ちょっと思うところがあって新しい超広角ズームを買った。数ヶ月前にタムロンから発売された16-30mm F/2.8 G2がずっと気になっていたのだ。これは超広角ズームとしては大口径なのに小型軽量、しかもインナーズームで焦点域もなかなか良いところを突いている。もちろんお値段もまぁまぁなレンジに収まっている。これは買いなのではないか?
個人的に超広角ズームはとても好きなほうだ。約9年半前に初めてのフルサイズデジタルカメラとしてPENTAX K-1を買ったときに組み合わせたレンズも15-30mm F2.8だった。実際出番はそんなに多くなくて多用はしていないのだが、強烈なパースのついた写真はスチルの醍醐味という感じがする。
今どきはスマートフォンにも超広角カメラが搭載されるようになっているし、もはやレンズ交換式でこれをやる意味はあるのか?という考え方もあるとは思うが、もちろんある! と思っている。いや、思いたい。
開封
ということでまずはどんなレンズなのか見ていこう。
箱は白基調でニコン純正とは違いタムロンらしさが出ている。変に高級ぶってもいないし、安っぽさもない。先進的な感じでシンプルでとてもよい。
中身もとてもシンプルだ。本体と前後キャップと専用フード、あと保証書など紙類が少々。
このフードがまた良い。超広角というとガバッと大きく開いて扱いづらい形状のものが多いが、非常に小ぶりで大げさじゃないところが良い。効果のほどは分からないが、現代のレンズで超広角でズームともなるとフードは半分飾りでいいのではないだろうか(※個人の意見)。
残念なのはマウント側のキャップ。ちゃんとしているのだがユルユルなのだ。これでは多分知らない間にバッグの中で外れているという事故が起こることが容易に想像できる。なので、これは使わないことにしてニコン純正のやつに付け替えておいた。おかげで予備のキャップがなくなってしまったので考えなくてはならない。
前玉側。左がワイド端で右がテレ端。鏡胴の中で前玉が移動しており、外見上鏡胴の伸縮はないのだが光学的にインナーズームとは言わないのかもしれない。いずれにしろユーザーにとっては鏡胴が伸縮しないのはありがたい。
あと20mmを切るような超広角レンズと言えば出目金レンズが当たり前だったが、このレンズは16mmという超広角でF2.8なのにこんなに前玉が小さいというのが素晴らしい。フィルター径はたったの67mmだ。これはミラーレスの短フランジバックがなせる技なのか? 光学ガラスや加工技術、あるいは設計技術の進歩のおかげなのか?
マウント側も同じく左がワイド端で右がテレ端。後玉にもこれといって特に特徴はない。マウント周辺には一応シーリング材らしきものが巻かれており「簡易防塵防滴構造」とされている。
レンズの着脱などにも特に純正との違いというか違和感は感じない。
外観で気になるところと言えばこれだ。マウント近くの下側(カメラに装着した状態でボディ底側)にUSB Type-C端子がついている。Windows PC、Mac、Android端末(iOSには対応していない)と接続していろいろとレンズの設定変更やファームウェアのアップデートを行うときに使う端子だ。水とかホコリとか入らないのだろうか?
物理的に端子は開口しているので入るときは入ると思うが、通常使用時にどの程度気をつけないといけないといけないものなのか分からない。テープを貼るとか何か対策しようかと思っている(メーカー的にはそれはそれでやって欲しくないのかもしれないが)。
アプリと接続することでピントリングの方向や速度の他、↑上の写真にも写っているFnボタンの機能割り付けも変更できる。純正レンズ同様にレンズFnボタンとしてボディ側で設定したすることも出来るし、それとは別にこのレンズ特有の設定に変更することも可能で、とりあえず長押しでAF/MFを切り替えられるように設定をしてみた。
Nikon Zfに取り付けてみるとこんな感じになる。長さはそれなりだが何しろ軽い。そしてこれでF2.8と言うところに再び驚いてしまう。しかもワイド端が16mmでテレ端は30mmまであるわけで、場合によっては広角寄りの常用レンズとしてこれ1本で出かけたっていいわけだ。
操作系で気になるのはズームリングがかなり軽いところ。メーカーの製品情報ページを見るとズームリングのトルクにはこだわったと書かれているので、意図してこの軽さに設定したということなのだろう。ニコンの純正だとこれよりもかなり重たい設定のレンズが多いので少し違和感を感じてしまう。が、軽いレンズなだけにがっちり左手で鏡胴をホールドするというよりは、全体的に軽くホールドして指先でスイスイとズームするという使い方には向いている。
NIKKOR Z 14-30mm F4 Sと並べてみた。実質的にTAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2のライバルというか比較対象となるのはこのレンズだろう。しかしながらTAMRONの方は1段明るい上にわずかに小さく、かなり軽い。フィルター径は純正の82mm径に対し67mm径とかなり小さい。この差が広角端2mmの譲歩によってもたらされているとするならば、それは用途次第で検討の余地、比較する価値があると思う。
