安が交錯している。

 AFについてはまだ不明なことが多い。というかこれもまた実機を触ってみるまでは分からない。

12コマ/秒は役に立つのか?

連写!

 連写速度は期待を上回って最高12コマ/秒と発表された。動画中では高橋社長が実際に連写してみせる様子をデモしている。高速で小気味よいシャッター音に期待が持てる。

 ただ連写まわりに関してはまだ少し不安が残る。というのはバッファ… というか連続撮影可能枚数が少ない。思っていたよりも大幅に少ない。約5年前に発売されたNikon D500と比べて一桁少ない。K-3 IIと比べてもなんか数字がおかしい。これはちょっと心配だ。

K-3 Mark III 連写関連ペック

 さらに残念と言っても良いのが、カードスロットの仕様だ。SDカードx2スロットなのは7月の動画ですでに確定していたが、今回の発表でUHS-II+UHS-Iであることがわかった。これはあまりにも頼りない。どうしてPENTAXはこんなに記録メディアI/Fに弱いのだろうか? とても残念な点だ。

 個人的な経験上、連写をする際に10秒間ずっとシャッターを押し続けることはまずない。しかし、2秒ずつの連写を短い間隔で繰り返すことはよくある。だからバッファサイズと開放速度(書込み速度)はとも使用感においてとても重要なのだ。

 だから、せめてどちらかが飛び抜けて強くあってほしい。カード書込みが遅いけど代わりに200コマ分のバッファメモリーを積むか、メモリーは小さいけど、CFexpressであっという間にバッファを開放するか。どちらかであって欲しかった(個人的には後者を希望していた)。

高橋社長の笑顔

 そんな不安をよそに、動画内では連写デモを終えたあと高橋社長がニヤリと笑顔を見せる。それまで緊張しながらロボットのように喋っていたのが、ここで思わず素が出たという感じの自然な笑顔だ。

 うん、わかる。人はカメラで高速連写すると笑ってしまうものだ。例え実際に役に立たなかったとしても、秒間12コマを体験したら思わず笑みがこぼれることだろう。だからまぁ、今のところはこの高橋社長の笑顔に免じて「実際の連写性能は実機で確認」と言うことで保留しておこう。

その他気になるところ?

 その他、仕様表を見て気になったことと言えば以下のような部分だ。

  • 26MピクセルCMOSセンサー:さらに増えた!
  • 最高感度ISO1600000:実用範囲はどのくらいか? 低感度の改善はどのくらいか?
  • 手ぶれ補正が5.5段に:従来より0.5段改善している
  • 30万画素RGBIr測光/WBセンサー:従来の8万画素より大幅にパワーアップしている!
  • 静電容量式タッチパネル:個人的には使わないけど、一般的にはあった方が良い
  • 電池はD-LI90P使用で800コマ撮影可能:K-3/K-3IIより改善した!
  • USB-Cによる充電/給電:モバイルバッテリーが使えそう
  • GPS非搭載:O−GPS1のモデルチェンジに期待
  • リアルレゾリューション:三脚モードしか記載なし。手持ちモードはなくなったか?
  •  まだ他にも気付いてないことがあるかもしれないし、まだ明かされていなかったり、今後変更になることがあるかもしれないが、今のところはそんな感じだ。
     

    2020年内には間に合わなかった

    発売時期は来年2月

     なお発売時期は「2020年内を目処に」から「来年のCP+を目処に」と約2ヶ月延期された。なんだやっぱりそうなるのか。CP+2021自体開催されるかどうか分からないが、無期延期ではなかったから良しとしよう。

     残念と思う一方で、じっくり考えて資金繰りをする時間が出来たとも言える。物流等の影響を考えるとコロナ渦の影響は実際にあったのだろうと思う。もちろん、それ以外に何かでトラブっているのかもしれないが。とにかく再度の延期がないようにして貰いたい。