あとNIKKOR Z 14-30mm F4 S はZマウント最初期のレンズと言うこともあって、沈胴式であるところも気になるところだ。やはり最初のひと手間が面倒に感じられることがある。
ということで、個人的には素直にスペックと値段などを比べたらTAMRONの圧勝だが「純正」の重みはそれなりにある。とはいえ、ちゃんとニコンからライセンスを受けているということなので、その辺は気持ちの問題だけだろう。
NIKKOR Z 14-30mm F4 S は自分がZマウントに移行しようと思い始めたきっかけにもなったレンズであり、いろいろ思い入れもあるので、手放すつもりは今のところないのだが、かと言って超広角ズームが2本あっても意味はない。多分、どっちかは確実に使わなくなるだろう。
もちろんTAMRONの方に今は期待をしているところだが、使っていくうちにやっぱり純正だなとか、やっぱり14mmは必要などとなる可能性もあるので、その辺を少し時間をかけて見きわめたいと思う。
少し作例
まだあまりちゃんと使えていないのだが少し撮ってみたので、何枚か貼っておこうと思う。ボディはZfばかりでZ8との組み合わせはまだちゃんと試せていない。
とある小さな交差点。青空に黄色い電線、散歩するワンコ。
浜離宮庭園内にある小さな神社の鳥居。薄暗い重々しい雰囲気に。超広角は使い方が難しいと言われるけど、あまり上下にカメラをあおらないようにして普通にアイレベル撮ればそれなりに普通に写ると思っている。もちろん逆にパースを強調したいときはそうすればいいわけで。
庭先の柿。東京の住宅街でも意外に柿や梅や夏みかんなど、果物がなる木は多い。あと東京都のマークになっているように都内の街路樹には銀杏が多く、しかも雌の木もそこそこあるので、この時期にはギンナンを収穫して(権利関係はやや曖昧な場合があるが)自家製でいろいろ利用するという文化もわずかに残っている。
清澄庭園の池。秋から冬にかけての空の色はやはり美しい。
24mm以降からテレ端30mm付近はもはや標準域と言ってもいい。だからさっきも書いた通りこれ一本だけで出かけるというのもアリではないだろうか? 旅には望遠側が効く高倍率ズームよりも圧倒的に広角側が欲しくなると思う(個人の意見)。
東京東部の公園も紅葉が綺麗な季節になってきた。今年はあんなに暑かったのに冬の訪れは早いらしい。紅葉も都内平地は12月が本番という感じだったのだが、例年よりかなり進んでいると思う。
うっかり地元の神社やお寺に足を踏み入れると、七五三のお参り真っ盛りだった。フラッとやってきただけのアマチュアのおじさんがカメラを構えているのは余りよろしくなさそうなので早々に退散した。
Nikon Zfに追加されたフィルムグレインとともにモノクロで撮影するにもとても相性が良い。フィルムの時代こそあまり超広角レンズと言うのは一般的ではなかったと思うので、ノスタルジックというのとはちょっと違う気はするのだが。
最近やっている大河ドラマとも関わりの深い霊巌寺。立派なイチョウの木があって黄葉の最盛期を迎えていた。なんならちょっと散りかけだったかも。それと新築の門と青空の取り合わせはビビッドでとてもよい。
オートフォーカスはVXDと呼ばれるリニアモーターが使われていて十分に速い。静かなところだとごくわずかに作動音が聞こえる。その他の使用感は外観で見たまんまだ。軽量で剛性も必要十分、ズームは軽いのでがっしり握らなくても指先で動かせる。ズーミングしてもバランスの変動は全く感じない。
画質についてはワイド側の開放から意外なくらいに周辺光量はたっぷりある。もちろん補正ON/OFFで明らかに変わるが、味わいとして周辺光量落ちが欲しい場合には補正OFFだけでは物足りないかもしれない。絞ればほとんど補正前後で変わらなくなる。歪曲は陣笠型とでもいうのか変な形をしていて、なるほどこれは補正なしでは使えないと思われる。歪曲補正のAPI含めてライセンス契約をしているレンズならではの安心点でもある。
解像的な観点でいえば純正のSレンズのようなキレは感じられず、超広角で見た目の撮影倍率が小さいこともあって、ふとした瞬間に「これピント外してる?」と思う瞬間もある。特に無限遠の風景を撮ったときに多いのだが、一眼レフの時代ならいざ知らず、実際のところピントを外しているわけではないはずだ。それほどカリカリの描写を追い求めたレンズではないが故の味わいの範疇だろう。
かと言って像が滲んでいたり流れていたりということはないのだ。綺麗に粒が揃ったままほんのりボヤッとしている(等倍で見る限り)。それが周辺までほぼ均一なところも面白い。結果的に引いて鑑賞サイズで見れば違和感は感じない。むしろエッジが立ちすぎていない感じはザワザワとしやすい広角域には合っているかも知れない。
ということで、今のところとても印象は良くて、何ならこのTAMRONの安大三元を構成する他の2本も欲しいと思えてきているくらいだ。特に標準の28-75mmが気になる。28mm始まりの標準ズームなんていらんだろ!と、長年思ってきて見向きもしていなかったのだが、この16-30mmがある前提ならあり得るのではないか?と妄想している。




























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