    物議を醸している価格見込み

    価格は20万円台後半

     最後に動画で明かされた重要な情報が価格の見込みだ。なんと「20万円台後半を想定している」と高橋社長は口にした。キャプションもついてるから言い間違い、聞き間違いではない。価格の予想や希望は人によってまちまちだったことだろう。しかし概ね「高っ!」という反応が多いようだ。実際自分も「うわ、たけ~」という感想を持った。

     だが、もはやこれは仕方がないのだと思う。ただでさえ縮小しているデジタルカメラ市場で、しかもメインストリームのミラーレス機を避け、ニッチな一眼レフに注力するという賭けに出たのだから。あまつさえプリズムを新規開発するなど、見た目以上にコストもかかっているだろう。

     先に発表されたPENTAX STATEMENTには、シェア争いを(必要以上に)しない、ボリュームを(必要以上に)追わない、という意味を含んでいると思う。エントリー機のレンズキットが39,800円で売っていた時代はもう来ない。フラッグシップ機を10万円台で作ってそこそこ売れる時代ももう来ない。それは一眼レフに限らずミラーレス機の市場でも同じだ。

     市場やシェアの拡大を前提としてコストのツケを先送りするビジネスモデルは、PENTAXに限らずデジタルカメラ市場ごと崩壊しつつある。そういうやりかたに失敗したからこそ、今のリコーイメージングや、ひいてはデジタルカメラ業界の姿があるのだ。

     このカメラの販売数をどの程度見込んでいるかは分からないが、あまり多くはないだろう。だから単にコストがかかっているだけではなく、販売価格の設定に対する考え方が今までとは違うのではないかと勝手に想像している。

     だから、残念ながらPENTAX STATEMENTを実行して持続していくには、ある程度の高額商品が必要なのだと思う。

     もちろん、そのやり方がうまく行くかどうかは分からないし、逆に自らにとどめを刺すことになるのかも知れない。それじゃぁPENTAXである意味がないという声も大きいだろう。しかし、今まで通りのやり方では無理なのは明らかだから、別のやり方を試してみるしかない状況なのだと思う。

     だからペンタックスユーザーはこの高価な製品を大人しく受け入れろ、みんな文句を言わずに買え!と言ってるのではない。消費者にとってはメーカーの都合などどうでも良くて、このK-3 Mark IIIを”Just for me”と感じるか”Not for me”と受け取るか次第だ。

     このスペックでは使えない… と思うのも、スペックは良いけど価格に見合ってない… と感じるのも、高いけど欲しい!と思うのも、これはむしろ安い! と思うのも、もうレフ機は終わりだなと見切りを付けるのも、それぞれの個人の判断はいずれも正しいし、その気持ちをSNS等で表明する権利は誰にでもある。
     

    買うの?

     で、おまえはどうするのか? と問われるなら… もちろん買うことになるだろう。

     上記のように公開されたスペックに懸念は多々あるし、今はもう飛行機とかF1とか、動体撮影へのモチベーションもそんなにないのだが、ここまでの経緯といくつかの勝手な思い込みによって、このカメラは”Just for me”だと思っている。少なくとも一度手にしてみなくてはなるまい、と。

     そう思い込むことが出来たカメラは、今までにK-7とK-1と、このK-3 Mark IIIしかない。そういう思い入れのあるカメラは使っていてとても楽しいはずだ。それは過去K-7とK-1での様々な体験が証明している。だからこのK-3 Mark IIIもそうなることを期待している。

     最後に、Twitter上でちょっとしたアンケートを採ってみた。他人がどう思っているかは関係ない、というのは半分本当だが、残りの半分はやはりちょっと気になる。で、結果は以下のようになった。

     そうか、少なくとも100台は売れるのか。実物がとてもよく出来ていればもう200台積み増し出来る可能性がある。ペンタックスユーザーが多いTL上でこの結果が、良いのか悪いのか分からないが、個人的な感想としては「いろいろ言われてるわりにけっこうみんな買う気あるじゃないか」と感じた。

     以上、よろしくご査収のほどお願い申し上げます。
     

    2020-10-29|タグ: ,
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